資産を増やすための「雪玉」をつくる─―2003年、31歳、はじめての投資に挑戦する
私はかつて借金が500万円以上あった。しかし、その後の10年間で資産を1億円にまで増やすことに成功した。今ではお金に困ることはまったくない。お金のために働くステージはとっくに卒業している。 「そんなことが可能なのか?」と思われたかもしれない。 心配は無用。可能だ。
この連載では、私がドン底だった時代にどんな本を読み、そこからどんな知恵を授かり、どう行動し、その結果どんな変化が起きたのか? そのすべての歩みをご紹介したい。 私は多くの本を読み「お金のプロフェッショナル」たちの知恵、哲学、ノウハウのエッセンスを抽出した。
すると、共通する「法則」が浮かび上がってきた。 それを私は「1億円の法則」と名付けた。 この法則をきちんと理解すれば、私が 10 年かけてきた試行錯誤で得た成果をこの1冊であなたは手にすることができる。
法則18 余計な口を開かない
保険に興味のある顧客に絞って営業するようになり、効率よく結果が出せるようになった。気がつけば、営業成績が優秀な者だけが招待される、保険会社主催の海外研修旅行などにも参加できるようになっていた。
なぜ、営業が嫌いだった私がこんなにも成績を伸ばすことができたのか?
実は、テレマーケティングの導入以外にも、もうひとつ大きな理由があった。 それは、人間関係論の先駆者と呼ばれるデール・カーネギーとの出会いである。
彼の著書『人を動かす』には「相手に好かれる方法」「自分の考え方に相手を引き込む方法」など、社会人として必要なコミュニケーション技術が書かれていた。 本書の中でカーネギーはこう言っている。
人を動かす秘訣は、この世にただひとつしかない。
〈中略〉
みずから動きたくなる気持ちを起こさせること──これが秘訣だ。
人を動かすためには、相手の気づきをうながすこと、相手の答えを自然に引き出せるような「聞き上手」になることが必要だというのだ。
私は、今までは「この保険は割がいいですよ」などと、商品の優位性についての話ばかりをしていた。 そんな営業方法を改め、まずは相手の話をよく聞くように心がけるようにした。 相手が今、どんな家族構成で、暮らしぶりはどうなのか、将来についてどんなことを考えているのか、徹底的に話を聞くようにした。 そうすると、無理に保険の営業をしなくても、多くの人が自然に保険に興味を持ってくれるようになったのだ。
また、次の言葉も実践した。 相手の関心を引こうとするよりも、相手に純粋な関心を寄せることだ。 技巧的な営業トークを使って相手の関心を引くのではなく、相手のプライベートに関心を寄せて話を聞くようにした。
「保険の営業をする」というより、まるで「茶飲み友達にでもなる」感覚だ。 私は地元の中小企業の社長を相手に営業をすることが多かったのだが、保険の話はまったくせず、いつも社長のグチばかりを聞いていた。 社長というのは孤独な職業だ。
トップに立つ人はなかなかグチが言えない。仕事の利害関係がなく、好き勝手に話ができる相手を求めていたのだと思う。 保険とはまったく関係のない話をすればするほど、社長は私のことを信頼し、思うように保険が売れていった。
営業というのは「ものを売る」ことが仕事なのではない。「人の気持ちを動かすこと」が仕事なのだ、ということに気がついたのだ。 営業の仕事を通じて、人とのコミュニケーションのあり方について、数え切れないほど多くのことを学ぶことができた。
ポイント:「聞き上手」になろう
法則19 アンテナを 高く張っておく
保険の営業が軌道に乗り、私は着実にお金を稼いでいった。 借金返済時代に浪費をせず、節約する習慣をしっかりと身につけたおかげで、稼いだお金の大半を貯金に回すことができていた。
ある日、私は貯金通帳を眺めながら思った。 「そろそろ資産の購入、投資を始めてみてもいいころかもな……」 幸運の女神が、私に微笑んでいるような気がしたのだ。 タイミングを逃してはいけない。 私は「投資家デビュー」することを決めた。
ただ「投資」とひとことで言っても、株、投資信託、FX、債券、不動産投資信託……など、数え切れないほどの金融商品がある。投資ビギナーの私は、何を選べばいいのかサッパリわからなかった。 そこで投資に関する交流会に参加することにした。
そこで出会った証券会社の営業マンが、私にこんな話をしてくれた。
営業「田口さん、IPOって知っていますか?」
私「IPO?」
営業「新規公開株の略です。株式市場に上場する直前に発行される株のことです。これがね、ほぼノーリスク・ハイリターンというとてもいい商品なんですよ」
何気ない会話の中から出てきた、「IPO」という言葉。
投資の世界は「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」があたりまえ。「ローリスク・ハイリターン」なんてことが、本当にあるのだろうか?
私はその引っかかりを解消すべく、ある証券会社のホームページを開いてみた。 そこには、注目の商品としてIPOの特集が組まれていた。
当時、IPOはまだまだ注目している人が少ない商品だった。 さらに書店で『IPO 新規上場株投資のすすめ』という本を見つけた。雑誌にも載っていないくらいだから、そのとき、IPO投資について書かれた本は、これしかなかったと思う。
私は、この本に書かれている知識をすべて吸収した。 IPOとは、上場前に公募で発行される株式のこと。 公募価格で購入し、初値がついたときに売却することで利益を得る。本にも、ほとんどの確率で儲けが出ると書かれている。 そんなことが本当にあるのだろうか? 私は、直近のIPOの公募価格と初値のデータを集めて照合してみた。
すると本当に、ほぼ9割以上の確率で初値が公募価格を上回っていることがわかった。 「投資をしよう」と思ったら、自ら情報を集めることだ。私の場合は、交流会に参加することでIPOと出会うことができたのだ。
ポイント:気になる金融商品は自分で調べてみる
法則20 未知の分野にこそ 大きなチャンスがある
のちに私は、IPOで大きな利益を得ていくことになる。
当時はIPOバブル全盛のとき。元気のあるIT企業がJASDAQやマザーズ、ヘラクレスなどの新興企業向けの株式市場に続々と上場し、市場が異様な盛り上がりを見せていた。誰がIPOに投資しても、儲けられる時代だった。
株式市場の好転を受けて、2003年ごろから新規公開株の初値が軒並み公募価格を上回る状態となった。初値が公募価格の「数倍」となる銘柄まで出現した。
私が資産を築くことができたのは、このバブルのおかげとも言える。 ……ということは、当時は多くの人が私のように儲けたのか? そんなことはない。多くの人はその機会を逃している。
それはなぜだろうか?
当時のIPOは、新しい投資のスタイルだったため、多くの投資家は、未知のものに恐怖心を抱いたのだ。 「新しいものは危険だ」「今はまだ様子を見たほうがいい」 投資が大好きな父も、私が「IPO投資をする」と言うと、「なんだ、そのわけのわからないものは」と大反対した。 でも、しっかりと覚えておいてほしい。多くの人がまだ知らない分野にこそ、大きなチャンスが眠っている。
投資にもビジネスにも同じことが言えるのだが、未知の分野にチャレンジしようとすると、100人中98人が反対する。 「そんな前例がないことに手を出して、成功するわけがない」と言うのだ。
しかし、前例がないからこそ勝機がある。 誰もが「それは安全だからやりなさい」と賛成し始めたら、もうすでに機を逸していると考えて間違いないだろう。 投資に関しても、みんなが「この株は買いだ!」「この投資は儲かる」と騒ぎ始めてからでは、もう遅い。
なぜなら、みんなが「買い」に走るわけだから、その銘柄や投資商品はすでに高値をつけてしまっているからだ。投資で大儲けするには、「ダイヤモンドの原石」を見抜く目を持つ必要がある。