一年を振り返る。だけど反省ばかり浮かんでくるときに読みたい一冊

2018年、一年間。きっと楽しいこと正しいこと嬉しいことばかりじゃなくて、間違ったこと失敗したこと悔しかったこともたくさんあった。誰にでもある。年末モードが膨らむ中で、少し落ち込むことがある人は、この本を読むことをおすすめしたい。人間の「失敗」や「間違い」に対するありかたが、ユーモアをまじえて美しく描かれているから!

「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ」
「たしかにおっしゃるとおりかもしれません」と私は言いました。「申し訳ございません。醜態をさらしてしまいました。疲れすぎているのでございましょう。このところ、ずっと旅をつづけていたものでございますから」(『日の名残り』より引用)

 もう12月でそろそろ年末がぼんやり見える季節になってきた。
 わたしは年末のことがすごく好きだけど、苦手だ。
 今年が終わるのはなんだか嬉しい。一区切りつくことはいつだって楽しいし。年が変わったって何が変わるわけでもないことは知っているけれど、それでも何かが変わってくれるのではないか、という淡い期待。断捨離した後の気分と少し似たような感じだ。
 だけど一方で年末になると、頭を抱えたくなる。一年を振り返るとロクな記憶がない。「お前は、この一年、本当に、ちゃんと、きちんとすべて過ごせたのか!?」と見たこともない神様に問い詰められている気分。
 ああ一年、サボりまくった日々の思い出しか残ってないぜ! なぜわたしはあそこで突然『きみはペット(全14巻)』を一日で一気に読み返したいとか思ったのか。なぜわたしは夏休みをほぼ昼夜逆転気味に過ごしてしまったのか。はっ、来年の目標を立てようとしても去年とまったく同じ(※「肩こりがマシになるようどうにかする」)のものを挙げているのか!?
 年末って、自分の成績表を自分自身に突きつけられている気がする。やばい。反省点しかない。

 そんな思い起こせば反省ばかりの日々である人……はわたしだけかもしれないけれど、でも、年末になると「あ~しかし何もできてないまま一年が終わってしまう~」と感じてしまう人はわたし以外にもいる。かもしれない。そんなあなたに! ぜひおすすめしたい小説が!! ある!!
 ってなんだかテレビショッピングみたいな流れだけど、『日の名残り』。昨年ノーベル文学賞をとったカズオ・イシグロの描く「年末」にぴったりの物語なのだ。


『日の名残り』カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳(早川書房)

『日の名残り』の主人公は、

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
わたしの咀嚼した本、味見して。

三宅香帆

人気連載【京大院生が選んだ「人生を狂わす」名著50】がリニューアルして再スタート! 書籍『人生を狂わす名著50』の著者であり、現役の京大院生で文学を研究し続ける24歳の三宅香帆が、食べて、咀嚼して、吐いた本の中身を紹介するブックガイドです。

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません