オタク力」を磨いて「同化圧力」から自由になろう【最終回】

連載『「いい人」をやめる脳の習慣』は今回で最後。最終回は「オタク力」を磨いて、いい人をやめる方法を紹介します。ぜひ実践してみてください。
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「オタク力」を磨いて、自分を極める!

皆さんは、「同化圧力」という言葉をご存知でしょうか。
同化圧力とは、ある特定のグループにおいて意思決定を行う際、少数意見を持っている者に対して暗黙のうちに多数の意見に合わせるよう強制する状態を指す言葉で、「ピア・プレッシャー」とも呼ばれています。

「いい人」とは、この同化圧力に敏感に反応する人たちでもあります。多数派の共感を得る行動を積極的に取って、自分の存在意義を認めてもらえるようがんばります。 しかし、多数派の人にとってそんな行為は「ごく当然のこと」ですから、誰も評価してくれませんし、苦労をねぎらってくれることもないのです。
一方で、同化圧力などどこ吹く風で平然としている人たちがいます。それはいわゆる「オタク」と呼ばれている人たちです。

あなたは、「オタク」という言葉に、どんなイメージを持っていますか?

「特定の分野・物事にしか興味がない人」
「コミュニケーション能力が未熟で社会性に欠ける人」

このように、「オタク=偏屈で近寄りがたい人」というイメージがまだまだあるかもしれません。
けれども「いい人」をやめるひとつの方法として、私はぜひとも「オタク力」を磨くことを提案したいのです。
オタクは世間一般の常識を重視せず、自分の好きなことにとことんのめり込みます。
「そんなことをしていないでこっちに同化するのだ」という圧力がピンとこない、というか、いい意味で理解できていないかのようです。

実は、「いい人」をやめるには、こうしてオタクであることが重要なのです。
「オタク力」を持っていれば、この同化圧力から離脱せざるを得ない状況に身を置くことになるからです

実際、自分自身が興味を持っていることでも、多くの人にとっては無関心のことがほとんどです。いつも他人に流されがちな「いい人」は、オタクになるくらい何かに熱中したり、自分独自の知識を極めたりして、他人本位でない「自己本位な自分」というものを取り戻していただきたいと思います。

ところで、脳科学的な立場から見ても、オタクが持つ情熱は「脳の最強のエンジン」であるといえます。
なぜなら、オタクが興味を持っている対象は奥行きが深く、オタクは自分が興味を持っていることに対してコツコツと深掘りすることができるからです。

ここで私の「オタク経験」をご紹介しましょう。
私の母親は子育てにおいておおよそ放任主義でしたが、唯一、私の知的成長のためにアクションを起こしてくれたことがあります。
それは何かといえば、私が小学校に上がるとき、近所で蝶の研究をしているオタクの大学生に弟子入りさせたのです。

その当時、私は蝶などまったく興味がありませんでしたし、ましてや研究などとはいっさい無縁の少年でした。
ですが、人間の脳というのは不思議なもので、たとえ母親からのひと言がきっかけであっても、いざやり始めると夢中になっている私がそこにいました。
しまいには、日本鱗翅学会という蝶の研究をしている学会に入り、そこで大人たち に交じって本格的に蝶の研究に没頭する毎日を送ったのです。

お小遣いを貯めて1万円もする蝶の本を買ったり、蝶に関する書籍を片っ端から読漁ったりと、まさに「蝶オタク」になってしまったのです。
実際に、母親が蝶の研究をしている学生に私を弟子入りさせて、何を学ばせたかったのかはいまでも謎です。
もしかすると、たまたま知り合いで蝶の研究をやっている大学生がいたというだけなのかもしれません。

もっと言ってしまえば、少年だった私がそれほどまでに蝶の研究にのめり込むことなど、親としては想定外だったのかもしれません。
しかし、こうしたことがきっかけとなり、私は科学に興味を持ち始めました。そして、ある日アインシュタインの伝記に出会って科学者に興味を持ち、脳科学者といういまの私が存在しているわけです。
こうして、いつも他人を気にせずに好きなことにのめり込む習慣をつけると、脳がフローの状態に入りやすくなります。他人がどう考えるかをあれこれ気にするよりも、目の前のことに集中できる精神状態を手に入れることができるのです。

オタクの世界では無理に他人に同調しません。他人の存在などは気にせず、目の前の何かに熱中して、いつの間にか時間を忘れます。
そして、そのような物事への向き合い方こそ、「いい人」を脱却するための指針となるのです。

時代の最先端を生きる人間関係とは?

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茂木健一郎 「いい人」をやめる脳の習慣

茂木健一郎

「いい人」をやめると、脳がブルブル動き出す! 他人の目に意識を向けず、自分のために脳を働かせれば生きるのが驚くほどラクになる。 ムダな我慢をあっさり捨てて、自分の人生を充実して生きるための茂木式・ポジティブ人生操縦法!

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コメント

Naomi_Sensei_ 塾 が中心の生活 良い学校に入るのがゴール な考え方、必要ないと思うな https://t.co/xl3poS7ZgF 4ヶ月前 replyretweetfavorite

changeview 寝食忘れて没頭できるものがある時は幸せやねえ。https://t.co/gxbuciDoC5 4ヶ月前 replyretweetfavorite

u_machan 茂木さんが僕の行きたい方向性をさらに深く言語化してくれた!→時代の最先端を生きることとは、「誰も正解がわからないことを常に追い求める」という生き方ではないかと思っています。 https://t.co/VUxENo9aNL https://t.co/VUxENo9aNL 4ヶ月前 replyretweetfavorite

shutoshokupan 😊 https://t.co/bGrvkf2o2B 4ヶ月前 replyretweetfavorite