「孤独タイム」と「つながりタイム」
人は独りでは生きていけません。頼って、頼られて、私たちはたくさんの人と関わりながら精神的にも肉体的にも充実した生活を送っています。
「生きていくためには孤独でいてはいけない」「集団から外れて疎外感などは味わいたくない」などと、最近は孤独でいることに一種のプレッシャーを感じ、無理やり人とつながろうとしている人が増えているように思います。
「いい人」の正体とは、孤独への恐れから生まれた「不安」なのではないか。
こんな仮説を立て、私はあるとき自分の生活時間帯を分析してみました。
すると、仕事上でさまざまな方と交流してはいるものの、人と接触せずに自分ひとりで行動する「孤独タイム」が意外と多いことがわかりました。
まずは寝ているとき。これは最大の「孤独タイム」だといえます。
また、シャワーを浴びたりお風呂に入っているとき、トイレに入っているときもそうです。さらに、ジョギングをしているときや、仕事の移動中……。
こうして積み上げてみると、実は一日のうちに人と話さず自分ひとりでいる時間は多く、相当の量の「孤独タイム」があることがわかりました。そして、そんな時間を私は私なりに楽しんでいるのです。
ではなぜ、現代の多くの人は孤独を恐れて「いい人」になってしまうのか。
そう考えていたとき、私はあることに思い至りました。
それは、「いい人」は孤独を恐れているのではなく、「つながりタイム」を欲しているだけなのではないかということです。
「いい人」をやめるためには、まず「つながりタイム」を充実させる習慣が大切なのだということです。
「つながりタイム」とはその名の通り、自分の人間関係において、質量ともに充実したコミュニケーションが実現できている時間です。
おそらく多くの人にとって、この「つながりタイム」とは、毎日同じ人たちとつながっている時間ではないでしょうか。
会社や学校、あるいは家族や恋人、友人との関係など、ある程度固定された「つながり」に限定されていることが多いのではないかと思います。そして、その関係を維持するために「つながりタイム」を欲しているのだと思います。
けれどもここで、気をつけなくてはいけないことがあります。脳科学的な見地からいうと、「つながりタイム」を十分に楽しむためには、それと同じくらいに十分な「孤独タイム」がないといけないのです。
なぜなら、人間は孤独な自分だけの時間に、他人とのコミュニケーションから得た情報や感覚を脳の中で整理する必要があるからです。
そのために、人と交流せずに頭を休めたり、自分と静かに向き合ったりする時間が大切なのです。
ところが、そうして「孤独タイム」を充実させ、いざ「つながりタイム」で集団に接してみると、余計に孤独感が強くなる人が結構います。
たとえば、あるパーティーに行くとしましょう。何十人、あるいは何百人という人がいるにもかかわらず、誰にも話しかけてもらえずに「壁の花」になってしまう人がいます。
そういった人たちは、周囲の人たちとの「つながりタイム」に過度な期待を寄せてしまっている人ということもできます。
その結果、相手との距離感がつかめなくなってしまい、出会った人を捕まえて離さずに話し込み、ドン引きされてしまったりします。そうして結果的に、孤独な状態に逆戻りしてしまうこともよくある話です。
実は、私自身も若いときは、自分のことを知ってほしい、考えていることを話したいといった気持ちが過剰な時期があって、絶えず人とのつながりを求めていました。
しかし、その努力に対して報われた経験があまりに少なく、人との出会いにどれほど期待を膨らませても、意味なく終わることが多いのだと学びました。
ですから、これは私も実践していることですが、そのようなときは逆に、「今日のパーティーでは誰ともつながらなくていいや」という、諦めに近いくらいの気持ちで出かけていくことをおすすめします。
人とのつながりに過度な期待を持たないことで、かえって自己肯定感が高まり、人間関係を構築する心地良い自信が生まれるものです。
人間関係を良好にする
「ホームワーク」のススメ
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。