他人は自分が思うほど、
自分のことなど考えていない!
「いい人」ほど自意識が強く、他人すべてが自分のことをネガティブに考えているようなプレッシャーを抱えています。そしてそのために、相手はあなたのことなど何にも考えていないのに、相手に対して媚びた態度などを取って、あとで後悔したりしています。
この独り相撲をやめて、楽になる方法はないのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
たとえばテレビのワイドショーなどでも頻繁に取り上げられて、次々にお茶の間を騒がせる芸能人のスキャンダル。
最近では視聴者の反応や評価はかなり厳しくなり、視聴者がまるで裁判官のように芸能人に「判決」を下すといった風潮が生まれています。
それだけに、スキャンダルを起こした芸能人の会見を見ていても、例外なく「世間の皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪する姿が目につきます。
けれどもこうした事態を脳科学的に分析してみると、人間は自分に近い世界のものには強い比較や対抗心を持つ性質があるのに対し、まったく別世界のものに関しては寛容になれるという性質に気づきます。
つまり、自分の存在意義や価値観に影響しないことに対して、脳はそれほどの興味を持たないということ。
誤解を恐れずいえば、「芸能人というのは自分とは別世界の人間だから」と考えている視聴者が大半であって、一部の人々を除き、世間は芸能人本人が思っているほど過剰反応はしていないというのが私の意見です。
皆さんにわかりやすく説明するために、こうした芸能人のスキャンダルを例に挙げましたが、これは芸能人に限ったことではありません。
自分と関わる人が自分のことをどう思っているかというのは、誰でも少なからず気になるものです。
こうした場合、自意識の強い人は何かと物事の原因を自分の中に求めてしまい、どんどんネガティブな方向に考えてしまう傾向があります。
たとえば、あなたが職場で同僚とすれ違ったときに、何の挨拶もされなかったとしましょう。実際は、その人が何か考え事をしていて、たまたま気づかれなかっただけかもしれません。
けれども、自意識が強い人は「きっと自分と話したくなくて、気づかないフリをしたんだ」などと思ってしまうのです。
こうした自意識過剰な考え方を、心理学で「自己標的バイアス」と呼びます。
自己標的バイアスの傾向が強い人は、人間関係においても不安や心配事が多くつきまとい、自分自身のイメージがマイナスになりやすい特徴があります。
ですから、「周囲から変に見られているかも?」「自分はあの人に嫌われているかも?」というように、周囲を気にし過ぎてしまう「いい人」は、被害妄想に入り込んでしまう可能性があるので注意が必要です。
度が過ぎると、「悪いうわさの対象は、すべて自分なんだ……」と思い込むような、被害妄想の域に入ってしまう可能性があるのです。
そんなときに心の中で唱えてほしい金言があります。
「他人は自分が思うほど、自分のことなんて考えていない」
人は社会的な生き物である以上、無意識的にでも他者との関わりがあるのは確かです。ただ実際には、特定の誰かについていつも考えていることはありません。
また、たとえその場では考えることがあったとしても、いつの間にか忘れてしまうでしょう。
性格や人柄の良し悪しに関係なく、あなたの人生に大きな影響を与えることがない相手にとって、向こうから見たあなたも同じように思っているのです。
そう視点を変えるだけでもずいぶん楽になれるのではないでしょうか。
一方で、あなたの関心が向いていない場所で、あなたのことをちゃんと考えてくれている人もいるはずです。
あなたを大切に思ってくれて、いつでも気にかけてくれる人。そして、あなた自身も大切だと思える人。そのような人間関係にこそ、あなたのエネルギーを向けるべきだと私は思うのです。