家族が気持ちよく一緒にいられるために大切なこと

独自の経営スタイルや働き方で注目を集める「パンと日用品の店 わざわざ」の平田はる香さん。今日から連載名を「わざわざ平田の移住日記」改め「わざわざ平田の思索日記」として、平田さんが日々の生活で考えた仕事のこと、家族のこと、人生のことをご紹介していきます。今日のテーマは「家族について」。家族がお互いに気持ちよく一緒に過ごすために大切なことについて考えます。

東御市御牧原から北アルプスをのぞむ。夕刻の風景。

「どっちが本当の平田さんなのですか?」

と、聞かれたのはたしか熊本での講演が終わった後だったと思う。「『わざわざの働きかた』に書いてあった平田さんの言葉と、今日話してくれた平田さんの言葉が全然違う。本には家族と一緒にいたいから開業したと書いてあるけれど、今は子育てに全く参加していないと言う。家族はどうなっちゃったのですか?」

たしかに私はそう書いた。そう思っていた。だけど人間はどんどん変化していく生き物なのだ。今こう書いていることは紛れもなく本当のことで、嘘偽りは一つもない。だけど、もしかしたら明日になったら嘘になってしまう危うさは孕んでいる。それほど人の心は移ろいやすい。

毎日、思考を少しずつ重ねていると数日後には全く違う方向に向かっているような気がしてくることもある。それが年という時が経てば、だいぶ変わっていることもあるだろう。


家族は一つであるべきなのか?

最近はこのことばかり考えている。夫と娘たちとの関係性は極めて良好である。が、しかし、私はどうしても一人になりたいという気持ちから離れられなくなっている。先日、BAMPというwebメディアから、「経営者の孤独」というテーマの取材を受け、洗いざらい現在の心境を話した。「わざわざ」という会社のパッケージングから少し離れた一個人としての取材に近いものがあって、家族のことも大分話したと思う。

その取材で改めて気が付いたことだったが、自分がとても疲れていて、一人になることこそが安住の地であると感じていることを痛感したのだった。家族と一緒にいることにさえ私は疲れていて、一人を欲し、一人でいることに恋い焦がれている。

BAMPの取材でも話したことだが、私は0歳の時に両親が離婚し、父親、祖母、兄という家族構成で育っている。母親という存在が物心ついた時からいないので、今も「お母さん」というフォーマットがどういうものかよくわからない。見たことがないのだ。だから自分も世間的なお母さんとして振舞うことがとても難しい。だが、紛れもなく二人の娘の母親ではある。

この10年は子どもを産んだという責任感もあって、一生懸命母親をやろうとしていた。だけど、子どもをどうしても子ども扱いすることができない自分には、子どもに合わせて一緒に遊び、一緒にどこかに行くことがとても難しく感じていた。子どもはかわいい。だけど、「わざわざ」をやりながら、それ以外の生活全部が家族中心になることが辛くなっていった。自分の安住の地が全くない。会社をやっていなかったらできたと思う。それほど会社を経営するということは心身の負担が大きい。

そして、その状況は2016年に夫がサラリーマンをやめて「わざわざ」に参加してきてから、大きく変わっていった。今年の頭には、夫と相談して家事育児を夫中心で行うことになり、私はお母さんから足を洗い、夫がお母さんになったのだ。


家族にも尊敬と思いやり

人間と人間が付き合うにあたって一番大切なことは、お互いを尊敬しあい思いやりを持って接することだと思う。以前にも書いた平野啓一郎さんの分人という概念で言うならば、誰かと相対している時に自分の人となりが出てくるということであるから、思いやりや尊敬が露出して誰かと接することが私にとって大事なことであると思う。

一方で、怒り、辛さ、不満などの感情を全面に出して人と接することは、私にとって非常に苦痛な行為だ。できればずっと自分の中に隠しておきたいし、誰にも見せたくない。自分自身の中で好きではない自分を他人に見せることが辛さを感じてしまう。

家庭や会社の中で怒らなければならない時には、ものすごく嫌な気持ちになる。本当は怒りたくない。だけど言わなければ、伝えなければ、進む方向が曲がっていってしまう可能性がある時には、言わなくてはならない。そういうシチュエーションになると心にものすごく負担がかかり、状況を思い出して本当に怒ってよかったのかと状況を何度も反芻し後悔することもある。だから、負の感情を露出させることは、人生の中で最小限に納めたいと思っている。

家族に対しても、長く付き合うからこそ同じように接したいと思っているが、他人よりも難しい。家族という距離の近さだからこそ、簡単に怒ってしまうし簡単に負の感情を見せてしまうことがある。子どもは色々とダメなことをする。夫は長年の付き合いだから不満も言いやすい。だけど毎日、そればかりを繰り返していたら家の中が荒んでしまう。やはり家族にも尊敬と思いやりを持って接することが大切だと思う。むやみに怒らず、優しい言葉で思ったことを伝えることが大切なのだ。


私の家族観
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わざわざ平田の思索日記

平田はる香

長野県東御市にある「パンと日用品の店 わざわざ」。山の上の長閑なこの場所に、平田はる香さんは2009年にひとりでお店を開きました。平田さんがnoteで公開した記事「山の上のパン屋に人が集まるわけ」が大いに反響を呼び、独自の経営スタイル...もっと読む

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コメント

3839Ay @wazawazapan 「今も「お母さん」というフォーマットがどういうものかよくわからない。見たことがないのだ。だから自分も世間的なお母さんとして振舞うことがとても難しい。だが、紛れもなく二人の娘の母親ではある。」 https://t.co/5oFVSBpsBm 2年弱前 replyretweetfavorite

hakatayuka やはりそうなるのね。彼女のさだめなのだろうが。娘さんが自立したら 夫捨てそう https://t.co/4S3PX7dWv7 2年弱前 replyretweetfavorite

allsync_jp |わざわざ平田の思索日記|平田はる香|cakes(ケイクス) 自分の感性に潔く正直なこと、それがとても清々しい。 https://t.co/kgnpsn1sxm 2年弱前 replyretweetfavorite

halunom 今思っている「当たり前」が本当に自分にフィットするのか、何においても一旦立ち止まって考えられるようになりたい。 "サザエさんやちびまる子ちゃんで描かれる家族の形に、全ての人間を当てはめるのはナンセンスだろう。" https://t.co/9qQNOq9bj7 2年弱前 replyretweetfavorite