ワタナベアニです。背景をいかに扱うかなどの話を一通り読んでいただいたあとは、また黒バックに戻ります。
写真を撮ることは楽しいですが、音楽やスポーツと同じように「巧くなる」と、もっと楽しくなります。ここは意見が分かれるところなので、自分はどう思うのかをよく考えてみてください。聞くに堪えないヴァイオリンを弾くのが楽しければそれで構いません。「俺はこのギコギコした音が好きなんだ」と言うなら、誰にも止める権利はないのです。ただ、美しい曲を美しく弾けるようになる喜びは別のところにあります。
ポートレートで言えば、撮った人から、「わあ、私のことを綺麗に撮ってくれてありがとう」と言われる方が楽しいですよね。そこにカウンセリングに近いような効果を感じることもあります。
厚かましい自信家以外の多くの人は、自分の容姿に自信がないものです。傍から見たら十分美しい人でも、実は自信がなかったりします。撮った写真を見せてあげるのは、そんなことないですよ、という証明でもあります。鏡を見るより客観的で、他人の目を通した結果としての「写真」を見たとき、「私ではないみたいだ」と言います。自分の容姿を一番知らないのは自分なのです。
モデルの表情を見て、服のしわをチェックして、太陽の位置を見て、背景を通り過ぎる人を見て、シャッターや絞りやズームを決める。そんなことが一瞬で同時にできるようになるまでには長い時間がかかります。ですから初めはできるだけやるべきことを少なくしましょう。
意味のある背景を一切なくしてしまう。白バックや色バックで練習します。露出やレンズも固定してしまい、シャッターを押すタイミングだけに割り切るのです。人の表情、それがあらわす感情が撮れるようになったら、ライティングや露出を変化させたり、美しい背景をプラスアルファとして画面の中に入れることができます。
さあ、撮りましょう。
堂々とした少女
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