時代の方がそのうち合わせてくれる
山口 専門学校にあがった時はもう嬉しくってしょうがなかったな。でも、課題が異常に厳しくて毎日のように徹夜してたよ。最初はひたすらまっすぐ線を引く練習させられるんだけど、ずっと油絵しか描いてなかったからまったくできないの。おまけにデッサン力もないから、デッサンの授業もいっつも怒られるし……。才能がないんじゃないか? なんて思ったりしたけど、キツイのはオレだけじゃなくて、夏休みが終わったら半分ぐらいは辞めてたな。
──それでも充実はしてたんですか?
山口 そうだね。今でもあるけど、お茶の水駅前にお城みたいなサンロイヤルビルってあるじゃん。あそこって昔は喫茶店だったんだよ。そこに毎日学校帰りに行って、友だちたちと延々おしゃべりするのが楽しかったな~。
──音楽の趣味とかは変わらずでした?
山口 いや、激変したよ。79年に入学したんだけど、ちょうど時代の変わり目っていうか、それまではレッド・ツェッペリンとかピンク・フロイドばっかり聴いてヒプノシスとか憧れてたのに、急にダサく感じちゃったからね。時代はニューウェーヴで、オレも髪の毛短くしたもんね。ベルボトムのジーパンも捨てちゃって。60年近く生きてきて、「あ、時代が変わったな」って肌で感じたのはその時ぐらいだな。
──異常な人生ですね……。
山口 みんなすぐに「時代は変わった」とか言うけど、オレに言わせりゃそのぐらいの頃から何も変わってないのよ。17、18歳ぐらいからオレ自身の生き方はまったく変わってないでやってこれたから。
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