茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)/1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。脳科学者。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
※前回のお話はこちら。
——これまでさんざん「いい人」をやってきているので、簡単に抜け出せなさそうです。何か手始めにやってみるといいことはありますか?
茂木健一郎(以下、茂木) まず、趣味のサークルでも何でもいいから、今とはまったく違う人間関係のなかでキャラ設定をやり直してみる。じつは僕自身が、すごい“キャラ変”を経てるんです。
大学院時代の僕は「いい研究者でいよう」っていうのが強かったけど、ケンブリッジ大学に行ったとたん、いきなりはじけちゃった。周りじゅう変人だらけで、「もうどうでもいいや」って(笑)。でも、それぞれみんな、すごい才能を持った科学者ばかりなんですよ。
——大学院時代には、まだ規範に合わせるっていう意識があったんですね。
茂木 ありましたね。でも、ケンブリッジ以降は全然気にしなくなりました。象徴的なのが僕の身の回りのことで、髪の毛はモジャモジャだし自分で切ってるし、ジャケットはいつもリュックの中にクシャッと入ったままだし……。
いまだに注意してくれる人もいるんだけど、そのうちに「あ、この人は髪の毛はちゃんとしない人なんだ」「ジャケットはリュックの中で丸まってる人なんだ」ってわかってもらえて、いつの間にか言われなくなります。うん、変人認定されるとラクですよ〜。変人クラブへようこそ(笑)。
——変人クラブですか(笑)。
茂木 まあこのことはさておいて、とにかくキャラ設定を変えると、そこからまた新たな人間関係が広がったりするんですよ。
欧米の女性って、よく髪の毛の色を変えるでしょう? これも一種の“キャラ変”なんだけど、そうしたとたん、寄ってくる男性のタイプがまったく変わるらしいんです。
——そうなんですか!
茂木 おもしろいよね。だからキャラ設定を変えると、恋人が変わる……って、これはマズいかもしれないけど(笑)、要はモテ方が変わる。別に男女の関係だけのことじゃなく、もっと広い意味で、付き合う人間が変わるってことです。
「いい人」をやめた人のやり方を「完コピ」
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