ふっくらおいしい『ブリの照り焼き』のポイントは脂と火加減

食の博識、樋口直哉さん(TravelingFoodLab.)による科学的「おいしい料理」のつくり方。27回目のテーマは『ブリの照り焼き』です。『生臭くなく』『ふっくら』した照り焼きをつくるポイントは、脂の酸化防止と火加減。アレンジメニューとして「ブリの山椒焼き」もご紹介します。

 照り焼きは食卓の人気者。なかでも一番人気はブリの照り焼きでしょう。
美味しくつくるポイントは下味と火加減。普段、魚料理を食べないという方も一度、作ってみると、あたらしい定番になるかも。
 今回は『生臭くなくて』『ふっくら』としたブリの照り焼きを目指します。


ブリの照り焼き 

材料(2人前)
ブリ(切身) 2枚
塩      適量
小麦粉    適量
サラダ油 小さじ1
醤油   大さじ2
酒    大さじ2
みりん  大さじ2
上白糖  大さじ1


 まずはブリの選び方から。スーパーに行くと高価な『天然物』と比較的安価な『養殖物』の2週類が売られています。ざっくり説明するとおいしいのは

 いい天然物>今の養殖物>悪い天然物

 の順番です。 天然物と養殖物の味の違いはブリが食べる餌に起因します。ブリはイワシなどの小魚を食べるのですが、天然物には身にその匂いが移っていることがあるのです。
 しかし、養殖物は餌をコントロールし、匂いを抑えているので、味が安定しているのが特徴。一般人にはまずいい天然物は入手できないので、是非、養殖物を選択してください。
 また、魚の生臭さはそれ自体だけでなく〈脂が酸化する〉ことによっても生じます。それぞれの養殖産地ではオリーブや柑橘など抗酸化作用のある飼料を餌に混ぜることで、個性を競っているので、養殖物は特に臭みが少ないのです。
 脂の酸化防止はブリの照り焼きを上手につくるポイントで、調理中のそれを防ぐための方法はあとで詳しく説明します。

1.ブリの切り身は表面(最初に焼く面)に薄く塩を振り、10分間以上置く。

*塩を振るべきか、振らないべきか
 ブリの照り焼きの一般的なレシピには、下味として塩を振るパターンと振らないパターンの2種類が存在しています。
 この塩は必要なのでしょうか。照り焼きの味は表面のタレが果たす役割が大きいので、下味の塩の有無が大きく影響するのは表面の食感です。
 塩を振ることで表面のタンパク質の性質が変わり、身が締まった──言ってみればかまぼこのような状態になります。この状態になるとひっくり返すときに身崩れを防げますが、ややしっとりするので、全体のふっくら感はわずかに減ります。つまり、塩を振る派はしっとり感と作りやすさを、振らない派は全体のふっくら感をそれぞれ優先しているわけです。
 今回、紹介する作り方は塩を振る派、振らない派の折衷案。ふっくら感は欲しいですが、作りやすさも大事なので、最初に焼く面だけに塩を振っています。これで身崩れは防げますし、ふっくら感も充分に出せます。写真を見ればわかると思いますが味付けのための塩ではないので控えめで大丈夫です。

2.調味料(醤油大さじ2、酒大さじ2、みりん大さじ2、上白糖大さじ1)を準備しておく。

*調味料は事前に準備
 あとで慌てないで済むように、調味料は事前に準備しておきましょう。写真はわかりやすくするために別々の器に入れていますが、醤油、酒、ミリンは一つの容器に混ぜておいても結構です。ただ、砂糖は溶けきれずに残ってしまったりするので、別にしておいた方が安全。
 ブリの照り焼きはこの調味料の配合にも個性が現れますが、それはこの後の工程で詳しく説明します


3.ブリの切り身に小麦粉をまぶす。この時、皮目にはなるべく小麦粉をつけないようにする。

*小麦粉をまぶすわけ
 塩を振ったので、ブリの身に水分が浮いているかもしれません。その水気に臭みがあればふきとってから小麦粉をまぶしますが、今回は臭みのないブリだったのでそのまま作業を進めてます。この小麦粉があとでタレのとろみになります。

 調味料の配合で人によって大きく違うのは砂糖の量です。一般的に関西以西の人は甘めの味付けを好むので砂糖が多く、逆に関東では辛めの味付けが好まれます。また、お酒とあわせることになる料理屋さんでは砂糖を入れずに、すっきりとした味付けに仕上げることが多いでしょう。
 砂糖の量は甘さではなく、タレのトロミ加減にも影響します。今回は大さじ1の甘さ控えめの配合にしたので、それだとトロミがやや弱くなります。そこで表面に小麦粉をまぶして焼くことで、トロミを補いました。
 また、テフロン加工のフライパンならあまり関係ありませんが、小麦粉を振ることで鍋にくっつきにくくなり、焼き色も付きやすくなるなどのメリットもあります。この時、皮には小麦粉をつけないようにするのが小さなコツ。皮にまで小麦粉をつけると脂が抜けにくくなるからです。


4.フライパンを中火で1分間、予熱する。サラダ油小さじ1を敷き、3のブリを表面から焼いていく。この時、箸などでブリの身を持ち上げて皮目から脂を出すようにする。

*魚を焼くにはテフロン加工のフライパンが最適
 皮をおいしく食べるには、よく焼くのがポイント。フライパンに接していない面には火が入らないので、箸かトングで持ち上げて意識的に焼くようにします。今回はテフロン加工のフライパンを使っているので、軽く予熱するだけで焼きはじめていますが、鉄のフライパンを使う場合は強火でしっかりと熱し、少量の油を馴染ませた後、少し温度を下げてから同様に焼きます。意識的には以前、紹介したポークソテーを焼くときと同じです。


5.調味液を入れる前に、フライパンに出てきた脂をふき取る。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
おいしい」をつくる料理の新常識

樋口直哉

食の博識、樋口直哉さん(Travelingfoodlab.)が、味噌汁、ハンバーグ、チャーハンなどの定番メニューを、家庭でいちばんおいしく作る方法を紹介します。どういう理由でおいしくなるのか、なぜこの工程が必要なのかを徹底的に紹介し、...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

cellulito 昨日はcakesで愛読しているこちらの連載を見ながらぶりの照り焼き作りました。それと大根おろし、青梗菜のおひたし、きのことネギのお味噌汁、あまったカレー。平日夜の自炊率を増やしていきたいー。 https://t.co/VrWCapEyzG 6ヶ月前 replyretweetfavorite

tomshirai 塩を振る派はしっとり感と作りやすさを、振らない派は全体のふっくら感をそれぞれ優先している 7ヶ月前 replyretweetfavorite

mmr_hrk ブリあんま上手に焼けないんだよなあ…。 料理はホント科学でござる。 → 7ヶ月前 replyretweetfavorite

naoya_foodlab みりんには脂質の酸化を抑制する働きがありますが、メイラード反応に由来するのでみりん風調味料や糖類添加タイプでは効果が薄いということ。https://t.co/jCWEY5JGC1 7ヶ月前 replyretweetfavorite