Photo credit:tycoon751/Thinkstock
低月齢育児のツラさとして、広く認知されている「睡眠不足」。
赤ちゃんは自力で寝ることができなかったり、睡眠が浅く夜泣きがある場合も多いため、付き合う親の睡眠環境もボロボロになる。
これは大変しんどいのだが、睡眠不足は育児をしたことがない人にも馴染みのある身体症状であるし、「夜中に泣け叫ぶ赤ちゃん+必死にあやす親」というビジュアルは、数々の映像作品で頻出なので、ああ、赤ちゃんは寝ないよね、寝れない親もツラいよね、という認知が、大多数の人に共有されている。
この「しんどさのメジャー化」という現象は、当事者をかなり助ける。
理解が増すと、共感が得られ、弱音を吐きだしやすい状況ができ、適切な配慮が得られる。
なのでここでは、私がメジャー化してほしいと強く願っている、「たべない育児」の話をしたい。
睡眠不足が肉体的にツラい育児の上位なら、精神的なツラさの上位は「子供が食事をたべない」という現象であると、私は考えているのだ。
「離乳食」はママ友関係を変化させる
はじめは母乳かミルクだけで成長していく赤ちゃんも、5~6ヶ月頃になると、離乳食が開始され、少しずつ食事に慣れていく。
数多くある0歳児育児のトピックで、「離乳食」は、ある意味、特別だ。
産後から横一線の育児をしてきた出産時期の近いママたち。
もともとの友人でなかったママ友には、大きな遠慮や手探り感があり、とかく「子育ての方針」や「子どもの発育、容姿」にネガティブな発言をすることは、絶対タブーという空気感が強く存在している。
月齢が低いうちの大きな関心事である、「母乳の出」「子どもの睡眠時間」「クビすわり、寝返りの時期」といったトピックは、親のコントロールでどうにかなるものではないという理解が、すんなり全体に定着しているので、悩みを持っているママに対しても、「大変だね」「うちなんてこうだよ」と、さまざまな育児ケースが寛容に受け入れられやすい。
育児自体にまだ慣れていない段階なので、よそのお宅のケースを知ることへの興味も強く、多くのママが「聞くこと」に意欲が高いのだ。
しかし離乳食は、情報を集める、調理する、生活に組み込む、といった「親の判断、工夫」が入り込む余地があるがために、「食べない=親の努力が足りていない」という判断をされがちだ。
寝る寝ないと同じく、食べる食べないも子供の個性による部分が大きいはずなのに、「食べる子のママは食べない子のママよりも育児が上手」という価値観が、集団の中に突如出現し、パンデミックのごとく一瞬で浸透する。
すると、順調に離乳食が進捗していくママは、いき詰っているママに対して、「うちはこうやったら食べた」「もっとこうしたらいいんじゃない?」と、まるきり善意のアドバイスを行う。
少しの変化や工夫で食べるようになる子もいるが、何をどうしても食べない子も存在するので、降り積もる「次はこうしたら?」は少しずつ重さを増し、「たべない」に毎日向き合う親の心に、ズシリ…と負担をかける。
しかしアドバイスをする側は、どこまでも「善意」から発言しているし、受け取る側もそれはわかっているので、拒否することもまたツラく、この息苦しさには逃げ場がない。
なぜこのような現象が起きるのだろう。
産後半年をすぎ、体調や生活が安定する時期でもあるし、基本的にめんどくさい離乳食で「結果」が出たことで、他者に進言できるような自信がつくのだろうか。
それとも、話さない赤ん坊と長時間一緒にいることで、「話を聞く」というコミュニケーションスキルが目減りしたのだろうか。
真相はわからないが、この図式も「たべない育児」がツラくなる一因である。
続いていく「たべない」が親に与えるダメージ
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