なぜチコちゃんに叱られたいのか

今回取り上げるのはNHK『チコちゃんに叱られる!』のチコちゃん。決め台詞「ボーっと生きてんじゃねえよ!」が『新語・流行語大賞』にノミネートされるなど、チコちゃんの毒舌が話題になっているこの番組。さぞかしキレるキャラクターなのかと思ったら、そこまでではない様子。そんなしょっちゅうキレているわけではない5歳児について考えます。

「おい、オレのが先輩だぞ!」

バラエティ番組を見ていると、先輩・後輩の関係性を説明する場面に繰り返し遭遇する。「年齢は下だけど芸歴はあっちのほうが上」だとか、「芸歴から考えれば、かなり馴れ馴れしいし、その上、飲みの誘いを平気で断る後輩の態度」だとか、「わざわざちっとも売れていない先輩の名前を出して、『誰やねん?』『へ? 知りません?』『知らんわ!』のやり取りを繰り返す中堅の話法」だとか、芸歴に準じた関係性を何度も教え込まれる。

以前も書いた記憶があるけれど、『しゃべくり007』で有田哲平にいじられた原田泰造が、頻繁に「おい、オレのが先輩だぞ!」の突っ込みで済ますのがどうしても苦手なのである。自分が体育会系社会を心底毛嫌いしてきたから、との勝手な理由なのだが、あの番組自体が、無法地帯へようこそ、と言わんばかりの姿勢で芸能人を招き入れているのにもかかわらず、「おい、オレのが先輩だぞ!」は、極めて無難なコミュニケーションとして、その場の法規になってしまう。いっつも原田の所作を見て笑っているのに、その時だけは、先輩だから何だってんだよ、と小さく呟いてしまう。でも多分、それが繰り返されるのは、当人が手応えを感じているからなのだろう。

ずっとキレているわけではない

テレビだけではなく、世の中には、「同い年だけど、早生まれで学年は一個違い」といった話に溢れている。話の流れの中で「ってことは、自分が小6の時に武田は小3ってことか」というフレーズが炸裂することも多い。こちらは「ですね」としか答えようがない。年長者を敬う気持ちはあるものの、年長者であるという理由だけで敬おうとする気持ちは少なく、年長者なんだから敬え、と直接的にでも間接的にでも言われると、すっかり敬いたくなくなる。原田の「先輩だぞ!」が苦手なのは、彼がどうのこうのというよりも、これまでの社会人生活で浴びてきた「先輩だぞ!」に起因するあれこれが掘り起こされ、塊となり、再び脳天を直撃するからかもしれない。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ナンシー関に"賞味期限"はない

この連載について

初回を読む
ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

wataseshiano 武田砂鉄さんのコラムは本当にいつも面白いなぁ〜🦔 "「わざわざちっとも売れていない先輩の名前を出して、『誰やねん?』『へ? 知りません?』『知らんわ!』のやり取りを繰り返す中堅の話法」"というフレーズの強さで笑った😂 https://t.co/Ah088C2BeN 18日前 replyretweetfavorite

sinpost2 年上への苦言の出し方(叱り方)を学びたい。 (冗談ではなく本気です。シニアの行動変容依頼増えてます。やらんと生活保護一直線です。) https://t.co/AauXQduyMJ https://t.co/AauXQduyMJ 20日前 replyretweetfavorite

co_jit 1件のコメント https://t.co/5wJwLiAWKB 20日前 replyretweetfavorite

co_jit 1件のコメント https://t.co/5wJwLiAWKB 20日前 replyretweetfavorite