FOK46—フォークオーケン46歳
【第3回】246の橋の下

 父は昭和四年、母は昭和八年の生まれだ。2012年現在も存命中である。僕は幼い頃、モノラルのラジカセで、父の好きな小林旭ばかり聴いて育った。すっとんきょうと言っても過言では無いアキラ(と父は呼んでいた)のハイトーンはしかし、どこまでも遠く旅をするようにのびていく。子供心にも哀愁を感じさせて引き込まれた。

 中でも「ギターを持った渡り鳥」という、タイトルのままにギターを抱えて東へ西へ、あてどなくさすらう男の放浪歌は、ライフスタイルとはけして社会や時代の定型などではないのだという自由であることの大切さを教えてくれたように今思う。

 ちなみにマジメ一筋のサラリーマンであった父にとっては、「さすらい」とは憧れでもあったのかもしれない。「あ〜こんなふうにさすらってみたいな」と戯れ言を言った父に僕は反抗期のころ「じゃあ会社やめて今すぐ旅に出ればいいじゃないか」と吐き捨て絶句させたことがあった。
 思えば、その頃、父は今の僕くらいの歳であった。

 僕は幼い頃体が弱く、長期学校を休んで自宅で寝ていることも多かった。
 いつも微熱気味で、苦しんでいるわけではなかったので、暇だろうからと枕元に母がラジオを置いてくれた。
 そこから流れる当時流行のニューミュージックが僕の音楽への興味を喚起した。特に小椋佳の「めまい」というアンニュイなメロディーの楽曲が好きだった。
 これズバリ大人の男女の不倫の歌である。

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小説 FOK46—フォークオーケン46歳

大槻ケンヂ

30年以上音楽活動を続けてきた、ロックミュージシャンの大槻ケンヂ。楽器演奏と歌を歌うのを同時にできないという理由で、ボーカルに徹してきた彼が、2012年、ギターの弾き語りでのソロツアーを始めた。その名も『FOK46(フォークオーケン4...もっと読む

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