​コミュニケーション疾風怒濤時代〜失望篇

子供の頃から、人付き合いに積極的な方ではなかった。アイツは変わり者だからしようがないよと、消極的 に存在を承認してもらえれば十分だった。しかし、こんな若者が、なぜか「世界一の取り扱い高 の広告代理店」に入社。新入社員研修で、早くも面倒なことに巻き込まれる! 実話。話題の書、『伝わるしくみ』から特別連載です。

『伝わるしくみ』山本高史
マガジンハウス

コミュニケーションは、向こうから勝手にやってくる

 まずはぼくの青くさく情けない昔話から始めます。
 コミュニケーションの面倒くささ、厄介さを痛感した実話であります。

 決して人間嫌いだったわけではないと思うが、子供の頃から人付き合いに積極的な方ではなかった。 「一人っ子」に原因を求めるのはあまりにも短絡的で、世界中の「一人っ子」にゴメンなさいなのだが、当たらずとも遠からずで、一人で解決しなければならない問題や、 一人で潰さなければならない時間に慣れてしまうのはしようがないこと。

 そもそも仕事での成功や、豊富な人間関係に充足感を見い出そうとしなければ、個人として生きていく分には数個の関係性で事足りるものだ。
 そうだとすれば人付き合いの面倒くささを、あえて多めに背負い込む必要もないわな、と今でもときどき思う。
  (いま一年中、学生たちと接していて、彼らの「面倒くさい思いまでして人と付き合うことはないよね」という気分は、ほんとうによくわかる。「そういうの損だよ」と口では言っていますが)

 そういうことだから、物心ついた頃から人の真ん中や矢面に立ったことはなかった。 その気もないし、向いてもいなかったし、もちろん請われることもなかった。
 ぼくは好きな音楽を聴き、好きな服を着て、好きなことをして、周りから浮きながらもあえて遠ざかることもなく、アイツは変わり者だからしようがないよと、消極的に存在を承認してもらえれば十分だった。そう多くはない気の合う友達と好きな女の子との関係を維持していればよかった。
 その青春が一般的に幸福だったかどうか考えたことはなかったが、1985年3月大学を出るまでのぼくにはそのような生き方を選択することが可能だった。

不安と葛藤  

 1985年4月、ぼくは大学を出て、当時一つの会社としては世界一の取り扱い高 の広告代理店に入社した。
 何しろコミュニケーションの会社に先述のような若者、である。しかも「広告の会社を志望して入った」のではなく「受かったのが広告の会社」という順序だったので、 広告のことなんかほぼわからない。コピーのことを複写機で何かすることと思い込み、 それにしてもコピー機をライトするコピーライターって何をどうする人なんだろう?  と訝いぶかしがっていたほどの体たらく。

 そんな若者の行く道が平坦なわけがないですよね。その先がどのようなものかは想像もつかなかったが、嫌な予感をやり過ごせるほど鈍感でもなかった。
(オイオイ、えらいことになっちゃったぞ)という感じだった。

正直、ここから人生が変わります。 (始まったのかもしれません)

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