産後も仲良し夫婦でいるには? 家族を救う「リモート育児」

かわいい我が子に癒される一方で、逃げ場のないツラさもある育児。周囲や家族のなにげない言葉にイライラしてしまうことも。現代の子育てをめぐる問題を考える連載。第1回は、0歳育児における夫婦のすれ違いについてです。育児を手伝おうとする夫に「そうじゃない!」と苛立ちをぶつける妻。その原因と解決策について考えます。(連載名に込めた著者の想いはこちらから)

cakesユーザーのみなさま、はじめまして。
瀧波和賀(たきなみ わか)と申します。
2歳の娘を育児中のワーママで、普段は子育て系メディアにて、マーケティングと編集の仕事をしています。
子育てのあれこれについて、こちらで書かせていただくことになりましたので、どうぞ宜しくお願い致します^^


イラスト:タキノユキ

妻の育児と夫の育児

さて、少し前の話だが、弊社の社内報に、0歳のお子さんがいる男性社員のインタビューが載っていた。

主な内容はお子さんの可愛さだったり、夜泣き対応のしんどさだったのだが、その中に「嫁さんの負担を軽くしようと思ってやったことを、いちいちやり方が違うとかなんとか言われて、正直やる気なくなる」という意味合いの一文があった。

これを読んだパパ社員は「あ~あるよね~そうゆう時期よね~」や「わかるわかるwほんとそれw」のように、ライトな共感と同情を示していたように思われる。

対して、ママ社員の反応は「ありえない! お前の子だろ、完璧にやれ!」や「何この逆ギレ? なんで0歳育児で大変なのに旦那のやる気まで盛り上げなきゃなんないんだよ!」と、それはそれは、怒り心頭。
ちょっとした社内炎上状態に。そして戦慄する独身社員たち。

夫の育児にイラッとした、または、良かれと思ってやった育児で、予想外に妻の不評を買ってしまった、という経験がある方は多いのではないだろうか。

特に低月齢のお子さんを育児中の夫婦において、この状況は非常にメジャーである。
にも拘わらず、等しく当事者であるはずの妻側・夫側の感想が、ここまで真っ二つに割れてしまうのは何故だろうか。

私は両者の「問題だと認識している部分のズレ」に原因があると考えている。


0歳育児における、最大のしんどさ

0歳育児はツラい。
赤ちゃんはかわいくて愛しいが、しんどい引き出しも、ふんだんにある。

慣れないお世話、頻回授乳(*)、おむつ替え、睡眠不足、乳腺トラブル、引きこもり生活、言葉が通じない孤独感、腱鞘炎、産後のダメージ、エンドレス抱っこ、肌荒れ対応…。
*)胃の容量が少ない新生児に母乳・ミルクを頻繁に与える授乳法。

近年はSNSの発達により、当事者たちのナマの体験が広く発信されるようになり、「赤ちゃんを育てるって大変なんだな」という認識は、かつてよりも世間に浸透したように思う。

なので細かく説明しないが、これら1個1個の困難はあくまで枝葉の事象で、新米母の根幹的なしんどさは「いまだかつて背負ったことのない重大責任を、自分の心身だけで担わなくてはいけない」という点にある。

0歳児は自分で生命の維持ができない。
栄養、睡眠、衛生などの生きていくための管理は、すべて親の努力でまかなっている。
「死」などと書くと、そんなおおげさな、みんなちゃんと育っていってるわよ、と思われそうだが、乳児の死亡事故は少なくない。検索すれば次々に不幸な話がヒットする。

医療、介護、保育など、人の命に関わる仕事をしている方も、たったひとりで特定の命に責任が発生するような場面は、そんなに多くないのではないだろうか。しかも、自分の命よりも重要な、特別極まりない命である。

この重大責任を、24時間休まることなく背負い続けることは、多大な消耗なのだ。


夫の「点」と妻の「面」

先週はミルク50mlだったから、今週はどうしよう…
予防接種いかなきゃ、あの病院の評判はどうかな…
少し寒いな。もう一枚着せようかな、でも着せすぎはよくないし…
うちの子泣きすぎ? 私の抱き方がおかしいの…?

とにかく不安なのだ、新米母は。
自分の選択が、最愛の我が子にとって、命に関わったり、そうでなくても、後々悪い事態を引き起こす原因になってしまわないか、常におびえている。

月齢の近いママ友の子が、うつ伏せの練習をはじめた、夜間断乳した、ストローが使えるようになった、と耳にするたびに、焦燥感がドッと胸に打ち寄せる。

自分がトロトロしていたせいで、我が子の何か重要な可能性が減ってしまうかもしれない…! 全貌はわからないのに、なんだか取り返しがつかなくなるような気がして、苦しい。


0歳児を育てることは、命を当たり前のように守りつつも、細かい情報収集と決断を無限に迫られ続ける、脳と精神のフルマラソンだ。

授乳やオムツ替えなど、1つ1つの育児アクションが「点」なら、休まず続けていくことが「線」、さらに、赤ちゃんの心と身体と頭の発達をトータルで考え、外気浴、感覚遊び、読み聞かせなど、月齢ごとに必要なアクションを計画する行為が「面」だ。

妻は命の責任者として、子の未来という壮大な「面」を設計している。

なるべく大きくきれいな面を作りつつ、線を維持させている緊張感の中、「点」の1つも満足に行えず、なんでこれが必要なの?こっちの方がよくない?と1点だけを指さして議論したがる夫をみると、蓄積した疲労が、信じられない憎悪を巻き起こす。


表面的には「そんなこともできないの!」「なんで私に聞くのよ! こっちだってわからない中やってる!」と怒りばかりが発散されたような言い方になってしまうが、その心のうちは泣いている。

どうして「点」でつまずいてるの、あなたも親なら、一緒に「面」の話がしたいのに…と。

何も手際の悪いオムツ替えそのものに本気でイラついているわけではなく、視ている全体像があまりにもスケールちがいなので、そこに絶望を感じて怒っているのだ。

しかし夫は、育児の「敵」では決してない。
唯一無二で最強の、味方なのだ。
ほんとは妻も夫を責めたくない。叱られながらやる育児が苦痛なことは、わかっているのに、余裕がなくて止まらない。
ではどうしたら、爆発しない「余白」を手にすることができるのか。


ワンオペ育児を救済するのは「リモート育児」

夫が多忙な場合、妻と同じだけの育児アクション、つまり「点」の数を担うことができないのは仕方がない。これは多くの妻も承知している。
むしろ、夫は家族のために働いているのだから、育児はなるべく自分が担い、夫の負担を減らしたい、と根底には思っている妻も多いのではないかと思う。

しかし想像以上にしんどい0歳育児で、継続的に関わってくれる大人は夫だけの家庭も多いため、ついつい要求が本質を外れてしまう。

夫がオムツ替えや寝かしつけなど、「点」を多く担当してくれると、確かに妻の負担は減るのだが、最もツライ「面の設計、拡大をひとりで担う責任」からは解放されないので、根本的な解決にはならない。

産後クライシスに陥らず、夫が多忙な場合にもうまくいっている夫婦は、この「面の設計」を夫婦2人で行えている場合が多い。

「今うつ伏せの維持がこれくらいだから、首すわりはいつ頃かもね。じゃあその頃にスタイやバンボを買いに行こうか。あそこのショッピングモールなら、授乳室が広いみたいだよ。」

「任意の予防接種はこの病院が安いけど、けっこう待つって評判だから、少しくらい高くても、こっちの病院にしたらどう? お昼寝前の時間に予約しておこうか?」

「離乳食の開始はいつ頃でどうかな。体重が7キロ越えてからがいいみたいだよ。この小児科はアレルギー科もあるから、万が一のときは連絡してね。木曜定休だよ。」

こうした「子供の成長度合いや生活のリズムを知っていないと組めない予定」を妻に任せきりにせず、一緒に考えて提案したり、コマ切れ睡眠の妻にかわって「比較検証が必要な情報」の収集を率先して行ったりすることは、直接的な育児アクションではないが、離れていても行うことのできる、立派なリモート育児である。

個人的な話で恐縮だが、我が家はこうした「面の設計」を主に夫が行っていたので、子の成長に合わせた新しいアクションを考える負担を背負わずに済み、「点と線」に集中することができたので、ずいぶんラクだった。

離乳食用のスプーンはシリコン製とプラスチック、どちらがいいのか、オムツをMサイズにアップする目安はなんなのか、帰宅するたびに検索した情報を一生懸命はなしてくれる夫の姿は、初めての育児を、ずっとずっと支えてくれた。
それは、夫が通勤中や昼休み、ネットサーフィンと仮眠につかっていた時間を、「育児時間」にシフトしたことの、確かな証明だった。

私以外に、この子の「今」にベストなものや、ちょっと先に必要なものに関して、責任を持っている人がいることは、頼もしく、楽しく、そして豊かだった。
熟睡できる時間と、家族にむける笑顔が増えた。

リモートワークを導入する企業が増えてきた時代だ。
直接的な育児アクションばかりでなく、もうひとつ深いところで、本質的に新米母を蝕んでいる「面の設計」にスポットがあたり、自宅にずっとはいれない父親も、リモート育児を駆使することで、より幸せな育児ライフが増えるといいな、と感じている。

<次回は11月30日(金)更新予定です>


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この連載について

育児はまぶしい、オモチャ箱

瀧波和賀

「現代の子育て」をとりまく、問題や課題、そして幸福に注目して、その構造や育児現場のリアルについて、コラムとエッセイを連載します。子供がいる毎日は、なんとにぎやかで、ごちゃごちゃで、カラフルなことでしょう。1つ1つが大切で、特別で、でも...もっと読む

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doooppee https://t.co/NZa1l4F4c3 5日前 replyretweetfavorite

nagisatt 離乳食用のスプーンはシリコン製とプラスチック、どちらがいいのか、オムツをMサイズにアップする目安はなんなのか、帰宅するたびに検索した情報を一生懸命はなしてくれる夫の姿は、初めての育児を、ずっとずっと支えてくれた。 https://t.co/j7UX6tCKPi 7日前 replyretweetfavorite

erinawww 食い気味できてほしいんだよ、そうなんだよ… 9日前 replyretweetfavorite

chan_majime https://t.co/P0qmTL2U9i 9日前 replyretweetfavorite