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「女でいたくない」
「男でいたくない」
「自分の性別が受け入れられない」
って言うとすぐ、「性同一性障害ってこと?」ってなりがちだと思うんですよね。世の中を、「男/女」「性同一性障害の人/そうでない人」って感じに、二色でわかりやすく塗り分けたい人の都合に合わせていると。
だけれど実際、そんなにわかりやすくはないわけじゃない、人類。たとえば「自分の性別が受け入れられない」ということは、必ずしも「異性になりたい」を意味しない。この連載の過去記事『今付き合ってる彼女が「彼」かもしれません』でも、「日本では、女とされて生まれ、男として生きようと医療機関を受診する人の割合が比較的高い。それは“男として生きたい”だけでなく、“女やめたい”という人も相当数含まれているからではないか」というお話をしましたね。
「これをやめたい」が、「あれになりたい」であるとは限らないんです。「オラこんな村いやだ〜」って言ってる人が、全員東京に出るわけじゃないでしょ?
では、なんなのか。今回は、「自分が女であることが受け入れられない。けれど男になろうとはしていない」とおっしゃる方からのご投稿をもとに、考えてまいりましょう。この、「自分の性別が嫌だ。でも異性として生きたいわけではない」っていう、なんとも言えない感じについて。
まきむぅさん、こんにちは。いつも目から鱗をぼろぼろと落としながら読んでいます。私が相談したいことは、自分が女であることが受け入れられないということです。
私は女に生まれ、一応女として育ち、恋愛対象は男性です。でも、女という性別が受け入れられません。理由はいろいろあります。かわいく生まれなかったこと(顔の美醜は関係ない!と言われることもありますが、やはり実際に不美人は生きづらいです)。楚々と振舞うことに興味が持てなかったこと、故に「女子力が低い」、「おっさん」と称されること。
このように「女」という枠組みから外されているにも関わらず、女の姿形をしているだけで、痴漢や変質者に遭います。女だから、支配してもいいだろう、性的なことをしてもいいだろうと思い、それを行う人がいたこと。はらわたが煮えくりかえるほどムカつきます。自分が女であるがゆえにこんな目に遭うなんて、本当に気持ち悪くて仕方ありません。
こんなことを書いている私が最も性別に囚われてるんじゃないかなと自分でも思っています。性は2つでなく、もっと多様でグラデーションのようになっているということを、周りもわかってくれたらもう少し楽になるのになとも考えています(性はグラデーションなんじゃないかというのは私が勝手に思っているだけですが)。どうしたら自分を受け入れられるでしょうか。日々がんじがらめになっていて苦しいです。よろしくお願いします。
ご投稿、ありがとうございます。また、がんじがらめでも生き抜く日々、なんと申しますか、なんと申し上げても軽いかもしれないですけど、それでも、心を込めて申し上げます。お疲れ様です。
拝読して思ったことを、申し上げてもいいかしら。
ご投稿者の方、実はそもそも、「女であることが受け入れられない」わけではないのではありませんか?
ちょっと読み返して、まとめてみましょう。
なぜ「女であることが受け入れられない」とお思いになったのか。
(1)かわいく生まれなかった。
(2)楚々とした振る舞いをすることに興味が持てない。
(3)女子力が低いとか、おっさんだとか言われる。
(4)女の姿形をしているだけで痴漢や変質者に遭う。
これ、突き詰めて考えると(1)から(4)まで全部、「他人にどう扱われるか」の話ではないでしょうか?「自分がどうあるか」の話ではなくて。だから正確に言うと、ご投稿者の方は「オンナ扱いを受けることが嫌」なんじゃないのかなと思ったんです。本当は、「自分が女であることが嫌」なわけではない、って。
「女やめたい」
「男になりたい」
この二つが別のことであるように、
「女なんだからという扱いを受けること/女らしくあれと強いられることが嫌」
「女であることが嫌」
この二つも別のこととして整理した方が良いと、わたしは思います。
他人が言ってくることを、そのまま信じ込まされてしまわないために。
言い換えれば、外的な社会規範を、無意識に内面化してしまわないために。
中でも無意識に内面化してしまいがちなのが、これなんです。
「(1)かわいく生まれなかった」
これ冷静に考えると、誰か判断基準を決めてるやつがいるでしょ? どういう顔が「かわいい」顔なのか、決めているのは社会規範なわけじゃない。もっと正体つきつめるとさ、
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