コミュニケーションは、そもそも難しいのだ
この手の本の著者は、さぞかし人付き合いにそつがなく、円満な人間関係を築いて いるのだろうなと思われるかもしれないが、残念ながら、少なくともぼくはそうじゃ ありません。
人とのコミュニケーションが、あまり得意じゃない。
団体行動が苦手だ。
それほど親しくない人との会食は避けたい。
愛想笑いが下手。
ウソも下手(よくつくクセに)。
粗暴にして臆病。
イライラしやすい。
感情は顔に出る。
いい歳をして引きこもりたいと思うことがたまに(ほんとうは、しばしば)ある。
理由は、コミュニケーションは面倒くさいから。
それと、想像以上に厄介だから。
そんなことで、よくもまあ図々しくも広告の仕事をして、大学ではコミュニケーシ ョンを説いてきたな、と思う。
ただ、自分のコミュニケーションのスキルやその結果に痛し痒か ゆしがあったから、ず っとそのことを飽きずに考え続けられたのだ、とも思う。
汚れやほつれがあれば、イヤでもそこに目が行くものです。
今の世の中、人に伝えること、人から伝えられることは、しばしば恐怖ですよね。
言葉足らずは誤解され、ちょっとした言い間違いは拡散する。
「コミュニケーションって最高!」なんていう人がいたら、それは勘違いか眉ツバじ ゃないか。こんなにも面倒で厄介なことを好きだなんてどうかしている。
さまざまな企業や機関の行う調査には「コミュニケーションが苦手だ」の理由が並 んでいる。
「自分の気持ちを伝えるのが下手」
「上司とうまくコミュニケーションが取れない」
「自分から話しかけるのが苦手、話題が浮かばない」
「雑談力が弱い」
「典型的な会話 はできるが、さらに発展した会話をするのがダメ」などなど。
(「コミュニケーション苦手」という調査結果のなんと多いことよ)
そうなんですよね。そういうことなのだと思います。
コミュニケーションは人によって得手不得手があるのではなく、多くの人にとって も等しく面倒で厄介なものであるものらしい、ということ。
だったら本書の読者という受け手も、著者という送り手も、面倒くさい同士だから 齟齬もないはず。わかり合える。そこから始めましょう。
面倒くさいことが前提だから、論点を明確に。
やるべきことをシンプルに。
でもシンプルはイージーとは限らないですぜ。
いざ伝える時には、細心に、そして攻撃的なくらいに。
「伝える」と言っても、達成感はさまざま、人それぞれ。
本書ではこんな成功イメージを持っています。
◉ 気 の 利 い た こ と が 言 え る よ う に な る
例えば雑談力が強くなる。人が聞いてくれるので、話すことが苦にならなくなる。
◉提案力が高まる
言葉が伝わりやすくなり、アイディアに説得力が出てくる。仕事も日常も、もっと ラクに楽しく。
◉コミュニケーションを生業にするもよし
今その関係の仕事についている人にも、その希望を持っている人にも、ヒント以上 のものとなると思います。
しばらくお付き合いください。
ぼくは人とのコミュニケーションは相変わらず面倒なのですが、コミュニケーショ ンを考えることは好きなもので。 (勘違いか眉ツバ?)