マーケティングはしない
悪い意味での「思い込み」を生む、最も大きな原因のひとつが「マーケティングリサーチ」です。
ぼく自身は番組づくりをしてきて、マーケティングリサーチが必要だと感じたことはありません。
テレビ番組になにが求められているのかを調べるのは、難しいことです。リサーチすれば「こういう番組が求められている」というテーマはわかるでしょうが、そのまま作っても人気番組はできません。
たとえば『ブラタモリ』の企画段階で、市場調査をしたことはありません。
そんなことをしたら、企画の伸び代(のびしろ)を狭めてしまうかもしれませんし、この番組も生まれていなかったでしょう。
世の中で街歩きが流行っているらしいということは、番組が始まったあとで実感したほどです。
最初にイメージしたのは、「タモリさんが街を歩くと面白いのではないか」というシンプルな部分。
そして、「少し前に坂道の本を出しているタモリさんは、街歩きや古地図にも興味があるようだ」ということ。
そこで、「江戸の古地図を持って今の都会の街並を歩いたら何が見えるのか……?」
そんな流れで番組のイメージを構築していきました。
根底にあるのは、制作スタッフの中にある普段から積み上げられた情報と感覚です。
「こうしたらいいんじゃないだろか」と思いつつ、具体的な根拠ははっきりしない状態なのです。
番組が放送されて初めて、マーケティング的に外れていないか? ということが見えてくるのです。
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