山小屋で起きた奇妙な話

昨年までの10年間、山小屋で働いていた山ガールならぬ小屋ガールの吉玉サキさん。今回は、山小屋で起きたちょっと不思議なお話。ある日、お客さんが登山道で見かけたという「白いおじさん」。しかし、その場にいた誰もがそんな人は見ていないと答え、、、(この連載の書籍版はこちら


Twitterに匿名でメッセージを送れるサービスを設置しているのだけど、そこに「山小屋での不思議な話や怖い話があれば読みたいです」というメッセージが届いた。

このメッセージを見るまですっかり忘れていたのだけど、山小屋ではけっこう怪談を聞く。

言いたくはないけど、山は事故で亡くなる方が多い。そのせいか、「昼寝していたら金縛りにあってすすり泣きが聞こえた」とか、「あそこの部屋に入ると必ずカメラが壊れる」とか、そういった話には事欠かない。

私自身はというと、34年の人生の中で一度も幽霊を見たことがない。山でも霊的な恐怖体験はしたことがないので、体験談を書けないのが心苦しい。

けれど、身近で不思議な体験をした人がいるので、今日はその話をしようと思う。


白いおじさんの話

5、6年前の春のことだ。

夫とマイケルというあだ名の日本人スタッフ(なぜか毎年ひとりは外国人名のあだ名で呼ばれるスタッフがいた)が、雪道を切っていた。

「雪道を切る」とは、滑り台状になっている登山道の雪を、スコップで階段状に整える作業。春とはいえ、北アルプスはまだ雪が積もっている。雪道を切ることで、登山道を登りやすくするのだ。

夫とマイケルは、山小屋の少し下の登山道で作業をしていた。

作業を終えて山小屋に戻ってきたら、昨日から宿泊していた常連の土屋さん(仮名)が不思議そうに言った。

「さっきの白いおじさん、なんでせっかく来たのに戻っちゃったの?」

「白いおじさん?」

「ほら、さっき、吉田君(夫)たちが作業してるとき、登山道に白いウェアのおじさんが来たじゃない」

「え?」

夫はその「白いウェアのおじさん」を見ていない。というか、作業している間、登山者をひとりも見ていないのだ。

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吉玉サキ

第2回cakesクリエイターコンテスト受賞作! 新卒で入った会社を数ヶ月で辞めてニート状態になり、自分のことを「社会不適合者」と思っていた23歳の女性が向かった新天地は山小屋のアルバイト。それまで一度も本格的な登山をしたことのなかった...もっと読む

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コメント

etozudeyoshida 📷 https://t.co/Q5DdtK4p5J https://t.co/tZ3hAOfA1j 7ヶ月前 replyretweetfavorite

etozudeyoshida 📷 https://t.co/Q5DdtK4p5J https://t.co/QNHaAyvFw5 7ヶ月前 replyretweetfavorite

POTAKA3k190M 見える人に言わせると、見た目は生きている人と変わらず普通に居るらしい。 でも、何かが違うんだと。 9ヶ月前 replyretweetfavorite

etozudeyoshida イラスト、描きました。よろしくお願いいたします。 9ヶ月前 replyretweetfavorite