スポーツカーの横に突っ立ているアキの姿に呆然とするユウカ。
彼女とは数か月間会っていなかったが、別れた時と同じような髪型と雰囲気のまま、ユウカの目には映った。
アキは、表向きは竜平さんの奥さんということだが、ユウカにとっては、仕事の先輩であり、ボランティア村で知り合った唯一の親友でもあった。
アキは言った。 「あなたはどうして物事をなんでも複雑にしてしまうの?」
アキはユウカに対して遠慮なくものを言う。
「アキさんほど私は単純な人間じゃないんです、でも、なんでここにいるんですか!?」
「なんでって、あなたの息子に呼ばれたのよ」
「いつのまに……」
ユウカは鋭い視線を幕田に向ける。
「さっきメッセージを送ったんです」
幕田は悪びれもせずに答えた。ここにアキがいたほうがよいと幕田は考えたのかもしれない。
「じゃあ、ユウカはもっと単純なほうがよかったのかもね。 もっと単純なら、私が夜明け前にこんなところまで車をかっとばして来る必要もなかった。
ねえ、ユウカ。私たちが出会ったのって偶然だったと思う?」
「わからない。さっきの幕田の話を聞くと、そうじゃないような気もするし……で、実際はどうなんですか?」
「さぁ、どうかしらね。今となってはあまり覚えてないわね。あはは。
幕田君の存在がいなくても、ボランティア村に行ったような気もするし。 あなたを郵便局で見かける直前までは、あなたを探してもいなかったのよ。 ただ、声をかけたらあなたが百鳥ユウカって名乗るから、「あ、その名前知ってる」と心に思い浮かべたくらい」
こうしてアキはユウカとの出会いからすべてを語り始めた。
ユウカと出会ったのはあのボランティア村だったわね。
ユウカの第一印象は……そうね、モテない美人。
偶然、声をかけてみたけど面白いなって直感で思ったの。こんな子の人生に自分が関わるのも悪くないかもって。運命ってそんな風に始まるのかもしれない。
それからも知れば知るほどおかしな子でバカだったけど、真っ直ぐで正直で一緒にいて気持ちがよかったわ。
私、嘘だけは嫌なのよ。
ユウカがモテないっていうのはね、バカ正直すぎるからね。
バカだけど……まぁ、いいわ」
「もう、アキさん、バカバカ言わないでくださいよ!」
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