日本人記者に対するトランプの発言は人種差別? それとも記者の発音が悪かっただけ?
中間選挙の結果が出た11月7日、トランプ大統領が記者会見を行った。そこでの日本人記者の質問に対し、トランプが「何を言っているのかわからない(I really don’t understand you.)」と言ったことが日米で話題になっている。
ビデオもあるが、状況を簡単に説明しよう。
日本人記者が「How do you focus on economic…」と経済について質問しかけたところでトランプがそれを遮って「どこから来たの?」と訪ねた。記者が「日本」と答えると、質問の続きを聞こうともせずに「シンゾーによろしく言っておいて。自動車の関税ではさぞハッピーだろうね」と横道にそれた。その後記者がもう一度「日本との貿易と経済問題ではどう焦点を絞るつもりですか? 日本に対してもっと要求しますか?(How do you focus on trade and economic issues with Japan? Do you ask Japan to do more?)」と質問を繰り返すと、トランプは「 何を言っているのか理解できない(I really don’t understand you.)」と言った。
これに対して、数多くのアメリカ人がツイッターで「すごく無礼で、恥ずかしい」、「気配りがない」、「人種差別だ」と嘆いた。なかには、「『お前の言うことは誰も理解できないぞ』と返してやればよかったのに」と言う人もいた。
むしろ私はトランプを擁護する日本人が多いことに驚いた。「あの記者の発音がひどすぎる」、「理解できなかったら、そう言ってどこが悪い?」、「あれを差別と言うほうがおかしい」というものだ。記者の英語力や能力を批判する意見もかなりある。
興味深い現象は、英語圏で何十年も暮らしている在外日本人には記者や彼の英語力を責める人がいないということだ。少なくとも、ソーシャルメディアで私がつきあっている在外日本人の間では「トランプは失礼だった」、「トランプの態度は人種差別を反映している」ということで意見が一致している。
なぜ英語圏で暮らす日本人と、英語を日常的に使わない日本人とでこんなに意見が違うのか? それを考えてみた。
オバマ大統領やヒラリー・クリントンなら理解できただろう
まず、件の日本人記者の英語の発音だが、日本人の英語らしくFocusのfがhに聞こえるし、聞き取りにくいのは事実だ。実際にトランプは何を言っているのか理解できなかったのだろう。だが、これがバラク・オバマ大統領やヒラリー・クリントンなら、たぶん理解できていたと思うのだ。
この違いは「心構え」と「体験」にある。
ニューヨークで生まれ育ったトランプは、ニューヨーク界隈で使われている「アメリカ英語」だけが純粋な英語であり、全員がその基準に合わせるべきだと思っているふしがある。先日彼が更迭したアラバマ州出身のジェフ・セッションズ司法長官の、もったりした南部訛りを嘲笑っていたことからもそれが伺われる。こういう考え方の人は、相手が言っていることを聞き取れなかったときに「自分にわかる英語を話すべきだ」と考える。
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