エロい絵を見たい母と、ロボットの絵を見せたくない弟

強烈な個性をもつ「バアちゃん」を中心に、昆布山葵さんの家族の爆笑エピソードをお届けするこの連載。今回は、昆布山葵さんの弟のお話です。久しぶりに実家に帰ると、弟と母親がケンカをしていて……。

僕は男兄弟の長男で、下には3人の弟がいる。
今回はそんな弟たちのひとり、三男の話をしていきたいと思う。

三男は小さい頃から絵を描くのが好きな子だった。
ヒマさえあれば画材を握っていたためメキメキと上達し、小学生になる頃には当時高校生の僕の画力を軽く超えていた。

そんな三男が高校生になった頃のこと。
当時すでに結婚して家を出ていた僕だが、あるとき母に用があって実家に寄ることになった。

いつものように「ジャーン!みんなの大好きな長男様のご帰宅だよ!敬え!」と叫びながら意気揚々と帰宅すると、実家の中はシンと静まり返っていた。
誰もいないのか?と思ったが、玄関横の部屋を覗くと黙ってマンガを読んでいる次男と四男を発見。 話を聞いてみると、「今、母と三男がケンカしてるから巻き込まれたくなくて静かにしている」とのことだった。

良くも悪くもアーティスト気質である三男は、ときどき奇行を起こしては母と衝突していた。 奇行を止めたくて叱る母と、自分の意見を絶対に曲げない三男…そんな2人のケンカは、放っておくとかなりの長期戦になることもあった。

実家に寄ったついでだし、ケンカの仲裁でもしていくか。
そう思って母と三男のいる部屋に移動すると、そこには思いがけない光景が広がっていた。

部屋の中心でカメのようにうずくまって泣いている三男。
そんな三男を仁王立ちで見下ろしている母。

「あれ?何?ボディブローでも打ったん?」

それはさながらボクシングのワンシーンだったので、母が弟の腹部にダメージでも与えたのかと一瞬ビビった。 口喧嘩はともかく暴力はちょっと…実の息子にあとからジワジワ効いてくるタイプのブロー打っちゃダメだろ…と母に反則退場を求めると、「殴っとらんわ!」とキレられた。
さすがに肉弾戦にまで発展していたわけではないらしく、三男は自らの意思でうずくまっているとのことだった。

ことの経緯はこうだ。

三男はいつも通り、部屋に寝転がって絵を描いていた。 スケッチブックに鉛筆で何かを描いているところへ、洗濯物を取りに来た母が通りがかった。

三男は母の姿を見るや、慌ててスケッチブックを隠したらしい。 あまりにも露骨に絵を隠したので、母はこう思ったのだそうだ。

「ハアァン?エロい絵でも描いていたのだな?」と。

三男が描く絵のジャンルは、写実的な風景画から萌え系のキャラクターイラストまで幅広い。 普段から家族の前で堂々と萌えキャラを描いている三男が必死で隠すほどだから、もはや相当にエロい絵しか考えられない。

とはいえ、母も三男の絵の上手さは認めている。 たとえエロい絵であっても文句を言うつもりはないし、それはそれで才能なのだからいいと思ったのだそうだ。
そこで「フフフ…この子もそういうことに興味を持つお年頃か…」と考えて引いてくれれば話はシンプルだったのだが、母はこんなことを考えてしまった。

そこまでして隠す絵を一回見たい。と。

「大丈夫…エロい絵を描いたくらいで母さんは怒らない…」と微笑みかけたまではよかったが、母は「だから一回見せてごらんホラ」と続けたらしい。
絵を描く側の気持ちになって考えると、ありていに言って最悪の要求である。エロい絵を描いていたなら尚のことだろう。自作のエロ画像を母親に見せたい絵描きなど、どこの世界にいるものか。 きっと悪気があったわけではないはずなのだが、母はまともに絵を描いたことがない人なので、たぶんその辺の心情は理解できなかったのだと思う。

あまりにもファンタスティックな要求に、三男は震えあがった。 そして三男は「絶対に嫌だ!」と叫んでスケッチブックを体の下に隠してうずくまると、そのまま母が立ち去るのを待った。

しかし母は、エロい絵を描いたことではなく、描いた絵を見せてくれなかったことにカチンときたらしい。 「見せるまでここを一歩も動かない!」と言い出し、そのまま仁王のポーズで三男が折れるのを待った。

三男の頑固さもさることながら、母も大概である。
「見せろ!」「見せない!」の堂々巡りがいつまでも続き、そのまま2時間が経過した。 空気がどんどん暗くなっていき、ついには誰も言葉を発さなくなった実家へラテンアメリカンのごとく陽気に登場したのが僕だったというわけだ。


「2時間!?」

経緯を聞いて、まず僕が一番驚いたのがそこだった。

頑固者オブザイヤー決勝戦の舞台はこちらです。 たしかに昔から頑固ではあったが、この2人は誰かが止めないと永遠にケンカしているのか…と、さすがに衝撃を受けてしまった。

ただ、この件に関してはどう考えても母が悪い。
三男に非はほとんどないようなので、ケンカを収めるために母を説得することにした。

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僕とバアちゃんと家族の話

昆布山葵

noteで話題になった「僕のバアちゃんが物理的に除霊を行った話」の作者・昆布山葵さんによる書き下ろしエッセイ!強烈な個性をもつ「バアちゃん」を中心に、昆布山葵さんの家族の愉快なエピソードをお届けします。

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konbuwasabi cakesの連載ですが、ひとまず今週分で連載終了という形になりましたのでご報告です!ありがとうございました! …詳しくはちょっとまだ言えないんですが、来月か再来月あたりから別のところで連載が始まりますのでそちらもよろしくです! https://t.co/pZVKFvpKOr 2年弱前 replyretweetfavorite

h_Liwa_n #スマートニュース 2年弱前 replyretweetfavorite

konbuwasabi 今週もcakesの連載が更新されております~。 『』 2体の天邪鬼が壮絶な意地の張り合いを見せるお話です。今週いっぱい無料で読めますのでぜひ。 https://t.co/pZVKFvpKOr 2年弱前 replyretweetfavorite

r28 意地の張り合いって迷惑だよね... 2年弱前 replyretweetfavorite