つかず離れずの距離
「この骨、捨てるにはもったいなくないですか?何かできないですかね~?」
トビウオをさばくお手伝いをした時、機械で3枚におろされた骨の部分を、まじまじと眺め、つぶやく一竹さん。この人、もったいない精神の塊のような人なのだ。一竹さんが開発した島土産の一つに「バナナコンフィチュール※3」がある。傷ついて売り物にならないバナナを島の農家さんから買い取り、コンフィチュールなどというおしゃれなモノに生まれ変わらせたのである。
バナナ農家さんは収入が増え、一竹さんたちにとっても新たな仕事が生まれる。一石二鳥のステキな循環だ。バナナファイバーを捨てるはずのバナナの幹から作る発想も〝もったいない〟という気持ちがあったから。そもそも一竹さん一家が宝島に移住して来たのは、一竹さんのこんな閃きだった。
「手紙を出した時に、住所が〝宝島〟ってかっこいい!」
えっ!そこ?!話を聞いた時、少年のような純粋で、良い意味で単純な答えに思わず笑ってしまった。奥さんのサッちゃんも、「面白いから移住するコトを応援したんですよ~(笑)。私は出歩くタイプだけど、カズ(一竹)さんはあんまり出歩かないから、これはチャンスだと思って」と、あっけらかんとケラケラ笑う。都会から内地の田舎へ移住するだけでも結構ハードルが高いのに、ましてやココは絶海の孤島。なのにサッちゃんの受け入れの早さたるや!さすが元春日大社の巫女さん。心の余裕が半端ない。もしかしたら、移住というものは、これくらい気軽に考えてスッと動ける人の方が合ってるのかもしれない。
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