気持ちをかき乱されることが愛ならば、あの女性は皆から愛されていた

百鳥ユウカと3人の男たち。彼らは全員で記憶のパズルを組み合わせようとしていた。

「竜平さんは、昔、UFOをみたことがあると言っていました。
そこにいると信じる男がいて、UFOを見たと言うなら、何を疑うことがあるだろう? と言っていました。きっと竜平さんは、未来から僕が来たというのも半信半疑だったと思います。ただ僕がそう言うから信じるという感じでした。 たぶん、老後の暇つぶしみたいなものだったような気がします」

「ちょっと待って。え、なんかおかしくない?」

突然、ユウカが声を張り上げる。小首をかしげながら続けた。

「だって、九州にいたころって、私とアキさんと初めて出会ったころよ。そんな偶然て存在する?」

ユウカは頭にわき始めた疑問のパズルを一つずつ、つなぎ合わせようとした。

「私はアキさんに出会わなければ、大阪に来ることもなかったし、おそらく、池崎にも高畑さんにも出会うことはなかったと思うの」

「そうだね……」高畑がユウカに同調した。運命のいたずらというには、恣意的すぎるものを感じながら。

幕田は、視線が定まらないユウカに向かって告げた。

「母さんが、アキさんと出会ったのが偶然ではなかったということです」

ユウカは幕田におそるおそる聞いた。

「じゃあさ、そのあと、店で働いたのも、小豆島に行ったりしたのも、実は仕組まれてたの?」

「それは流石にしてないと思いますよ。普通に男女が交われば、ドラマのようなことが起こるものです」

幕田は一呼吸をおいて、ゆっくりと話した。

「未来は一方向だけに進んでいるわけではないようです。僕が竜平さんと出会わなければ、生まれなかった過去の出会いはすでに生まれています。 実はアキさんは、僕が六甲の自宅でお世話になってた時に、僕の事情を知って興味を持ったみたいです。 それで、フラっと1か月くらいいなくなったな、と思ったら、なんと僕の母を家に呼びだしたので、本当にびっくりしました。 僕は、その頃はまだ母の足跡を追って、周りの人の話を聞いていただけだったので、彼女の実行力には舌を巻きました。 実の母と一緒に暮らすわけにはいかないと、僕は六甲の自宅を後にして、尼崎にアパートを借りました」

「アキさんが私に声をかけたのって、あなたの存在を知っていたからなの?」

ユウカの質問に、幕田も素直に答える。徐々に言葉に親しみがこもってくる。

「たぶん、そうですよ。ちょっと頭が普通の人と違ってるというか……イカれてるというか……」

高畑もアキのことはよく知っているから、「さもありなん」という顔をしている。

「それで、どんどん彼女の運命が変わっていったということなのかな」

高畑はユウカを見ながら、そう言った。

幕田は過去のことを思い出しながら答えた。

「えぇ、神戸にいる間は、そうでした。……でも横浜に移ってからは、雲行きが怪しくなってきたのは事実です。せっかく結ばれたと思っていたのに……」

「えー、それは池崎が悪いよ。さっさと結婚しないもんだから」

この期に及んで、池崎をなじる物言いをするユウカに池崎は7つも年下なのに、落ち着いて返した。

「そうやって、すぐ他人のせいにする……」

幕田は2人のやりとりをみやりながら、もう一度、竜平の言葉を繰り返した。

「これが、竜平さんの言っていた時間の修正力なのかもしれない、と僕は感じました」

「結局のところ、未来は変わらないということ?」

ユウカの質問を受け止めて、幕田は間髪を入れずに答えた。

「そう、だから、僕がふたたびユウカさんの前に現れたんです」

4人が集まった喫茶店は、最後の幕田の一言で静寂に包まれた。

みな、過去の時間がどのように流れていたのか、途方もない思考を繰り返しながら、答えの見つからない疑問のパズルを組み合わせようとしている。未来に起こるかもしれない出来事を記録した写真が、ここでは唯一の手掛かりだ。

ただ高畑だけが考えることをやめ、こともなげにこう言い放った。

「まぁ、お話はここまでにしよう。これ以上議論をしててもらちが明かない。おそらく、その写真の場所に行ってみればわかることがあると思うよ」

「高畑さん……誰よりも冷静ですね」 池崎は高畑の冷静なのか無責任なのかわからない態度に面喰った。

「そりゃ、そうさ。僕はこの中で唯一の部外者だからね。このドラマの行きつく先が気になるだけだよ」

「なんで、部外者なんて言うのよ!」 ユウカが口をとがらせる。

「え、だって、ユウカさんは池崎くんのことを忘れられないんだろう。僕をこの先選ぶことなんてありえるのかい?」

「はぁ? 何言ってるのよ。未来のことなんてわからないじゃん!

この瞬間、一番矛盾したことを、平然と言ってのける百鳥ユウカはやっぱり魅力的な女性なのかもしれない。全員が戸惑った表情を見せて、ユウカの真意を探ろうとした。しかし、ユウカはそんな男たちの気持ちには無頓着だった。
愛が、相手の気持ちを推し量ることというならば、ここにいる男性全員が百鳥ユウカのことを愛しているのだろう。

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結婚できない2.0〜百鳥ユウカの婚活日記〜

菅沙絵

友人たちが彼女につけたあだ名は「レジェンド・ユウカ」。結婚市場に残された最後の掘り出し物という意味だと説明されたが、たぶん揶揄する意味もある。妥協を知らない彼女が最後にどんな男と結婚をするのか、既婚の友人たちは全員興味深げにユウカさん...もっと読む

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