今まで、この連載でさんざん「山小屋では恋が生まれやすい」と書いてきた。8話に書いたとおり、私も夫と山小屋で出会っているし、仲間の恋が実るたびに嬉しくなる。
そのうえで言うけれど、私は「異性のスタッフを恋愛対象としてジャッジする行為」が嫌いだ。
職場恋愛に肯定的であることと、異性スタッフを恋愛対象としてジャッジしたくないことは、私の中ではなんら矛盾しない。
私にとって、夫も含めてすべてのスタッフは仲間だ。仲間のことは、一人ひとりを尊重したい。
そこに、性別は関係ないと思っている。
ガールズトークもいいけど、礼儀をわきまえよ!
女子スタッフとふたりで掃除をしたり洗い物をしたりしていると、ついついお喋りに花が咲く。
私はそういう時間がめちゃくちゃ好きなのだけど、どうしても苦手なトークテーマがある。
それは「今年の男子スタッフの中で誰がいい?」というやつ。
これ、言う人がけっこういる。
いや、恋愛の話題が悪いとは思わない。純粋に誰かを好きという話なら、聞いていて楽しい。
だけど、「男子スタッフの中で誰がいい?」という話題は、数人のスタッフを比較するニュアンスを含む。そんな意図はなくても、自然と話が「人気ランキング」みたいな方向に行ってしまうのが嫌なのだ。
だから「そういう話やめない?」と思うけど、いかんせん気弱なのでなかなか言えない。ヘラヘラ笑って「うちのオット君以上の人なんて世界中どこ探してもいないからな~」などと逃げる。
夫には悪いが、本気でそんなことを思っているわけではない。その話題を強制終了させるため、話をのろけに持っていくだけだ。
なのに、「じゃあオットさん以外では?」「私は○○君だな~」などとその話題を継続されることがあり、困ってしまう。
あと、「○○君ってどう思う?」という質問も苦手。
そういうときに「背が高いと思う」などと答えると、必ず「そういうことじゃなくて!」とつっこまれる。
いや、わかっている。「恋愛対象としてアリかナシか?」とか、そういうことを聞かれているというのは。
わかってはいるけど、私はそういう話をしたくない。だから毎回、わざとスカした返答に逃げる。ささやかな抵抗だ。
だけど、私の抵抗はだいたい気づかれない。「私だったら付き合えないな~」「優しそうだけど、付き合ったら意外と束縛とかしそう」など、私のいちばん苦手な方向に話が向かったりする。
そういうときはもう、消え入りたいほど居心地が悪い。
イラっとして「どうも思わない。自分の男じゃねーし」と吐き捨ててしまったこともある。我ながら口が悪い。
だけど、仲間のことを異性としてジャッジするようなことはしたくないし、誰かがジャッジされているのを耳にするのも嫌。もちろん、自分が男子スタッフからジャッジされるのもまっぴらだ。
そう言うと「じゃあ職場恋愛はどうなんだ」と思われるかもしれないけど、恋とジャッジはまったくの別物だ。恋には相手への「尊重」があるけど、ジャッジにはそれがない。
本当に仲間として尊重していたら、陰でアリだのナシだの言えないと思うのだ。
他人を尊重することは最低限の礼儀だ。そこは重んじていこうぜ、と言いたい。
友人の性別を限定したくない
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