料理をできない人はいない! できないと思いこんでる人がたくさんいる。

遅い帰宅時間、手狭なキッチン、一人では余らせてしまう食材など、忙しい勤め人を料理から遠ざける理由はたくさんあります。それでも、ちょっとした工夫で料理を始められれば、毎日の生活がもっと楽しくなるはず。 新刊『スープ・レッスン』を上梓した有賀薫さんが、一人暮らしの女性の家を訪問し、お料理教室を開きました! 生徒はこちらも新刊『本屋の新井』を出された三省堂書店のカリスマ書店員、新井見枝香さんです。

有賀薫(以下、有賀) おじゃましま~す。

新井見枝香(以下、新井) どーぞどーぞ!

有賀 さすが書店員、本がいっぱいですね(笑)。

新井 もう諦めてます。


逆サイドの足元にもズラリ。これでも厳選して残してるとか……

有賀 今日、新井さんに教えるのは、以前に『スープ・レッスン』でも紹介した「4種のきのこ汁」です。

材料(2人分)
きのこ 4種類とりあわせて400gほど
サラダオイル 大さじ2
めんつゆ(3倍濃縮) 70mL
薄切り豚肉 50g
しょうが 1片
片栗粉 小さじ1
水 300mL

有賀 まず最初に、料理をする時は、しっかりと手を洗うことから初めてください。

新井 かしこまりました!(ゴシゴシ)

有賀 料理に不慣れな人が、一番忘れがちなことは、「手を洗うこと」と「味見をすること」。その部分はレシピに書かれていないから、やらない人が多いんですが、どちらもすごく大事なことなので、必ずすること!

新井 はい、洗いました!


一人暮らしのキッチンは、スペースの有効活用が鍵。

有賀 それでは始めましょうか。まずは下ごしらえです。

1.下ごしらえ
きのこは乾いたキッチンペーパーで汚れを軽くふきとって石づきを切り落とし、食べやすい大きさに手で割く。しいたけは1㎝ほどの厚さに切る。 めんつゆ70mLを同量の水で薄めておく。 (『スープ・レッスン』より)

有賀 お料理道具って、どういうものを使われていますか?

新井 まな板を最近新しくしたんです。でもまな板が大きすぎて、スペースをとってしまうのが悩みで……。

有賀 まな板は、できるだけ大きい方がいいですよ。一人暮らしのキッチンは狭いので、本当は、シンクにまたがるくらいの大きさのまな板だと、シンクのスペースが作業台としても使えるのでもっといい。
 それと、切った材料はすぐザルやボウルに入れてしまい、まな板の上の作業スペースをなるべく確保するのがポイントです。

新井 包丁は、今まで100円均一のものを使ってたのが、全然切れなくて ……。

有賀 うわっ、本当に切れない(笑)!

新井 でもこのあいだ、ちゃんとした包丁を友人がプレゼントしてくれました。こっちです!

有賀 そっちにしよう! 包丁の切れ味によっても料理のしやすさはすごく変わりますよ。切れないと、怪我をしてしまうので、よくない。

新井 確かに、全然違います。

有賀 まずはえのき。切ったら食べやすいくらいにほぐしてください。自分で「これくらいになっていると食べやすいな」と思う大きさが目安。

新井 これくらいかな。

有賀 そうそう。適当でOK。次はしめじに取り掛かりましょう。まず、手で半分に分けてください。

新井 しめじって、石突きの部分をどのくらい切ればいいのかわからなくて迷うんですよね。

有賀 根元のモロモロっとした部分だけを取ればいいんです。ザクっと切ってもいいです。

新井 切りました!

有賀 次は、エリンギ。切った方が楽だったらスライスしてもいいし、手で割いてもいいですよ。しいたけは泥がついているところを切ります。あとは全部食べれます。


包丁の使い方一つで料理は楽しくなる!

有賀 包丁で切るときは、こういう風に右足を半歩後ろに引いて「半身」になって、左足に重心をかけると切りやすいですよ。

新井 ほんとだ! すごく切りやすくなった!

有賀 包丁って「押す」時と「引く」時に切れる。正面に立つと、まっすぐ後ろに引いた時に腕が体にぶつかっちゃうでしょ。腕がスムーズに動くことが重要なので、腕が後ろに引けるように食材に対して斜めに立つ。手首で動かすのではなくて、肘から下全体で動かすことが大事です。

新井 わ。こういうの教わったことないもんな。全然こっちの方が切りやすいです。切るの楽しくなってきた! 今めっちゃいっぱい切りたい気持ちです(笑)。

有賀 ちょっとしたことで料理って楽しくなりますよね。

新井 はい、全部切れました! きのこ祭りですね。

有賀 では、きのこを煮ていきましょ~。

2.きのこを煮る(当座煮をつくる)
フライパンにサラダオイルを入れ、強火にかけて熱する。きのこを広げるように入れ、動かさないようにして焼く。
焦げ目がついたら返してさらに焼き、いい香りが立ってきたら、水で薄めためんつゆを加えて水分がほとんどなくなるまで煮つめる(これが当座煮です)。

有賀 きのこはまず煮る前に炒めます。サラダ油を大さじ2杯くらい入れます。目分量でよくて、最初は少なめにしておいて、後で足してもOK。

有賀 きのこは水が出るから、火にかけたまま置いておいても焦げないし、時々のぞいてみるくらいで大丈夫。

新井 もう塩胡椒だけで食べてもおいしそう。

有賀 そう。もうすでに、常備菜として十分おいしいですよ。冷蔵しても冷凍しても大丈夫。

新井 おお。あると便利そう~。

有賀 じゃ、そろそろ全体がしんなりしたので、めんつゆを入れてください。

有賀 これで水分が飛ぶまで煮たら、「当座煮」の完成です。そのまま酒の肴になりますし、ごはんやサラダに乗せてもよし、うどんやパスタに入れてもよし、という万能お惣菜です。
 これに今度は水とお肉を加えて煮ていきます。


料理は触った感触や切った時の「ざくざく感」を楽しめるといい

3.水と肉を加えて煮る
鍋に当座煮の1/2量と、水300mL、2cmに切った豚肉、しょうがを入れて、火にかける。沸騰したら肉のアクをお玉でとり除き、火が通ったら味をみて、めんつゆで調節する。片栗粉小さじ1を同量の水で溶いたもので、とろみをつけて仕上げる。

有賀 では、お肉を切っていきましょう。

新井 お肉、切りました!

有賀 そうしたら、さっきのきのこを半分くらい、鍋に入れます。

新井 はい!

有賀 そこに水300mlと生姜を入れましょう。沸騰したら肉を入れてください。これで煮込んだらスープが完成です。

新井 肉はバラバラにして入れたほうがいいですか?

有賀 はい、バラバラにしてください。新井さん、お肉を触るのは好きですか?

新井 好きです!

有賀 実は肉も魚も手で触れて確かめるのは大事です。あまりベタベタ触るのはダメですが、料理ってフィジカルなものなので、触った感触や、切った時の「ざくざく感」を楽しめると食材の具合が自然とわかっていいんです。

新井 食材は何でもすごく触ります。嬉しくなるんです。

有賀 それすごく大事です。例えば、悪くなった肉は触った感触も匂いも違ってきますし、そういう変化を感じ取れることって大事。素材の段階で、鮮度やおいしさを感じられる人は、料理上手ですね。

新井 やった。


料理はできるようになる必要ない

有賀 一人暮らしの人って料理の腕が本当にばらつきがあるけど、新井さんはやっぱり結構料理できますね。

新井 ほんとですか。始めたのは一人暮らししてからだから、つい最近なんですが。

有賀 あのね、なんかTwitterにアップされている新井さんの料理って、料理できないと思ってない人の料理なんですよ。ちょっと変な言い方しますけど、わかりますかね(笑)。

新井 料理できないと思ってない人の料理?

有賀 多くの人って、「自分が料理できない人」だと思って作ってるんですよね。だからこれが正解かどうかわからない……みたいに、やたらと正解を探すんです。でも新井さんの料理には、それがなくて、自分の食べたい味に割とまっすぐ向かっている感じがある。

新井 そうかも(笑)。自分がいいと思ったら、一直線。

有賀 料理って、みんな「できるようになりたい」とか言うんだけど、できるようになる必要って全然ない。

新井 できるようになる必要がない。

有賀 なんか「究極の料理」みたいな高みがあって、ここに向かってみんな一歩一歩階段登って、ゴールがあるって思ってる人って多すぎるんですけど、生でも、さっと茹でるだけでも、塩ふれば超おいしいものっていっぱいあるじゃないですか。

新井 あります。トマトとか。ほうれん草とか。

有賀 そうそう。そういう風においしいものっていっぱいあって、そこを拾っていけばいいのに、みんな「高み」を見すぎてて、ハードルが高いとか、手が出ないとか言って、いつまでたっても自分の周りにあるおいしいものに気づかないということが起こってるんです。でも食なんて、包丁のない原始人の時くらいからの文化なので、自分が食べたいもの、食べたときに、おいしいかおいしくないか、がわかればいいだけなんですよ。

新井 うんうん。わたしは食べたいものは自分でわかる。

有賀 だから、多分料理ができない人ってほとんどいないはず。さっきも言ったように、「できないと思わないようにする」というのが料理のコツです。
 新井さんは自分の舌を信じてるし、食べるのも食材も好きだから、完璧です。

新井 えへへ。


盛りつけ方と料理写真の撮り方

新井 できました!

有賀 じゃあ、盛り付けしましょう。

新井 盛り付けって難しいですよね。

有賀 盛り付けは、使っている素材が見えることが大事です。だから生姜もちょっと見せて。

有賀 料理ができる人でも、おいしそうに盛り付けられない人もいるんです。料理の写真を撮るのが下手な人もいるし。

新井 別の才能。

有賀 撮る時のコツは、「ここ食べたいよね」っていう気持ちで撮ること。「ここに見えている、このしいたけを食べたい!」って思って撮ると全然違う。そうすると、ちょっといい料理写真になりますよ。

新井 それならできるかも(笑)。

有賀・新井 いただきまーす。

新井 おいしい! 生姜が効いてますね。入ってないと味がぼやけそう。

有賀 きのこだけでもかなりおいしいのに、肉も入ってますから、おいしくないわけがないんです。
 このスープは小分けにして冷凍して、そのあとさらにプラスのアレンジもできます。ショートパスタや春雨を入れたり、ご飯をいれておじやにしたり。

新井 へー!

新井 すごくおいしかったです!

有賀 よかったです!

(次回に続く)


執筆:齋藤あきこ 編集:中島洋一、井澤健輔 撮影:井澤健輔


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スープ・レッスン

本は日用品。だから毎日売ってます—。
型破り書店員・新井見枝香による“本屋にまつわる”エッセイ集!


本屋の新井

この連載について

スープ・レッスン特別編】ひとり暮らしの女性のための料理—有賀薫×新井見枝香

新井見枝香 /有賀薫

遅い帰宅時間、手狭なキッチン、一人では余らせてしまう食材など、忙しい勤め人を料理から遠ざける理由はたくさんあります。それでも、ちょっとした工夫で料理を始められれば、毎日の生活がもっと楽に楽しくなるはず。 新刊『スープ・レッスン』を上梓...もっと読む

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コメント

nirg_op すごくいい。料理はできるようにならなくていい、とか、原始人のように、とか、名言もりだくさん。 【 スープ・レッスン特別編】ひとり暮らしの女性のための料理——有賀薫×新井見枝香 https://t.co/9ZMLNOAbBp 5ヶ月前 replyretweetfavorite

windblows https://t.co/1vgSUUpkls 5ヶ月前 replyretweetfavorite

honya_arai 「料理ってフィジカルなもの」の話は、この記事にあります→ 5ヶ月前 replyretweetfavorite