母親が弱ってはじめて、私たちはお母さんを愛せるのかもしれない

『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』で、度が過ぎる母親からの過干渉に悩んできた自分が娘を生んでしまった激動の日々を描いた田房永子さん。『ありがとうって言えたなら』で、こちらも強烈すぎるお母さんとの、感動とはほど遠い「看取り」の日々を描いた瀧波ユカリさん。母からのサバイバーであるおふたりの悟りとは!?

母問題から脱出するには、恨みきるしか方法はない!

田房永子(以下、田房) 瀧波さんの『ありがとうって言えたなら』、すごくおもしろかったです。自分の母親の過干渉がつらすぎた時期は、「お母さん」をテーマにした漫画なんて到底読めなかったので、この作品を自分が楽しめたこと自体に感動しました。素直に読めて、自然に泣いてました。

瀧波ユカリ(以下、瀧波) ありがとうございます、嬉しいです。

田房 親の問題から脱出するために必要な段階として、「恨みきる」ってのがあると思うんですよ。

瀧波 はい。

田房 恨みきると恨んでることにだんだん飽きてきて、「あれ、うちの母親って結局どういう人だったかな~」みたいな心境になってくる。一番きつかったのが12年前ですから、たいがいもう飽きてたんですね、私。

 だから瀧波さんの漫画を読んで、こんなこと言っちゃいけないかもだけど、私も母を介護してみたいって思いました。母が弱って元気がなくなったとき、はじめてまともに接することができるんじゃないかって。ただ、今もギンギンに元気なんすよ、うちの母(笑)。

瀧波 お母さん、おいくつでしたっけ?

田房 70ちょい前、アラセブンです。私、お母さん自体が嫌いなわけじゃないって自分でもうわかってるんです。でも、娘に対して虚勢張ってくるようなところは今でも本当にきついから、お母さんがただの肉塊になってくれたら、ただ抱きしめたり撫でたり……すっごい愛せそうな気がする。

瀧波 弱ったからといって、人がただの肉塊になるかどうか、っていう問題はありますよね(笑)。

田房 そうですよね、ならないですよね。

今どきのお母さんは、娘にありがとうなんて言って死なない!?

瀧波 私も、母が病気になったら少しはしおらしくなるかも? とか、今まで通わなかった心が通いあうかも! とか思ってたんです。でも実際は、そんな気配すらないどころか、むしろ意固地になって、自分の路線をどんどん突き詰めてキャラ強めていくみたいな感じで。

 母の最後が近づいてきたときに、私が色々と手助けするようになって、確かに「今までこんな触り方はできなかったな」みたいな変化はあったけど、基本的な交流の部分はぜんぜん変わらなかったです。「私の娘として生まれてきてくれてありがとう」みたいな今どきの囁きをしてくれるわけでもなく。そこらへんぜったい期待しちゃダメだと思います。60、70代の人たちはそんな今どきの言葉使わないし(笑)。

田房 私、これまで親の介護や看取りについて、とても考えられるような状態じゃなかったんですよ。海外旅行に行った先で、飛行機ごとバミューダトライアングルみたいなところに消えてくれたりしたら、ちょっと自分の気もラクになるのだろうか……、って本気で思ってましたから。

瀧波 飛行機どこに行ったかわからないし、何も見つからない、みたいなきれいな形でね(笑)。

田房 そう(笑)。でも『ありがとうって言えたなら』を読んで、親との最後がはじめてリアルに想像できたんですね。それに、自分がガチで向き合ったときは、やっぱり漫画に描くんだろうなって。楽しみとまでは言えないけど……

瀧波 いやいや、描くのは楽しかったですよ(笑)。新しい発見がいっぱいあったから、こういうことがあったんだよってみんなに言いたいじゃないですか。

『母がしんどい』を母に送ってはいけない

瀧波 私も田房さんの本に影響されてるんです。まだ母が元気だったときに『母がしんどい』を読んで、やっべ、うちの親に似てる!となって、姉に「すごい本送るから」って連絡してすかさず送ったんですよ。そしたら当時、姉と同居していた母が「ユカリからなんか届いてるけどなに? この中になに入ってるの?」って問い詰めたらしくって。絶対開けるわけにいかないじゃないですか、「母がしんどい」って書いてあるから(笑)。

田房 ごまかしようがないですもんね(笑)。

瀧波 姉はかなりがんばってごまかしたんだけど、毒親の本が送られてきたことを動物的な本能で察知する、母のカンの強さが恐ろしくって。

田房 『母がしんどい』を自分のお母さんに送る人、結構いるんですよ。お前はこれだ!って。でも、お母さん側の反応はだいたいが、「えーすごいわね、この家~」とかで、自分のことだとはまったく思わないようです。

瀧波 強いですねー。全然響かないけど、なんかいやだってことは動物的な本能でわかるんでしょうね。

田房 それで娘の方がまたイラついちゃいから、お母さんに送りつけるのはあんまりおすすめしないです(笑)。

瀧波 旦那さんとかに読んでもうらうのがよさそう。

田房 そうですね、母本人じゃなくて、自分を理解してほしい人に読んでもらうってことで。

次回「親子関係なんて、スピでもないとやってられない」は11/14(水)公開予定。お楽しみに!

この連載について

母娘というやばい関係をサバイブするために

瀧波ユカリ /田房永子

『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』で、度が過ぎる母親からの過干渉に悩んできた自分が娘を生んでしまった激動の日々を描いた田房永子さん。『ありがとうって言えたなら』で、こちらも強烈すぎるお母さんとの、感動とはほど遠い「看取り」の...もっと読む

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コメント

bluefk |母娘というやばい関係をサバイブするために|瀧波ユカリ/田房永子|cakes(ケイクス) うまく弱ってくれりゃいいがな(-"-) https://t.co/opMY6nIkeU 約20時間前 replyretweetfavorite

iwani_sekarulu 送っちゃいけない、すごくよくわかりますねw 約20時間前 replyretweetfavorite

Kawade_shobo 「田房 『母がしんどい』を自分のお母さんに送る人、結構いるんですよ。お前はこれだ!って。でも、お母さん側の反応はだいたいが、「えーすごいわね、この家~」とかで、自分のことだとはまったく思わないようです。」 https://t.co/R37b16PTRu 約20時間前 replyretweetfavorite

kimaya4125 確かに無駄だろうと思う!→“『母がしんどい』を母に送ってはいけない” 約22時間前 replyretweetfavorite