◆18◆
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!
「四七ソが増員したぞ!」「警戒しろ!」「西手、制圧射撃!」「一般社員の保護急げーッ!」「何が保護だ! そちらの不手際を押し付けるつもりか!」
おれ達を出迎えたのは、オフィス北側陣地、第二人事部側からの射撃と怒声だった。
「なんだこりゃ、うわっ」
おれは夕立に降られたサラリマンみたいに、防弾ブリーフケースで頭部を守りながら駆け、デスクの影に滑り込んだ。そこにはアスカンと井上がいて、すぐに奥野さんもおれに続いた。
「井上、アスカン、大丈夫か!?」
「あ、香田サン、来てくれてよかッタです。不安でした」
アスカン君は青ざめている。
「奥野さん、援護入ります!」
BLAMBLAMBLAM!
井上がデスクの陰から身をさらし、北側に射撃を行い、奥野さんへの攻撃を軽減した。
「あっぶな」
銃弾がかすめ、井上は慌ててデスクの影へ。おれと肩を寄せ合う。タコツボってやつだ。
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!
おれたちの味方、第一人事部側の事務方部隊も応戦のための射撃を開始した。断続的に銃弾が飛び交い、オフィス観葉植物を破壊し、防弾パーティションに跳ね返って甲高い音を立てる。ミニマル製菓のヘッドオフィスは、さながら塹壕戦の様相を呈していた。第一人事部と第二人事部の不仲、ここに極まれりだ。
「鉄輪からおおよそ聞いてるが、状況説明してくれ、井上」
「多分、ここにいる誰も完全には把握してないと思うんスけどね」
井上は息を切らし、マガジンを交換しながら要約を開始した。
戦場はミニマル製菓ヘッドオフィス。南北に長い、長方形のオフィスだ。オフィス机が約二百台。防弾パーティションで即席のバリケードが展開され、ほぼど真ん中で二分されている。中央の緩衝地帯には、頭を撃ち抜かれた事務方やミニマル社員の死体が五つと、真っ赤なヨガボールが転がっている。
第二人事部と五六シスが北側、第一人事部と四七ソが南側に陣取り、それぞれの出入口をおさえている。事務方の増援が徐々に到着中。もうすぐ合計四十人を超える。
まずいヒートアップの仕方だ。
フロアの東はガラス張り。西に廊下とエレベーターホールがあり、セキュリティドアは北側と南側にひとつずつ。このドアはそれぞれ、五六シスと四七ソがおさえている。
廊下側でも小規模なバリケードが作られているので、お互い、自分たちの確保しているドア側から増援を送り込み続けている恰好だ。自衛手段を持たないミニマル製菓の一般社員は、南北の陣地に二分され、それぞれの人事部に保護されている。
「保護だって?」
おれは舌打ちした。
「向こうが強引にミニマル製菓の調整を仕掛けたんじゃないのか?」