​振付師は教育者たれ。教え子・アイドルネッサンスに伝えたかったこと インタビュー後編

振付師の竹中夏海さんが、平成時代から最前線で活躍している振付師のみなさんに、アイドルダンスについて伺う連載。東京女子流、アイドルネッサンスなどの振付で知られる臼井比呂子先生との対談は後編です。今年、惜しまれつつ解散してしまったアイドルネッサンスにオーディションから関わってきた臼井比呂子先生は、彼女たちに伝え続けてきたことがあります。そこには、振付師としてのある思いがありました。
「平成が終わる前にアイドルダンスを振り返るプロジェクト」もあわせてお読みください。

振付ってどうやって作るの? 比呂子先生の場合

竹中夏海(以下、竹中) 比呂子先生の振付を作るプロセスって何か決まったものはありますか? 私の場合はまず、軽く即興で踊ってみるんですけど。

臼井比呂子(以下、臼井) へぇー、即興で!

竹中 いやもう、人様にお見せする作品のようなものでは全然ないんですけど。まず考えずに適当に踊ってみると、「この音ではどうしてもこう動きたいな」っていうのが出てきたりするんです。それをすくい上げてから、音や歌詞を拾っていくようにしてます。比呂子先生の場合はどうですか?

臼井 私はもうほぼ頭の中で作りますね。「こうやって動きたいなー」とか「この歌詞は表現しづらいなどうしよう」とか。一回聴いて大体分からないですか?「今回はすぐできそう」も「これは時間掛かるぞー」って時も。

竹中 わかります。そして不思議なことに、自分が難産だった振付ってメンバーも振り入れ時になかなか覚えられないし、お客さんにもあんまり馴染まないんですよね。

臼井 きゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんの楽曲なんかは付けやすいよね。

竹中 そうですね、語感だけでやりたいことが溢れてくる感じありますよね。実際、素敵な振付ばかりですし。 私が振り作りでまず即興で踊ってみるのって、高校生の時に美術の先生の「絵の具なんてチューブから出した色がいちばん綺麗」ってひと言が大きく影響していて。どんなに色を混ぜてこねくり回したって、チューブから出た混じり気のない色には結局敵わないんだって言ってたんですよ。だから振付も難しく考えれば考えるほどキャッチーからは離れていってしまう気がするんですよね。比呂子先生の場合は、まず曲を聴いて頭で想定して、どのタイミングで身体を動かし始めるんですか?

臼井 車の中で聴きながら考えたりするんですけど、それを夜遅くに何度か踊ってみて「あ、大丈夫そうだな」って思えば寝ちゃう。「ここ想定してたものより早くてだめだ、音取れないな」って思ったら明日やろうと思って、寝ます。

竹中 どっちにしろ一旦寝ちゃうんですね(笑)。フォーメーションもメモらずですか?

臼井 フォーメーションはさすがに書きますね。あとは、テーマを設けるとけっこう作りやすくて。

竹中 あぁ、モチーフがあると作りやすいですよね。たとえば“国”とか“食べもの”とか。逆に“絆”や“未来”などざっくりと広いテーマって難しい。

臼井 女子流の場合、「鼓動の秘密」は「オルゴールって設定にしよ」と決めたらそこからばーっと広がりましたね。彼女たちはほんとはお人形なんだけどこの曲になったら魂が吹き込まれて歌い出す、という風に見せたら切ない感じや、片思いの子に気持ちが伝わらないもどかしさをアイドル的な表現でできるんじゃないかなと思って。パカっと開けると回るオルゴールのイメージを、イントロとアウトロには特に入れてます。

竹中 まさにそういうイメージでこの曲は見てました! 振りを作る時はアシスタントさんを呼んだりせず、比呂子先生おひとりなんですか?

臼井 そうですねぇ。

竹中 そうすると振りを入れる際にやらせてみて、頭の中で想像していたのと結構ちがう!ってことはないですか?

臼井 いっぱいあります。あれれ?って。

竹中 私もです(笑)。先生とメンバーじゃもちろん、技量の差もありますしね。

臼井 そう。昔はカチッと作っていったこともあったんだけど、いざやらせてみると結局イメージと違うから作り直したことが何回かあったんですよね。でももうそこまで出来てたら出てこないんですよ、ほかのパターンの振付が。

竹中 そっか、自分の中で完結しちゃってるから。

臼井 そう。そこからは「まぁ結局は変わるんだから」っていう言い訳も残して寝るパターンが多いです(笑)。

竹中 私はどちらかというと逆で、最初の頃はそれこそ頭の中で作ってたんです。でも振りを作る時間って決めないと、どんどん後回しにしてしまうんですよねぇ……。

臼井 分かりますよ(笑)。

竹中 ね。それならスタジオを取ってアシスタントの子にも来てもらったら自分を追い込めるので、ここ数年はそうしてます。

臼井 私も前はスタジオを取れば振りが出てくるかなと思ってやってみたら、一切出てこなくて。

竹中 (笑)。

臼井 それで出ない時は場所を変えても、どんなにあがいてもだめなんだなと思ってやめました。

竹中 なるほど。ほんと人によって違いますね。例えば作りづらいなと思ってる楽曲って、振り入れの段階になれば出てくるんですか?

臼井 ひとりで悶々と考えてる時よりかは出てくる。その前後の流れで、数珠つなぎに色々できたりして。

竹中 それってやっぱりメンバーを前にしているからなんですかね?

臼井 ですかねー。メンバーを見て「あぁこういう感じに踊るんだったらこれもいいかな」と思ったりしますね。

比呂子先生が教え子・アイドルネッサンスに伝えたかったこと
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平成が終わる前にアイドルダンスを振り返るプロジェクト B面 対談

竹中夏海

ときにアイドルの魅力を引き出し、ときに魅力そのものにもなった「アイドルダンス」を、平成という時代を一区切りとしてまとめるプロジェクト。その対談編です。平成期から活躍している振付師のみなさんから、竹中夏海さんが「アイドルダンス」にまつわ...もっと読む

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IR20180224 振付師は教育者たれ。教え子・アイドルネッサンスに伝えたかったこと インタビュー後編|竹中夏海 @tknkntm | 7日前 replyretweetfavorite

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chiruko_t 振付師は教育者たれ。教え子・アイドルネッサンスに伝えたかったこと インタビュー後編|竹中夏海 @tknkntm | 15日前 replyretweetfavorite