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谷底を走る中央線
入り江や川を埋め立てたところに、日本の中枢機能である官庁や大企業のオフィスビルがひしめき合っています。情報を伝える会社、我々がお金を預けている会社、保険をかけている会社などの本社が集中しています。高層ビルで埋め尽くされ、その最上階でふんぞりかえっているのが社長さんたち。気象庁や東京消防庁などの防災官庁、新聞社の本社もズブズブ地盤の上に建っているのに、ビルの外から見える室内の什器の転倒防止は不十分。田舎者の私には「おバカさん」に見えます。
東日本大震災で天井が落下し、2人が犠牲になった九段会館は、江戸時代末期の地図を見ると「池の上」でした。首相官邸の隣にあるのは「溜池」という地名。東京スカイツリーは関東大震災で最も大きな被害のあった土地に建っています。私はあの展望台に上るときは少し緊張します。
東京の街に張り巡らされている鉄道からも、危険サインが見えてきます。
明治時代、うるさくて煙を出す蒸気機関車は嫌われものでした。そのため、鉄道はたいてい地盤の悪い街外れに通しました。現在のJR中央本線は川筋や谷筋を通っており、駅名は「神田」「御茶ノ水」や「水道橋」「飯田橋」「市ケ谷」「四ツ谷」「大久保」「荻窪」など水や谷に関係したものばかりです。京浜東北線の「田端」付近は崖の下。「品川」駅も、もともとは海の中でしたが、堤防をつくって通したのです。墨田区や江東区などの海抜ゼロメートル地帯は、もっと心配です。
神田・錦町河岸交差点
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