地方の会社やお店は、Negiccoをパクれ!

物が売れない時代だからこそ、「感情を揺さぶる売り方」をすることで、ファンを生み出して売り上げにつなげることをすべきだと『物を売るバカ2』(角川新書)で訴えるコピーライターの川上徹也氏。本稿では川上氏が応援している大手プロダクションに所属せず、新潟在住のままで、地道にファンを増やしているNegicco(ねぎっこ)の取り組みについて熱く綴る。特に地方の会社や小さなお店には、きっと参考になるはずだ。


Negicco NEGiFES 2018 in 新潟にて (写真提供 株式会社EHクリエイターズ)

1カ月限定のはずがなんと15周年!  

「Negiccoのこと知っている人?」

 私はよく講演会などでこの質問をする。手を挙げてくれるのは、会場に100人いたらよくて数人だ。北海道・東北・中四国・九州などではゼロということもある。
 手を挙げていない人に向けて「Negiccoってなんだと思いますか?」と質問をすると、以下のような答えが返ってくる。
「どこかの名産のお菓子?」
「ゆるキャラ?」
「ネギ味噌みたいな食品?」
もちろんすべて「ブ—」だ。

 Negiccoは新潟在住の3人組(Nao☆、Megu 、Kaede)地方アイドルである。いやアイドルという枠組みはとっくに打ち破り、もはやアーティストという肩書の方がふさわしいかもしれない。これまでに西寺郷太、矢野博康、小西康陽、田島貴男、池田貴史、土岐麻子、さかいゆう、堂島孝平、堀込高樹などから楽曲提供を受け、ミュージシャンの間では彼女たちに楽曲を提供するのがステータスになっているくらいだ。


左からKaede、Nao☆、Megu。公式サイト(http://negicco.net/profile/

 彼女たちはもともと、新潟特産「やわ肌ネギ」のPRのために、2003年7月、1カ月期間限定アイドルとして新潟の芸能スクールから選抜されたメンバーだった。当時3人は、まだ小中学生。どうせ1カ月限定で、ずっと使うわけじゃないからとテキトーに名付けられたのが「Negicco」というグループ名だ。そこから彼女たちの数奇で波瀾万丈の物語が始まる。1カ月限定だったはずなのに、2018年7月、なんと結成15周年を迎えた。もちろん小中学生だった彼女たちも、立派な大人になっている。

15周年に併せ漫画家・江口寿史氏によるイラストの記念Tシャツもつくられた

 今から6年前の2012年、私はたまたまテレビで彼女たちの「物語」を知り、興味を抱き一冊の本にしようと1年以上新潟に何度も通い取材を続けた(前述の数奇で波瀾万丈の物語は『新潟発アイドルNegiccoの成長ストーリーこそ、マーケティングの教科書だ』に本にまとめている)。取材の中で、彼女たちや取り巻く人たちの人柄にもふれ、気がつくとファンになってしまっていた。
 本にするという「お仕事」はとっくに終わっているのだが、講演や書籍においてできるだけNegiccoを取りあげることで、その知名度を少しでもあげるのが私の「推し事(使命)」だと考えている。


『物を売るバカ』なぜか応援されるアイドルとしてNegiccoを紹介。
『1行バカ売れ』伝説の「#俺なりのNegiccoリリイベ最終日」を紹介。
『物を売るバカ2』あとがきにNegicco15周年について紹介。
「推し事」を理解してくれる角川新書の編集者に感謝。

 新潟観光大使をつとめ、サトウ食品の「ごはん」「切り餅」「鏡餅」など全国CMをはじめ、昨冬話題になったタケダ・ベンザブログプラスのネットCM、サントリーボス、大塚製薬オロナミンCなどの新潟限定CM、新潟代表として花王ビオレUやパナソニックのプライベートビエラのWebCMにも 出演し、ファン目線ではかなりメジャーになってきていると思うのだが、前述したように新潟以外での一般的な知名度はまだまだだからだ。
(サトウ食品CMギャラリーは公式サイトで見ることができる https://www.satosyokuhin.co.jp/information/cm

「音楽」「物語性」「人間性」「カルチャー」という要素  

 しかし、今回取り上げるのは「推し事」だからではない。
 大手プロダクションに所属せず、新潟在住のままで、15年間活動を続け地道にファンを増やし続けているNegiccoの活動は、地方の小さな会社やお店の参考になると思うからだ。 

 あるファンの方がNegiccoのことを、自身のブログで以下のように書いていた。

「私がNegiccoを好きになった理由は、まず1に音楽、続いてグループの持つ物語性、そして、メンバーのキャラクター、人間性、さらにファンやスタッフをも含めたNegiccoというカルチャーである。好きな順番もそっくりこのままで、それはいまも変わらない。このすべてが全部良いグループというのはなかなかいないものだな、というのは特にこのところよく感じているところである。」
Real Life Journal. Blog Against Fascism, Racism and Sexism.(https://ameblo.jp/rljp/entry-12389769016.html)より引用

 私の場合は「物語性」から入ったが、このように「音楽」からNegiccoを好きになる人も多い。「物語性」で入った私も、今や彼女たちの「音楽」も好きになり、ひとりでクルマに乗っている時に聴くのはほとんどがNegiccoのアルバムになってしまっている。

 そして、この「音楽」「物語性」「人間性」「カルチャー」という要素は、アイドルやアーティストだけに必要なものではない。売れない時代、差別化が求められる時代においてはそのまま、地方の小さな会社やお店に当てはまるのだ。

地方の和菓子屋がNegiccoに学んだら  

 Negiccoにおける「音楽」「物語性」「人間性」「カルチャー」という要素を、たとえば地方の和菓子屋に置き換えてみよう。

 「音楽」はやはり商品力だ。 ルックスは「商品の見た目」だとして、音楽は「和菓子のおいしさ」だと言えるだろう。「物語性」は、その和菓子屋の「ヒストリーや商売への取り組み」だ。「人間性」は「店主やスタッフのキャラクター」、さらに「カルチャー」は、「お客さんも含めたその店が持つ雰囲気」ということになるだろう。

 もし、商品がとてもおいしくて、 店のヒストリーや取り組みが共感を呼ぶもので、店主やスタッフのキャクラクターが魅力的で、ファンを含めたその店の雰囲気がとてもいい。そんな和菓子屋さんが実際にあったらどうだろう? たとえ全国的な知名度はなくても、 間違いなく熱狂的なファンが数多く集まる繁盛店になっているはずだ。
 つまり、地方の小さな会社やお店は、Negiccoをマネて、「商品力」「物語性」「人間性」「カルチャー」を高い水準にするように努力すればいい。

 そうは言っても今までできないものが、一朝一夕ですべて高い水準にすることは難しいだろう。 Negiccoもすぐにそれが実現できたわけではない。長い年月がかかっている。

 では、もしあなたの会社やお店が、もっと高い水準になりたいと考えるならば何から始めるべきか? ヒントにしてほしいのが、私が提唱している感情を揺さぶる売り方7カ条「エモ売り7(セブン)」だ。

「エモ売り7」(感情を揺さぶる売り方7カ条)

➀「体験(Experience)」を売る
②「心動く(Moved)」を売る
③「世界観(Outlook on the world)」を売る 
④「共創・協創(Together)」を売る
⑤「インスタ映え(Instagenic)」を売る 
⑥「ここにしかない(Only one)」を売る
⑦「懐かしい( Nostalgia)」を売る

 新刊『物を売るバカ2』では、上記の7つの分類にしたがって72の実例を紹介しながら、お客さんの感情を揺さぶる方法について提案している。いずれもすぐにパクれる事例ばかりだ。

 そこに書かれた事例をヒントに、あなたの店や会社にあった「お客さんの感情を揺さぶる売り方」を考えて実行してほしい。そうすることで現場に「熱」がうまれるはずだ。そうなると、自然と「物語」の種がまかれているだろう。継続していけば、やがて芽が出る。さらに続けていけば「カルチャー」と呼ばれるものになっていくはずだ。「商品力」や「人間性」は、本来自分自身で向上させていくしかないのだが、売り方が変える取り組みをしている中で自然と向上していくという側面もある。Negiccoの3人も、きっとそうだったはずだ。

 ちなみにNegiccoも、この「エモ売り7」のすべての要素を満たす活動を日々行っている。
 簡単に紹介しておこう。

➀「体験」=ライブで体験できる多幸感。
②「心動く」=心動くエピソードの数々。
③「世界観」=戦わないアイドルという世界観。
④「共創・協創」=ファン同士が一体化するラインダンス。
⑤「インスタ映え」=ネギライト他、ネギグッズ。
⑥「ここにしかない」=新潟在住のまま15周年という独自性。
⑦「懐かしい」=どこかノスタルジックな音楽性 。

 ひとつひとつの活動が、具体的にどんなものかについては、ぜひNegiccoの現場に行って確かめてほしい。

 たとえあなたの会社や店がどんなに小規模でもまた地方にあっても、Negiccoの活動をきちんと真似ることができれば、お客さんの感情を揺さぶり、地道にファンを増やすことはできるはずだ。

Negicco15周年の奇跡

 Negiccoは、15周年のアニバサリー当日の7月20日には、新潟の中心街、古町7番町の商店街でフリーイベントを、その翌日の7月21日には、新潟最大のコンペンションセンターである朱鷺メッセでのワンマンライブを開催した。

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物を売るバカ2

川上徹也

今の時代に買われるために必要なものは、価格や機能といった「勘定」ではなく「感情」。物が売れない時代と言われて久しいですが、競合とさほど変わらない物やサービスであっても、売り方次第で一気に人気を博すものになります。『物を売るバカ2』(角...もっと読む

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コメント

rpg_hori 「エモ売り7」(感情を揺さぶる売り方7カ条)。> 13日前 replyretweetfavorite

msk_ngc 素晴らしい推し事な記事。川上さん、出版して(2014年)終わり、でなかったのね。「花王ビオレU」は新潟限定CMではないってところは気になったけど。 ( @kawatetu ) https://t.co/Rd4zqtuGfp 14日前 replyretweetfavorite

watanabe_kotaro #スマートニュース 14日前 replyretweetfavorite

acubi_ 老人なので、こういう記事を読むとすぐ泣いちゃう。 14日前 replyretweetfavorite