性行為に卒業はない

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回のテーマは男女間の「性行為」についてのお話です。一般的に「性行為=セックス」と思われがちですが、一概には言えないようです。森さんの考える性行為とは?

「セックスレスになってからでしょう、本当の夫婦は」

と言い放ったのは某男性芸能人である。そしてこの発言は多くの女性達を(男性達をも?)救ったと、後日インターネットの記事を賑わした。

男と女の温度差

セックスについての週刊誌や情報誌の温度差に、常日頃私は失笑している。だって、男性側はいかにして死ぬまでセックスするかを真面目に語り、女性側はどうやってうまくセックスから逃げるかを談義しているように思えるから。特に、男性は対妻で(意外にも愛人や風俗は稀。不景気の余波なのか、手近で間に合わせようといった風潮だ)、女性も対夫なのがおかしい。つまり、女性は夫以外の男性ならまだまだやれるかな、な匂いを醸し出しているのだ。とはいえ、男性のムンムン具合というか、現役にしがみつきたいという切羽詰った感に反して、女性はいい意味での諦念に満ちている。セックスなんて、しないならしないでいいかな、という清々しさである。

そこで、タイトルにもある「性行為からの卒業」だ。昨今、卒業という言葉は便利に扱われている。「フリ卒」=フリーターからの卒業、「卒サラ」=サラリーマンからの卒業、「卒婚」=結婚からの卒業、離婚ではない、等々。とはいえ、卒業があるからには入学があるわけで、性行為から卒業した場合(性卒? 卒性?)、入学したのはいつなのだろうか。なんとなく、初体験な気もするが、ファーストキスも捨てがたい、いやいや初恋や初めての恋人はどうよ? 下世話な話で初オナニーは?と、人によって基準が異なりそうだ。

「性行為=セックス」ではない

 性行為を改めて調べてみたのだが、

「性行為とは、性欲に基づいた行為。性器や肛門の接触や性交などの行為のこと。人が性的欲求に触発され、複数で行う一連の行為のことである。快楽や愛情表現を目的として行われる事も多く、必ずしも生殖に結びつかない。主に一組(カップル)の男女が性交(交尾)を行うことであるが、人はそれぞれ様々な性的指向(同性愛、フェチズムなど)を持っており、「性行為」が指す範囲は幅広い。(Wikipediaより抜粋)」

セックスの意味合いが濃厚だが、断言はされていない。とりわけ最後の部分、『「性行為」が指す範囲は幅広い。』に興味をかきたてられる。

故に、一般的に性行為からの卒業=セックスレスまたはセックスから縁遠くなる、という公式は万人に成り立つとはいえない。そう、性行為とは性器を擦り合うという生々しさもあるが、ただ相手に惹かれる、手をつなぐ、唇をそっと合わせる、姿を見て胸をときめかす、という情緒性もあるのだ。勿論、お互いの身体の一部分がぴったりとはまる、心だけではなく身体もつながるセックスは性行為の最たるものだ。

しかし人間はバイオリズムやホルモンやトラウマが作用するといった、何かと面倒臭い生き物なので、「性行為=セックスしかないよ、イエーイ、合体!」なんて、単純にはいかない。女性などは生理や出産があるから、男性が想像するよりもはるかに「いや、今はそういうのはいいです、マジで」な期間がある。男性は男性で、女性が想像するよりはるかにさみしがりやで自信喪失するきらいがあるから、セックスで安心感や明日への活力をみなぎらせるだろう。

たかがセックス、されどセックス。
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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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コメント

restart20141201 "男性側はいかにして死ぬまでセックスするかを真面目に語り、女性側はどうやってうまくセックスから逃げるかを談義しているように思える" 2年弱前 replyretweetfavorite

c___v 性の話はおもしろいな 2年弱前 replyretweetfavorite