​『デス・ウィッシュ』 なぜアメリカ人は銃を手放せないのか

ブルース・ウィリス主演の『デス・ウィッシュ』。痛快なアクション映画かと思いきや、そこから見えてくるのは銃や自警をめぐるアメリカの背景です。ブロガーの伊藤聡さんが、その内実を読み解きます。

『ダイ・ハード』('88)、『シックス・センス』('99)で知られる人気俳優ブルース・ウィリスが主演し、『ホステル』('05)、『グリーン・インフェルノ』('13)などを手がけたイーライ・ロスが監督した映画『デス・ウィッシュ』。本作は、1974年のチャールズ・ブロンソン主演作品『狼よさらば』を現代風にリメイクしたもので、予告編が強調する爽快アクションとは異なり、アメリカにおける銃規制や暴力、自治や自警といった問題をアイロニカルに描いた物語だ。

外科医として病院に勤務し、妻と娘とともに幸福に暮らしていた主人公、ポール。ところがある日、自宅に強盗が押し入る事件で、最愛の妻を失う。それまで無用な争いを避ける平和主義者だったポールは、妻の死をきっかけに、悪人がはびこる社会に疑問を抱き始める。悪は制裁されるべきではないのか。警察が頼りにならないのであれば、みずからで手を下す以外に方法は残っていない……。かくして、妻の死に復讐すべく、銃を片手に夜の町を徘徊するポールは、夜のシカゴをさまよう「死神」と呼ばれる危険な存在へ変貌していく。

アメリカで、銃にまつわる悲劇は後を絶たない。2018年2月14日、フロリダ州の高校で、生徒や教職員17名が死亡する銃乱射事件が発生。これをきっかけに、アメリカの高校生が中心となって行った抗議デモ「March for Our Lives(命のための行進)」は記憶に新しい。また2017年10月1日のラスベガス銃乱射事件では、史上最悪の58人が犠牲者となったが、このように大量の死者が出てしまっては、もはや社会がまともに存続できないのではとすら思える。

なぜアメリカでは銃規制がこれほどに進まないのか。部外者である日本人にとっては不思議に思えるが、『デス・ウィッシュ』には、アメリカと銃の関係性、アメリカ人にとっての自警や暴力に対する実感が率直に描かれており、見終えた観客は、アメリカの銃規制が進まない理由をリアルに感じ取ることができるだろう。

アメリカ人は「銃への揺るぎない信頼」*1を持つ国民だと言われる。「先住民族を倒し、牛を襲う狼を打ち、英国からの独立を勝ち取り、ソビエトを崩壊させた力。力(銃)を信じることで弱肉強食の社会を生き抜いてきた国民としての誇り」*2があるためだ。アメリカが民主主義を推進させるために用いてきた武力行使の歴史。「アメリカが世界に誇り、世界もまたそれを受け入れている自由と民主主義の理念そのものに、武力行使というDNAが組み込まれている構図が見えてくる。アメリカの民主主義の栄光の裏側には、武力の行使をいとわない顔がある」*3

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およそ120分の祝祭 最新映画レビュー

伊藤聡

誰しもが名前は知っているようなメジャーな映画について、その意外な一面や思わぬ楽しみ方を綴る「およそ120分の祝祭」。ポップコーンへ手をのばしながらスクリーンに目をこらす――そんな幸福な気分で味わってほしい、ブロガーの伊藤聡さんによる連...もっと読む

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PerverseGod https://t.co/cXBpYBI8QR 約1年前 replyretweetfavorite

Macopie 『デス・ウィッシュ』 なぜアメリカ人は銃を手放せないのか #SmartNews https://t.co/ij0JtKV9k2 約1年前 replyretweetfavorite

sa_ya2932 『デス・ウィッシュ』 なぜアメリカ人は銃を手放せないのか| 約1年前 replyretweetfavorite

campintheair cakes連載更新、今回は『デス・ウィッシュ』です。なぜアメリカ人は銃を手放せないのか。自衛、私刑、暴力、修正第2条、そうしたアメリカ的な不可解をうまく映像化していると感じました。評、読んでみてくださいね〜 https://t.co/Qa28pQ90Ei 約1年前 replyretweetfavorite