黄金期のモーニング娘。が歌った「いつか降る雨」

モーニング娘。と山一證券、モーニング娘。と小泉構造改革、モーニング娘。とミレニアム問題……。ニッポンの失われた20年の裏には常にモーニング娘。の姿があった! アイドルは時代の鏡、その鏡を通して見たニッポンとモーニング娘。の20年を、『SMAPと、とあるファンの物語 -あの頃の未来に私たちは立ってはいないけど-』の著書もある人気ブロガーが丹念に紐解く!
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2000年のモーニング娘。が肯定した無数の苦悶

 世界中が新たな時代の幕開けに歓喜し、たくさんのミレニアムベビーが元気な産声を上げた、西暦2000年。初冬に石黒彩が抜けて7人での活動となっていた日本のアイドルグループ・モーニング娘。にも、ついに4人の新メンバーが誕生した。

 石川梨華、吉澤ひとみ、辻希美、加護亜依。

 歴代オーディションでもトップクラスの応募者数・約2万5千名の中から選ばれた彼女たちは、モーニング娘。が『LOVEマシーン』でミリオンセラー歌手となった後の、一番最初の追加メンバーにあたる。

「ゴッチンのファンでした」(辻)

「モーニング娘。を初めて知ったのが『LOVEマシーン』なんですよ。友達が〝この歌、おもしろくない?〟って聴かせてくれて」(加護)

「テレビで発表されてからは、凄かったですよ。2次審査で顔と名前が出た瞬間から、家の電話が鳴りまくり」(吉澤)

「初期のモーニング娘。って、曲とかダンスが大人っぽかったけど、『LOVEマシーン』から曲調が変わって、みんなで踊れる楽しいダンスミュージックになったじゃないですか。だからこれなら私も、楽しくできるかなという気持ちだったんです」(石川)

 実際、前年の大ヒット曲『LOVEマシーン』は敗北から始まったはずのモーニング娘。のイメージを、大きく変えていた。大人の憂いを帯びたコーラスグループから「賑やかで楽しい」女性アイドルグループへの脱皮。そしてその路線変更はよりテレビコンテンツ向きな4人の原石を見事引き寄せ、プッチモニの結成メンバーとして活躍した市井紗耶香の卒業があってもなお、グループは日本中が求める国民的アイドルのイメージにピタリと一致し続けることになった。いわゆる〝黄金期〟に突入しようとしている当時のモーニング娘。の心境を、後藤真希はこう振り返っている。

「注目されるということは、やりがいもあるし、やっていて楽しい。前向きになれる」「売れている自覚があると自信にも繋がる」(後藤)

 しかしこの2000年当時、テレビから流れるモーニング娘。の自信に満ちた元気な歌声とは対照的に、世間では若者を取り巻く暗いニュースが頻発していた。西鉄バスジャック事件や豊川市主婦殺人事件に代表される〝キレる17歳〟の報道、そして1993年から続く就職難の中でついに大卒求人倍率が1を切った〝超就職氷河期〟の到来。

 当時の高校生や大学生というのはいずれも義務教育中にバブル崩壊が起こり、平成不況の中で思春期を過ごすことになった第一世代である。その青春時代の眩さは常に、「こんなはずじゃなかった」という社会の無数の苦悶とともにあり続けていた。

 一見、剥離していくかのように見えた超人気アイドルグループと同時代の若者たち。しかし意外なところで、両者の精神性は確かに結びついていた。その一例に2000年9月、モーニング娘。がリリースした10枚目のシングル楽曲『I WISH』の歌詞がある。

「人生ってすばらしい ほら誰かと 出会ったり恋をしてみたり」

 このサビに代表されるように『I WISH』は基本的には前向きで、人生賛歌ともいえる模範的なアイドルソングだ。メインで歌っているのは酸いも甘いもかみ分けた先輩メンバーではなく、加入してまだ日の浅い3期の後藤、4期の石川・吉澤・辻・加護という面々。まだ12~15歳と幼く挫折を知らない彼女たちは「賑やかで楽しい」、そんな00年代の国民的アイドルグループの象徴的存在でもあった。しかし敗北と憂いのムードを拭って明るく生まれ変わったはずのモーニング娘。は、同時に人生賛歌『I WISH』の中でこうも歌っている。

「晴れの日があるから そのうち雨も降る全ていつか納得できるさ」

 もしこの楽曲がストレートな励ましや応援に徹するなら、希望の象徴である彼女たちはあくまでも〝晴れの素晴らしさ〟だけを伝えればよかったように思う。しかし彼女たちはそうはせず、素晴らしい晴れの日と同列にして〝いつか降る雨〟の存在を伝え、そして「全ていつか納得できるさ」と改めて続けた。

 結果的に、あの2000年に生まれた楽曲『I WISH』の願いとは、幸福の肯定ではなくその先の「苦しみの肯定」にこそあったのである。

 気づいたときには前時代の幸福から零れ落ちてしまっていた日本。前時代の理想から外れたことによる「こんなはずじゃなかった」という社会の嘆きは、前時代を知らない若者たちにとって、時に生きてきた人生そのものの否定になりさえした。

 しかしそんな「否定」の時代に、同じ無言の抑圧の中から這い上がっていった若きアイドルたち、そしてそのプロデューサーであったつんく♂は、世間が求める華やかな光の先にも降り続く雨の存在、そしてその雨に育てられた者たちの存在を、音楽で静かに肯定し続けていた。

 同曲のライナーノーツで、つんく♂はモーニング娘。のことを「全てはやっぱり、普通の女の子」と定義する。

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モーニング娘。年代記

乗田綾子

アイドルは時代の鏡——その時代にもっとも愛された者が頂点に立ち、頂点に立った者もまた時代の大きなうねりに翻弄されながら物語を紡いでいく。今年20周年イヤーを迎えるモーニング娘。の歴史を、ニッポンの歴史と重ね合わせながら振り返る。娘。が...もっと読む

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コメント

YG0605 あ、この記事を受けてなのか(笑) https://t.co/oIhnoMwU8b 1年以上前 replyretweetfavorite

gekkan_entame モーニング娘。年代記の第5回が、cakesさんでも公開されてます。↓からぜひ! 1年以上前 replyretweetfavorite

isiyosinori #morningmusume #morningmusume18 1年以上前 replyretweetfavorite

simoyan_hello #スマートニュース 1年以上前 replyretweetfavorite