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「たらい」に浮く大都会
地震や建物は規模が大きく話が専門的になりがちですので、私は身近なものを使った実験をよくします。
まずは大きな「たらい」を用意してください。そこにたっぷりの水を、あふれない程度に入れてみます。そして外側を強くトンと叩くと、水面に波紋が広がるでしょう。でも、すぐに波は消えてしまいますね。
では、たらいのへりを持って、何度も揺さぶります。すると水面に立った波は、へりに当たってまた波立って、どんどん揺れが大きくなって、揺するのをやめてもなかなか消えていきません。
このたらいを、関東平野に見立てることができます。たらいのへりは東京を取り巻く神奈川や群馬の山々。水は東京の街を支える地盤です。水が地盤だなんて、おかしいと思うかもしれません。しかし、地球全体から見れば、関東平野をはじめとした日本の平野部にある主要都市は、水の上に浮かんでいるようなものなのです。
1985年にメキシコでミチョアカン地震という大地震がありました。メキシコ市では21階建ての高層ビルが倒壊するなど、多くの高層ビルに被害が出ました。メキシコ市は震源から400キロメートルも離れていたのに、なぜこの惨事になったのでしょうか。メキシコ市はハワイと同じ緯度で熱帯に位置するため、暑さを避けて内陸の高地にあった湖を埋め立てて開発された都市。たらいの水のように地盤がゆらゆらと揺れたのです。
地球の表面はいくつかの大きな岩盤に分かれているという話は聞いたことがあるでしょうか。「プレート」と呼ばれるその岩盤は、地球を卵に例えると、卵の殻に当たります。殻は大きく十数枚に分かれていて、卵の白身に当たるマントルの上に乗りながら、ベルトコンベヤーのように移動します。アメリカやロシア・中国、ヨーロッパ、オーストラリアやアフリカ、南極などは、かつての超大陸がバラバラに分かれて、今の場所まで移動してできた大陸です。
一方、日本の国土は四つのプレートが「おしくら饅頭」のようにぶつかりあっているところにあります。四つのうち二つは大陸を構成する陸のプレート、もう二つはほとんどが海底にある海のプレートです。海のプレートは重いため、陸のプレートの下に潜り込んでいきます。日本の太平洋側で潜り込んだところにあるのが、日本海溝や南海トラフなどです。プレートが接する場所の付近では、強い力が働き大きな地震が繰り返し起きます。
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