「シャープの高級電子レンジ『ヘルシオ』の開発者を一本釣りできないだろうか」
今年に入って、ある人材サービス会社に1本の電話がかかってきた。依頼主はアジア系電機メーカーの人材仲介業者。昨年末、シャープは募集人数の5割増しに相当する、2960人の希望退職に踏み切っており、そのタイミングが狙われたのだ。くだんの人材サービス会社の顧客リストには、シャープ出身者が多数含まれていたが、ヘルシオの開発者はいなかったため、人材仲介は“失敗”に終わった。
かつて旧三洋電機(現パナソニック)が経営危機に陥ったときにも、中国・台湾などアジアメーカーが三洋電機を“草刈り場”と定めてヘッドハンティングを行った。そして、多くの白物家電の開発者が海を越えた。当時と異なるのは、「アジアメーカーの人事担当者の経験値がぐっと上がり、日系電機メーカーの開発者ならば誰でも根こそぎ欲しい、というスタンスではなくなったこと」(電機メーカー幹部)だ。
本当に欲しい製品や基幹デバイスの開発者、量産技術に長けた生産技術者、あるいは企画部門のマネジメント層など、人材を厳選して採用するようになっている。
電機メーカーの開発者といえば、難関大学の博士・修士課程を修了したエリートぞろい。理系“最高峰”の就職先として電機メーカーが選ばれていた。だが、近年の雇用調整に聖域などない。家電製品のライフサイクルが短縮化したり、製品・基幹デバイスそのものが陳腐化したりする中、博士号や修士号を持つ者でも、リストラ対象に含まれるようになっている。
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