このところ、「ダウナーなままで毎日を回す」研究をしている。
……いきなりなんのこっちゃという話だけど、わたしはたまに「ダウナー・モード」に入るときがある。ちょっと疲れてたり、寝不足だったりすると、「あああなぜ人間の寿命はこんなにも長いのか」みたいな思考に陥る(どういうこっちゃねん)。そして作業効率が悪くなる。今は論文を読む時間やっちゅーねんと思っていても、なかなか前に進まなかったりする。
が、しかし! いつまでもこんなことしてる訳にはいかない。ダウナーな自分に時間を奪われてたまるかぁ。
そんなわけで、ダウナー・モードになったらなったままでいろいろやっていく方法を最近よく考えている。
途中経過報告をしてみると、今のところ「効くなぁ……」と思うのは、『走るときについて語るときに僕の語ること』を読むことである。
『走るときについて語るときに僕の語ること』村上春樹
(文春文庫)
最近、ノーベル賞の代理賞をご辞退されたことでも話題になった村上春樹だけど、本書は彼の「ランニング論」になっている。
ボストン・マラソンやサロマ湖の100㎞マラソンに出場する「ランナー」としての村上春樹が、いかに走り、どのように練習しているのか。さらに彼はどのように書くモチベーションを維持し続け、小説家として生き残ってきたのか。
なんというか……最初に読んだとき、村上春樹が自己啓発本を書くとこういうふうになるのか~と思った。
小説家という職業に——少なくとも僕にとってはということだけれど——勝ち負けはない。発売部数や、文学賞や、批評の良し悪しは達成のひとつの目安になるかもしれないが、本質的な問題とは言えない。書いたものが自分の設定した基準に到達できているかいないかというのが何よりも大事になってくるし、それは簡単には言い訳のきかないことだ。他人に対しては何とでも適当に説明できるだろう。しかし自分の心をごまかすことはできない。そういう意味では小説を書くことは、
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。