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映画が伝える日本人へのメッセージ
ゴジラが都心を破壊してからは「立川広域防災基地」に拠点が移されました。ここは都心から約30キロメートル離れた場所で、立川防災合同庁舎や陸上自衛隊立川駐屯地、災害医療センター、警視庁や東京消防庁の施設もあります。実際、都心での対応が困難になったとき、内閣府災害対策本部の予備施設が設置されることになっています。
東京都民の3分の1を避難させるという場面は、関東大震災を彷彿とさせました。当時も「東京市」の市民の3分の1が「疎開」したと言われています。今、これがどれほど現実的にできるのか。
将来の首都直下地震や富士山大噴火への対策のあり方を問うているように思いました。ですが、よく考えてみると、例えば東海道新幹線で1時間に輸送できるのは約2万人、1日で40万人程度ですから、都民の3分の1を運ぶには何日も必要になります。
クライマックスではゴジラの動きを止めるため、血液凝固剤を注入することになります。ゴジラは核分裂反応によってエネルギーを得ていますが、それを維持するための「冷却装置」となっている血液を固めれば体内の活動も止まるだろうという狙い。もちろん、福島第一原発事故の暗喩です。
かなりネタバレのことも書いてしまいましたが、私はとても感動して、観終わった後、知人と同じように「防災の人間は観なきゃダメ」と薦めまくり、台本を取り寄せてディテールの「研究」も始めました。すると、地元のあるテレビ局が、映画の制作者と対談する機会を設けてくれました。
「なんであんな防災映画をつくったんですか」
と聞く私に、制作者はこう答えました。
「十数年ぶりにつくるゴジラは国民映画だから、日本人に伝えるべき最も大切なことをメッセージとして入れたいと思いました。だから東日本大震災であり、原発事故であり、今心配されている巨大地震を彷彿させるような映画を描いたんです」
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