モヤモヤを吹っ飛ばす!
コンフェデ反省会
コンフェデレーションズカップ2013。日本はブラジル、イタリア、メキシコに3戦全敗を喫した。ワールドカップの強豪国に勝てなかっただけで、悲観論が吹き荒れるのだから、日本もずいぶんサッカー大国になったものだ。前回大会でベスト16に滑り込んだ国だというのに…。もはや、足元が見えている人を探すほうが難しい。
やるべきことをすべてやったとしても、それでも尚、結果が出ない。それが強豪との戦いというものだ。正直、悔しくてたまらないが、理不尽な怒りはすべて飲み込み、粛々と今後の課題を潰すことに目を向けたほうがいい。
今回の居酒屋サッカー論は反省会だ。みんな、気分がモヤモヤしているだろう? こんなときには甘ったるい酒では悪酔いするばかりだ。たまには度数が高くて苦いスピリッツを味わい、スッキリするのも悪くない。それも人生だ。腰を据えてとことん付き合ってほしい。
グループリーグを振り返ると、3戦のうち、もっとも後悔が大きかったのは初戦のブラジル戦だろう。ザッケローニ監督もメキシコ戦後の記者会見で総括を求められ、次のように語っている。
「第一試合はアプローチが間違っていたのではないかと思う。誤ったゲームを初めたとき、個性がなく控えめでした。それが特徴でもありますが。アウェーで素晴らしいチームの地元でプレーするときはそのような特徴。最初に失点したときから、あまり良いゲームをしないことになりました」
※今大会の通訳のニュアンスは怪しいものばかりなので、バランス良く読んで頂ければ
思い返しても腹が立つ。ブラジルには球際の強さ、鋭さ、動きの質ですべて上回られ、技術でも負けていたのは間違いない。しかし、日本はそれにビビり過ぎた。攻めのトラップをしていない。動き出しが鈍く、積極的でない。
カタールからの移動で、フィジカルコンディションに問題があったのは承知している。しかし、それはメキシコ戦ほどではないし、組織としてお互いをサポートする意識そのものが希薄で、個人プレーが目立つ。個人で負ける相手に、個人プレー。ブラジル戦は最低の試合だった。二度とこんな試合をやってはいけない。
日本サッカーは“イノセント”だ
そしてイタリア戦。中3日の休養を取り、ザッケローニ監督と選手個人の面談など、さまざまな切り替えを行って臨んだ試合。
収穫の多い試合だった。味方のために汗をかける男、前田遼一が入った。他の選手からも「やってやろう」という気概が感じられた。シンプルに味方同士を生かすプレーが増えた。ここがスタートライン。やっと足元が見えた。日本代表のポテンシャルの大きさが感じられた。
しかし、したたかな2006年ワールドカップ王者は、前半の早い時間帯にジョビンコを投入して試合の流れを引き寄せる。2列目タイプのアクイラーニから1.5列目タイプのジョビンコへの変更により、バロテッリのマークに集中できなくなった日本。さらにバロテッリも中央にとどまらず、サイドにもポジションを取る。戦術『バロテッリ』をうまく機能させるBプランを遂行した。プランデッリ監督、さすがに良いところに駒を打つ。
前半の終わり頃には日本も徐々に疲れてきた。前方に攻めてばかりではなく、ボールを保持しながらイタリアを走らせてバカンスを過ごせば良かった。しかし、勤勉な日本人はオフを取ることを知らない。休日出勤でさらに疲弊。ザックジャパンの仕事の能率は落ちるばかりだった。
そして自陣でのディフェンス戦術も拙かった。相手がボールをフリーで持っているのに、オフサイドラインを直線に保ったままで突破される。別の場面では両センターバックがクリアに失敗。日本は2-0から逆転を許し、最終的には3-4で試合を終えた。
昔から言われていた「サッカーにおける2点差は危険」というのは実は迷信で、本当は2点差をつけていれば負けることは非常に少ないと、データでは証明されている。ただし、イージーゴールの連鎖さえなければ…だ。
ブラジル人のタクシー運転手はこんな単語を口にした。「日本はイノセントだ」と。
※イノセント(Innocent – 潔白な、汚れのない、無邪気な、お人好しな、無害な)
なんと的確に表現した単語だろう。日本はまさに『Innocent World』だ。駆け引きを知らない。オンとオフを使い分けられない。夢見がちで現実を直視しない。まさにMr.Childrenだ。
だけどMr.Childrenでなければ、ここ20年の短期間に日本サッカーが急成長を果たすこともなかったとも思う。この一途な信念こそ日本ならではだが、しかし、そろそろ大人になるとき、次のステップを踏むときが来たということかもしれない。
いろいろな面で本当に収穫の多い試合だった。イタリアは泥仕合を演じた。「このままのパフォーマンスなら来年は日本代表が勝つよ」と捨て台詞を吐いてやりたい。
メキシコ戦の
3-4-3は悪くなかった!
そして3戦目。メキシコ戦は世間から非難ごうごうで驚いたが、僕の見立てではそれほど悪い内容ではなかった。が、それだけに負けたショックが大きいところはある。
以下は日本の4-2-3-1の配置だ。
前半はお互いにチャンスを作りながらも0-0で終了。
そして後半の序盤は、メキシコのディフェンスラインが高い位置を取り、試合のペースを上げてきた。日本は両サイドの香川真司や岡崎慎司が自陣に下げられ、圧倒的に押されっぱなしになる。自陣の深い位置でボールを何とか奪っても、苦し紛れに前田や本田に当てた縦パスがことごとく潰され、2次攻撃、3次攻撃を食らい続ける状況だった。
そして後半9分、左サイドのグアルダードのクロスからチチャリートにヘディングを決められて失点。日本は何とか踏ん張ってはいたが、守り切れなかった。
この場面のDFのポジショニングは大きく間違ってはいない。酒井宏樹はサイドチェンジのボールに対してグアルダードに寄せ、栗原勇蔵と今野泰幸はチチャリートを2人の間に置いた。しかし、チチャリートの絶妙の飛び出しにクロスをピンポイントで合わされて失点。スーパーゴールだった。これを防ぐためには酒井宏がもっと間合いを詰めるか、今野や川島永嗣が危険を察知してもう一歩早くチチャリートに寄せるか、あるいは栗原が今野との距離を詰めるか。
「栗原がボールウォッチャーになった」と言う人もいるようだが、それは違う。クロスに対して相手の前に立ち、後方の味方と共に、相手を挟むようにポジションを取るのがゾーンディフェンスだ。チチャリートをチェックするとすれば、それは栗原がバックステップするのではなく、今野か川島が前へ出るべき場面だった。
この失点で攻撃が必要になった日本。酒井宏、細貝萌、栗原と今大会の初先発組がそろい、右サイド側にはノッキングが多かった。そこで右サイドバックの酒井宏を内田に代え、さらにシステムチェンジ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。