ひとまず「訴えます!」と言ってみる
ほとんどの方にとって記憶の彼方だと思うが、財務省・福田淳一事務次官のことを思い出そう。財務省が、福田のセクハラについて認める文書を出したというのに、組織の長である麻生太郎財務大臣は「セクハラ罪って罪はない」と漏らし、批判された後で、もう一回「セクハラ罪っていう罪はないという事実を申し上げている」と無茶な角度の擁護を続けた。当の福田は、証拠とされた音声について、「私は子どものころから、テープレコーダーで自分の声を聞くとよく分からない」「ただ、私の声に聞こえるという人が多数おられることは認識している」と、この上なくヘタクソな言い分であやふやにしたまま辞任を表明。週刊誌報道については「裁判の中で引き続き争ってまいりたい」と言い残してカメラの前から消えた。で、その後、裁判を起こしたとの話は聞こえてこない。
自分に不利益をもたらす報道があると、政治家は条件反射的に「訴えます!」と強気になる。その後、実際に訴えたり、訴えなかったりするのだが、ひとまず「訴えます!」と言うことで「マスゴミ」批判を連投する人たちからの局地的な支持を得ることができるし、詳細を尋ねられても「訴訟準備中なので答えられない」などと逃げられるので、めちゃくちゃ便利なのだ。今回の党人事で憲法改正推進本部長のポストに就いた下村博文元文科大臣は、昨夏、加計学園からの200万円献金疑惑を報じられると、「事実無根。名誉毀損に当たるとして告訴の準備をしている」と凄んだ後、今はそれどころではなく、「(2017年7月に行われた)都議選が終わったら丁寧にお答えします」とした。都議選が終わってから1年3ヶ月が経つが、丁寧なお答えは聞こえてこない。丁寧なお答えを待ちたい。
肥後・寺門不在の「上島竜兵スタイル」
ダチョウ倶楽部・上島竜兵が帽子を床に叩きつけて「訴えてやる!」とキレると、やがて、肥後克広と寺門ジモンが「おい、テレビテレビ。本番中だぞ」とツッコミ、上島が「すいません、取り乱しました」と頭を下げる。しかし、「訴えてやる!」とキレた政治家の多くは「すいません、取り乱しました」まで持っていかない。「訴えてやる!」で終わる。つまり、政界には、キレるだけの上島竜兵ばかりが存在する。最終的に訴えない場合は勿論のこと、訴えたとしても結果が出るまで時間がかかるから、国民のおおよそはその概要を忘れてしまう。
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