ユウカに裏切られても、ユウカのことがまだ好きだという池崎。
男らしいのか、現実を見たくないだけなのか……。彼は思いつめたような表情をしている。
「じゃあ、池崎さん母と結婚してください」
幕田の言葉に対しての池崎の反応はある意味予想通りのものだった。
「……それは……できない」
「なんでですか? 嫌いになれないんでしょ?」
幕田の疑問に対しては答えず、池崎はユウカの方をみて自分の正直な気持ちを語った。
「考えてみて。ユウカさん。僕がしおりさんとライブに行ったことだけでも怒ってたじゃない」
「うん、そうね」ユウカはこともなげに答える
「……なのに、ユウカさんは別の男とライブに行く以上のことやってるのに、なんで僕が許せると思う?
僕はあれからしおりさんと距離を置くようにしてたし、他の女性からの誘いも断ってた。
母にも結婚できるように、フォローのメールしたり電話をしたりしてたんだ。
毎朝早く仕事に行くのだって、少しでも早くユウカさんと結婚してユウカさんを安心させたいと思ったからだよ。
だってお金もない、仕事も半人前、そんな状態で結婚しても、良い未来があるわけないじゃない。
ユウカさんはきっと、あれが欲しい、これが欲しい、結婚式はこうじゃないと嫌だって言うだろう?
それを叶えてあげるのが、男の甲斐性だと思ったんだよ。
だから今回のことは、僕としては本当に悔しかったし、気持ちが元に戻るなんて自分でもわからないよ。でもこうも思うんだよ。
……僕がユウカさんをつなぎとめられなかったのは僕にそこまで魅力がなかったからって。だから、仕方がないと思うよ」
最初はユウカを責めるようなテンションで始まったが、最後は自分を責める言葉で終わった。池崎らしい考え方だ。
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