美女と根暗なフツメンが恋に落ちた理由

昨年までの10年間、山小屋で働いていた山ガールならぬ小屋ガールの吉玉サキさん。山小屋スタッフの人間模様や悩み、恋などをつづった1話完結のエッセイです。今回は、山小屋スタッフの恋愛について。たくさんの人がいる中で、なぜお互い「その人」を選ぶのでしょうか? 美人の甘栗ちゃんとフツメンの芦田君が恋に落ちた理由を綴ります。(毎週木曜日更新)

私がいた山小屋では例年、少なくても1組、多ければ5組ほどのカップルが誕生する。

カップル成立を目の当たりにするたび、不思議に思うことがある。

こんなにたくさんの人がいる中で、なぜ「その人」なんだろう?

年にもよるけど、山小屋では7~10人程度の異性と出会う(既婚者や恋人がいる人を除いた人数)。

仮に、ある男子スタッフが10人の女性スタッフと出会い、その中のひとりを好きになるとしよう。

第三者の私からすると、ほかの9人だってそれぞれに魅力的だ。可愛い人、面白い人、優しい人……。けれど、彼はその中で彼女に惹かれる。

そして、彼女のほうもまた、10人の中から彼を好きになる。

それってなんだか、奇跡みたいなことじゃないか。


なんでそいつ!? みんなが首を傾げるカップル

「なんで芦田君なんだろう?」

昨年、多くのスタッフが首を傾げていた。3年目スタッフの芦田君(仮名)に彼女ができたからだ。

芦田君はスタッフの中で一番、私たち夫婦と一緒に仕事をすることが多い。第5話でも書いたけど、天候不順によってヘリが飛ばないときはずっと夫と待機したりする。私たちにとっては弟のような存在で、仲良しだ。

……と書いておいてなんだけど、芦田君に彼女ができてみんなが首を傾げるのもわかる。

芦田君はいい奴だけど、気難しいのだ。

頑固で卑屈、3年いるのにみんなと打ち解けない。普段はおとなしいけど、彼の正義に反するものには突然キレる。繊細さゆえなのはわかるけど、「集団生活なんだからもっとやりようがあるだろうよ」と思う。

つまりは、いわゆる「陰キャ」でモテるタイプではない(弟のような存在と言いながらずいぶん貶してしまった)。

そんな芦田君のお相手はというと、新人スタッフの甘栗ちゃん(仮名)。まるでモデルのような美人だ。俗世の穢れからはほど遠い純真さを感じさせる子で、まっすぐな頑張り屋さん。

そんなモテモテ必至の女子があろうことか芦田君と付き合いはじめたのだから、山域に衝撃が走った。というと大げさだけど、まぁ、スタッフ内には衝撃が走った。

もちろんみんな、芦田君を嫌っているわけではない。だけど、甘栗ちゃんが素敵すぎるので、なぜ芦田君なのかが理解できないのだ。

あと、(これはあまり書きたくないのだけど)ルックス格差も、みんなが驚いた理由のひとつ。

前述したとおり、甘栗ちゃんはめちゃくちゃ美人だ。

一方、芦田君はふつう。なんていうか、「ふーん」以外の感想を持ちにくい。「800メートル離れたところから見たら田中圭に見えるかもね」と適当なことを言いたくなるくらい、ふつうだ。

もしも彼がイケメンだったら、多少の気難しさがあっても周りは納得したかもしれない。

だけど、現実には「美女と陰キャのフツメン」。

ギャップがあるから余計に、みんな首を傾げてしまう。


甘栗ちゃんが芦田君を好きになった理由
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小屋ガール通信

吉玉サキ

第2回cakesクリエイターコンテスト受賞作! 新卒で入った会社を数ヶ月で辞めてニート状態になり、自分のことを「社会不適合者」と思っていた23歳の女性が向かった新天地は山小屋のアルバイト。それまで一度も本格的な登山をしたことのなかった...もっと読む

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コメント

etozudeyoshida 📷 cakes連載、吉玉サキさんの「 7ヶ月前 replyretweetfavorite

bar_bossa 良い話ですね。やっぱりこれは「閉じた世界」だからこそ起きる、恋ですよね。やっぱりみんな閉じた世界で婚活するのが良いかも! 8ヶ月前 replyretweetfavorite