朝ドラ『まんぷく』と同じ時代を生きた四姉妹。谷崎潤一郎の傑作小説

安藤サクラさん、長谷川博己さん、主演。日清のカップラーメンをつくった方をモデルにした物語。それは1938年、戦前の大阪の風景。『まんぷく』とまったく同時期を描いた、谷崎潤一郎の傑作小説とは?
『人生を狂わす名著50』著者による、濃厚な書評エッセイ。

 今期も元気に朝ドラ・ウォッチャー! わたしは毎朝楽しく『まんぷく』を見ています。あなたは見てますか、『まんぷく』。おもしろいですよ~~~毎朝泣いて笑って大変ですが、すごく良質な朝ドラなんで全世界の人にわたしはおすすめしたい。見てない!? 見て!!

 日清のカップラーメンをつくった方をモデルにした物語なのですが、安藤サクラさんや長谷川博己さんといった主演キャストもすばらしいし(緊張しながら女の子をデートに誘う長谷川博己を見られるのはここだけだっ)、脚本もやさしいのにきびしくてすばらしい(まだ始まって1ヶ月も経っていないのに、すでにわたしは登場人物たちに入れ込んでいます。みんな幸せになってほしい!)。しかしなんといっても、素敵だなぁと思うのは、戦前の大阪の風景!


1938年、戦前の大阪の風景

 物語は1938年の春から始まるのですが、主人公の勤める大手高級ホテル、女学校時代からの友人と食べる屋台ラーメン、初めてのデートで歩く公園、姉の結婚式の風景……どの場面も、昭和初期の大阪文化が画面に映えること! 
 衣装もすごーく素敵。シックな紺色の女学校制服から、お嬢様な友人たちのひらひらワンピース、真っ白なホテルのフロント係の制服。どれもすっごくモダンで可愛い。もちろん男の人たちの服装も、スーツに普段着に正装に「かーっこいい~~」と朝からため息をついてしまいます。正装がコスプレにならずきちんと似合う時代ってあると思うんですよね……。それから主人公たちの大阪弁もまた、東京都はまた違った活気のある風景に合っていて。

『まんぷく』を見ていると、「ああ戦前の大阪って、独特の文化や豊かさがあったんだなぁ」と思わずにはいられないんですよ。なんというか、東京とはちがった関西の文化というものがそこにあった、といいますか。街並みも建物も服装も商売も人も、活気があって。モダンで、だけどクラッシックで、文化的で、華やかで。『まんぷく』はそこまで大阪文化を強調する物語ではないのですが、それでも「大阪」という場所の活気やセンスを感じずにはいられない。

 しかしわたしは『まんぷく』を見ているうちに、奇妙な既視感を覚えました。
「あれ、この風景、どっかで見たことある!」。
 ああそうだ、この風景って、あの小説と一緒なんだ。

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