「あえて言うけど」的な発言
アイドルグループ「愛の葉Girls」の大本萌景さんが自殺し、遺族が所属事務所に損害賠償を求めているが、毎月20日間以上働き、1日平均10時間程度の拘束で、平均報酬が月額3万5000円だったことに対し、長嶋一茂は「実はそんなにビックリしていない」(『羽鳥慎一モーニングショー』)とし、芸能界はこういう搾取の世界だから、と述べている。
痛めつけている人と痛めつけられている人を見つけたら、真っ先に、痛めつけられている人にも問題があったのではないか、と疑うようになってしまった松本人志は、「死んだらみんながかばってくれるっていうこの風潮がすごく嫌なんです」(『ワイドナショー』)と述べた。話の全体を聞けば、2人とも、自ら命を絶つ人をこれ以上増やしてはいけない、という骨子ではある。だが、自殺者を増やしてはいけないなんて当然の話。その当然の話をする時に、自死を選んだ彼女を少しでも責めるような言葉にならないように気をつけることって、そんなに難しいことだろうか。もしかして、責めたいのだろうか。彼らの「あえて言うけど」的な発言は、あえて言わなくてもいいものばかりである。矛先がいっつも弱いほうに向かっている様子が悲しい。
「特に男は、『社会の中で揉まれてなんぼ』」
長嶋一茂は「パニック障害」と戦い、それこそ自殺衝動にかられるほど悩んだ経験を持つ人だったはずだと、長嶋一茂『乗るのが怖い 私のパニック障害克服法』を開くと、飛行機の中でパニックになったり、生放送中に過呼吸の発作症状が出そうになり、CM中にあらかじめ用意していたビニール袋でなんとか呼吸を整えていたりした苦悩の日々が続いていたことを知る。偉大すぎる父を持つ二世であることに開き直るキャラクターをこなしつつ、そういった症状と戦っていたと知ると、彼への見方を改めそうになる。
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