「僕とバアちゃんと家族の話」と銘打っておきながら今までバアちゃんの話しかしていないので、今回は僕の愛する娘についてお話したいと思う。
今年で5歳になった娘は、底抜けにポジティブだ。
「可愛い」というワードが聞こえると自分のことだと思って振り向くし、友達に意地悪されても「もしかして○○ちゃん、私のことが好きすぎてつい意地悪を…?」とか言い出す。
僕がこれまでの人生で出会った人間のなかでも最も楽しそうに生きているポジティブの化身。ポジティブという言葉を擬人化したような存在。それがうちの娘である。
また、娘はとにかく「褒める」ということに長けている。
自分のことも褒めるし、家族や友達のこともひたすら褒めて褒めて褒めまくる。
「ママはとっても可愛いね!」
「ばぁばはいつも優しいね!」
「みきちゃんはダンスの天才だね!」
「たっくんはゾンビと戦っても勝てるね!」
人間、どんな小さなことでも褒められると嬉しいものだ。
明らかに無茶ぶりされているたっくんを除いて、娘に褒められた人は皆笑顔になってしまう。 きっと娘も「褒めるとみんなが笑ってくれる」と分かっているのだろう。
もちろん、娘は父親である僕のことも褒めてくれる。 「お仕事がんばってて偉いね!」とか「お料理が上手だね!」とか、日常の動作ひとつひとつに賞賛が送られる。
この間なんか、野菜炒めを食べていただけなのに5分くらい褒められた。
「えぇっ!?パパは野菜も全部食べられるの!?」
「うそでしょ…!?キャベツまで…?パパすごすぎ…!天才…!?」
「私のパパはタマネギも食べられるスーパーお父さんだったのか…!?」
正直飯食ってるから静かにしてほしいと思うこともあるけれども、まぁ褒められてるのだから悪い気はしない。 いい気になって「すごいだろ?お察しの通りパパは天才なんだよ」と返事をしておいた。しかし娘は直後に顔を曇らせて、こんなことを言い出した。
「…でも、いくらパパでも鬼には勝てないだろうね…」
なんの話?
なんか知らんが、急に鬼と比較された。 いやまぁ…そりゃ鬼には勝てないだろうけれども、いくらなんでも話が飛躍しすぎじゃないだろうか。
「パパは強いんだぞ!」からの「でも鬼には勝てないだろうね」ならまだわかるけど。
「パパはお野菜を残しません」からの「でも鬼には勝てないだろうね」は急カーブすぎない?
意味は全くわからなかったけど、とりあえずその日は鬼のくだりを聞かなかったことにした。
それから数日後… 僕が自宅で筋トレをしていると、例のごとく娘が近づいてきて「すごい!パパは筋肉モリモリなんだね!?」と褒め始めた。 息切れしながら「ハイハイ…筋肉モリモリですよ…」と生返事をすると、またもや娘の顔が曇る。
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