第1回】凝縮されたかっこよさを伝える

伝統工芸から最先端工業技術まで日本最高峰に特化したものづくり続ける丸若屋が、レーシング業界でトップランナーであり続けるモリワキレーシングと共に、日本の美を結集したiPhone5 cover「Collect of Japan」を制作。代官山 蔦屋書店にて丸若屋代表・丸若裕俊氏がトークイベントを開催。全4回の初回は4月27日。雑誌「HUgE」編集部・川島拓人氏と日本の美意識について語り合いました。

日本人特有の「TABOO」との付き合い方

川島拓人(以下:川島)
今回「HUgE」6月号で特集した「Mongo」は70年代にニューヨークで生まれた言葉で、ゴミ箱の中から使えそうなモノとか売れそうなモノを拾い集めている人たちのことを意味していたんですね。そんな特集で丸若屋さんを取材させていただきました(笑)

丸若裕俊(以下:丸若)
われわれ丸若屋は、ものづくりを「焼き物」や「ガラス」など具体的な工芸品に特化しているわけではありません。しいてあげると「文化」や「風土」という現象が対象です。現象として丸若屋が何を集めているのか。そこから導きだして今回「HUgE」の特集に対して考えたのが「TABOO」でした。

日本人が海外から興味深く見られる要因のひとつとして、タブーなところにすごく価値を追い求める傾向があると思うんです。例えば生き死にであったり、男女の性であったり、本来あまり触れちゃいけないところに対して、美意識を発揮するんですよね。さまざまな作り手が、作品づくりにおいて「TABOO」を追求している。そして、そんなタブーの中で作って来たもの、その延長線上に何があるのかにとても興味があるんです。

 

写真中央手前にあるものは、見ての通り、大黒様です。タブーが表裏一体で表現されているというのは、日本のおもしろさの一例で、男根信仰、富の反映、業は業をつなぎ合わせる、という発想ってかなり珍しいと思うんです。これを拝めっていわれても海外の人からしたらギャグですよね(笑)

実は日本のおもしろいものって半島に集まる傾向にあって、奇祭も半島に多かったりします。日本人って尖っていたり、ツンとしてるものが昔から好きなんですよね。「ちょんまげ」だってそういう前提に立たないとあれをかっこいい!とはならないじゃないですか、普通。

かっこいいの所在

川島
「現象でくくった収集」って非常におもしろいなと思いましたし、編集部でも非常に盛り上がりました。
「HUgE」は雑誌という媒体ですから、いったん載せてしまうと、あとは受け手の感性に委ねるしかありません。発信する側と受け取る側のズレを少しでも無くす役割が編集にはあるのですが、こちらで堅苦しく見方を制限するより、見た人が自分の目と頭で感じて、考えてもらいたいんです。
写真の対象物の意味合いも大切だけど、丸若さんは「かっこよさに一番惹かれているからそれが伝わるように写真をとってください」とおっしゃってくださいました。

丸若
僕が一番残念に思うのは、「これはこういう理由でこういう歴史だからこういう風にみるのが美しいんだよ」みたいなおせっかいです。現代の僕らに過去のことなんて全然わからないじゃないですか。ちょんまげがかっこいいと思っても、ちょんまげにするわけでもないし、戦国時代の人が当時の建物や物品をどういうマインドで見ていたかなんてわからないですよね。

ノスタルジーといわれるものも、懐古主義とかノスタルジーの概念そのものがかっこいいんじゃなくて、かっこいいと思える要素が凝縮されてるからかっこいい。古いからいいっていう概念はまったくなくて、当然新しくてもいいんです。インターネットが出て来て、知識の裏側にある本質が大事になってきてますよね。HUgEは形態こそ雑誌ですが、売っているものはソフトウェアで、HUgEの世界観を想像して、かっこいい、それに近づきたいなって思えます。そんな雑誌に取り上げていただいてとても光栄でした。

川島
雑誌づくりをする上で、やっぱり細かさみたいなところにはこだわっていますけど、突き詰めると、「かっこよさを伝えるってどういういうことなんだ?」ということだと思うんです。HUgEの在り方は、プライオリティーのトップがかっこよさであること。写真がカタログ的であったり、ただ事実を伝えるジャーナリズム的なものであってもおもしろくない。

日本のものづくりは過保護

丸若
日本人は、自分が作るものに対して、もっと自信を持っていいと思うんです。自分が作ったもの、さらにそれを受け取る人たちの理解する力を信じて送り出してあげることってものすごく大切ですし、そこを信じれないとおもしろくないですよね。思春期の親子の状態と同じで、親切にしてあげることは大切ですが、過保護になると育つものも育たないじゃないですか。

川島
そこにあるのって瞬発的な力ですよね。こういう瞬発的なかっこよさって丸若屋さんのものづくりからもとてもよく伝わってきます。

丸若
「今かっこいいものはなんなのか」みたいな時間軸の前とか後ろの話は興味がありませんし、「昔のものが好きなんですか?」ってよく聴かれても、僕の中で今と昔の区別はなく、まったく同じなんです。だから今とか昔とかでくくられた価値観にとらわれるのではなく、自分や自分たちの仲間がかっこいいと思うものに興味をもち、魅力を感じます。

川島
当たり前ですけど、綺麗とかかっこいいって個人の感覚によって違います。僕は、今回のiPhoneカバーにしてもエッジが効いていてかっこよく、バックグラウンドもしっかりと落とし込んでいるように感じたのですが、その感覚はどこで身につけたんですか?

丸若
港があった関係で、アジアや北米の文化が色濃く反映された横浜の本牧という地域で育ちました。そんなキャラの濃い文化圏の中で「丸若」であるためには何が必要なんだろう、現代に通じる日本の美意識ってなんだろうと思って、今に至っています。

川島
日本の美意識ってホスピタリティーみたいなことからも来ていますよね。
上海にいた高校時代、久しぶりに日本に帰って来て、お寿司屋さんで最後に大トロを食べたんですけど、お会計のとき、大将が最後の大トロはお会計をいらないって言ったんですね。その時ものすごく感動しました。それに通じたものがプロダクトにも生かされているのかなと思っています。

職人性に触れる、最高の贅沢

丸若
ホスピタリティー、おもてなしの精神は、このトークショーを開催するきっかけになったiPhoneカバーを一緒に制作したモリワキエンジニアリングさんにも通じています。日本には分断されている職人技術性というのがあり、特定の技術に特化していても全体を把握していない場合がある。そんな中、モリワキエンジニアリングの人たちは、アルミを曲げたり削ったりする技術を磨きつつ、最終的にレースのピットからコースまで送り出して、帰って来た選手やマシンをねぎらうところまでやる職人集団なんです。全体を作ってお客さんに渡すって言ういうところまでやる存在は非常におもしろいなと思っていて、彼らはストイックでありつつ、おもてなしの精神がとてもあり、みな自分たちの仕事に誇りを持っている。彼らは自分たちの作ったマシンが不具合を起こすとどうなるか、レーサーがけがをしたり時に亡くなってしまうことを知っていて、その現実を間近で否応無しに見てきてなお、モノを作り続けています。これはとんでもない精神力で、ここが単なるメーカーとの大きな違い。レーシング界に収まっていたモリワキレーシングのそういう職人性にみなさんが触れ、そこから生まれたプロダクトを持ってもらいたかったんです。このことってすごく贅沢だと思うんですよね。

川島
制作者のエネルギーがこもっていて、ユーザーはそこの変換にお金を払ってるんだと思うんですね。今回のiPhoneのカバーもそれだけの人のエネルギーがかかっていると思っています。

丸若
今回のトークショーで、色々なジャンルの人が色々なところを向いているというのを知って欲しい。みなさんとぼくたちは同じ土壌にいますし、予想もしていなかったところで化学反応が起きて欲しいというのが僕の望みです。

これから、“難しい”とか“わけわからない”っていうものにこそ価値が生まれると思うんです。日本って、難しいしわけわからないじゃないですか。だから最高のブランドだと思うし、わけがわかってしまったら面白くないんです。

※丸若屋の魅力をお伝えしたく、記事化をコルクが協力しました。

川島 拓人
1986年生まれ。高校、大学時を海外で過ごし、2010年編集プロダクションEATerに入社。講談社から刊行されているファッション&カルチャー誌『HUgE』をはじめ、『TOOLS』(講談社)やカタログの制作などで活動中。丸若氏とは『HUgE』102号の取材で邂逅した。

丸若裕俊(まるわか・ひろとし)
1979年東京生まれ・シツラエルヒト。2010年、株式会社 丸若屋を設立。
「時代に従うモノづくりではなく、時代を創造するモノづくり」をテーマに プロダクト・プロデュース、プロジェクト・プランニングを日本最高峰に特化した、 伝統工芸から最先端工業技術との取り組みまでを行う。

■ iPhone5 cover 「Collect of Japan」5月23日発売開始
レーシング界で名を馳せるモリワキレーシングと丸若屋がコラボレーション制作。
アルミ総削り出しオリジナルフレームに、鹿革の印傳プレートを合わせ、美麗かつ耐久性にも優れた最高峰のiPhoneカバーが誕生。
http://maru-waka.com/online-shop

■ 代官山 蔦屋書店限定セット(限定100セット)
モリワキ製フレームと、ヨーロッパ高級レザーにロゴを刻印した背面プレートが2枚入っています。
※お問い合わせは代官山蔦屋書店文具フロアフロア、または蔦屋書店オンラインショップから
http://tsite.jp/daikanyama/ec/tsutaya/word/103/%E4%B8%B8%E8%8B%A5%E5%B1%8B/

コルク

この連載について

丸若屋のシツラエ

コルク

伝統工芸から最先端工業技術まで日本最高峰に特化したものづくり続ける丸若屋が、レーシング業界でトップランナーであり続けるモリワキレーシングと共に、日本の美を結集したiPhone5 cover「Collect of Japan」を制作。代...もっと読む

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コメント

Singulith なんか80年代のバブルっぽい感じ・・うらやましい。  > 4年弱前 replyretweetfavorite

hosaca_jp 凝縮されたかっこよさを伝える| 5年弱前 replyretweetfavorite

maruwakaya_news iPhoneカバーの発売展示「THE モリワキ」展に関連して行われた「 5年弱前 replyretweetfavorite