中学生のとき、私はマスターだった。
なんのって? ポケモンマスターだよ。
中学生時代、「ポケットモンスター」というゲームがはやった。モンスターを仲間にし、経験値を積み、モンスターを成長させるアドベンチャーゲームだ。
当時、同級生の女子たちは、少し色気づいてきていた。
ルーズソックスが何センチとか、カーディガンのブランドはラコステだとかラルフローレンだとか、そして月9ドラマの話をしたがった。
でも、私はポケモンの話がしたかった。
まわりと同じじゃないとハブられる(無視される)という恐怖感から、ポケモンをしながら、一生懸命ドラマを見た。木村拓哉さん主演の『ロングバケーション』や、反町隆さん主演の『GTO』。
だけど、ドラマより漫画やゲームの方が好きだった。漫画は『寄生獣』がバイブルだったし、『ジョジョの奇妙な冒険』を読んでジョジョ立ちをして、親に隠れて『稲中卓球部』を読んで興奮していた。
学校では、平均的で、普通でいたかった。嫌われたくなかった。クラスが私の世界のすべてだったから。
ルーズソックスを履いて、スカートを短くして、茶髪にして、大きめのラルフローレンのカーディガンを着て、景色に溶け込みたかった。
好きじゃないものを好きなふりをすることはむなしかったけれど、にこにこと笑っていれば時間は勝手に過ぎ去っていくと思っていた。
とにかく空気を読んだ。空気を吸えないほどに。
自分の好きなことを隠していたから、自分がナニモノなのか分からなくなった。
野草を摘んで集めることは、ポケモンを集めてマスターになろうとしているのと同じかもしれない。小さい頃に好きだったことを、一度中断したけれど、やっぱり好きで大人になってから始めている。
昨年配信されたスマホゲームの「ポケモンGO」もまだやっている。
今日も自分の好きな「ポケモンGO」と一緒に野草摘みにでかけよう。
私は好きなように生きていく。
ヤマノイモのムカゴをゲットしたい
これがムカGO!
ヤマノイモ(ヤマイモ)は、根茎が細長く立派で、すりおろした「とろろ」は滋養強壮に良いとされるツル性の植物だ。ナガイモより粘りが強く、アクも多い。冬になると、根茎やムカゴをスーパーでも見かける。
ヤマノイモの根茎を掘ってみたいところだけど、長さ1メートルにもなるヤマノイモを掘るのは非常に手間がかかるし、掘ると深い穴ができてしまって危ないことから、ヤマノイモ掘りが禁止されているところもある。その点、ムカゴは集めるのも食べるのも簡単だ。ごはんと炊き込めばホクホクとした食感を楽しめる。
ある日、ヤマノイモのムカゴ(葉のつけ根などにできる繁殖器官)を見つけて葉の観察をしていたら、図鑑に掲載されている葉と少し違うことに気が付いた。
「これ、ヤマノイモじゃないじゃん。」
よく調べると、これはナガイモ。
今まで、ヤマノイモだと思っていたものがナガイモだったことにショックを受けた。
「もしかして、多摩川にヤマノイモは存在しない!?」
それを検証するために、私は多摩川ヤマノイモのムカゴ探しの冒険に出発した。
今日のターゲットはヤマノイモ。
途中に、ナガイモという罠がある。それをかいくぐりながら、ヤマノイモをゲットしたい。
いつもの多摩川下流から、上流まで自転車に乗って探すことにした。
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