次の震災の様相は、今までとワケが違います。
東日本大震災は、海溝近くの「浅い領域」も50メートルほどもずれました。これまで海溝型の地震は、「やや深い領域」がずれるものだと考えられてきました。浅い領域がこれだけ大すべりをすると、津波は巨大なものとなります。
巨大地震では、超高層ビルの揺れを増幅させる長周期地震動もたっぷりと放出されます。こうした東日本の断層破壊過程のメカニズムを南海トラフ地震に当てはめると、過去に検討されていた震源域は遥かに広がり、津波は巨大化、高層ビルの被害からも目を逸らせなくなることが分かってきました。
人口が各地に分散していた時代と異なり、現代は人口の半分が東京や大阪などの大都市に集中しています。安全な場所が不足して、堤防で守られたズブズブの地盤の上に高層ビルが建ち、電気やガス、水道、インターネット回線、地下鉄など、複雑に絡み合ったインフラに支えられています。
この現代日本を、最大クラスの南海トラフ地震が襲ったとき、内閣府の想定では死者は32万3000人。
これは決して大げさな数字ではなく、室町時代の南海トラフ地震である明応地震も大正時代の関東大震災も、今の人口に換算すれば死者は40万人を超えます。内閣府の想定は「関連死」を含んでいませんが、最近の地震では震災後の厳しい環境の中で亡くなる人が直接死より多いこともあります。関連死を含めれば100万人ぐらいになってしまう恐れも否定できません。
全壊や焼失をする建物は約240万棟。これは日本の新築家屋の数年分に相当します。震度6弱以上、または高さ3メートル以上の津波が沿岸部を襲うと想定される自治体の人口は5900万人になります。「日本人の2人に1人が被災者になる」可能性があります。