オフィスハック

その一服姿は高倉健みたいだった

「これぞ日本版キングスマン」「スカッとする!」「早く映像化して」Twitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』より第2話「ミニマル製菓の社内調整」をリバイバル連載。(あらすじ)「うちの不祥事を世間様が知る前に社内調整せよ」東京丸の内の大企業T社。人事部直轄の特殊部署「四七ソ」に今日も新たな指令が下る。年の差バディ香田&奥野がスーツに身を包み、オフィスでクソ野郎共を撃ち殺す!

◆4◆

 おれたちは非常階段の踊り場で、震えながら休憩をとった。

「寒ッ……」

「今夜あたり積雪するかもしれませんね」

 奥野さんがしみじみと言った。

「何年ぶりですかね、積雪なんて」

 踊り場には薄汚い椅子と、タバコの吸殻入れが置いてあった。どこもメインオフィスやエントランスの荘厳さとは裏腹に、非常階段のタバコエリアはこんなものだ。

「どうぞ」

 奥野さんが火を貸してくれた。年季の入った、いいジッポだった。

「あ、すいません」

 おれはマルボロに火をつけ、深く吸い込んだ。煙草を吸うなんて何年ぶりだろう。咳き込みそうになる。おれと違って、奥野さんはサマになっている。なんというか、高倉健みたいで。

「フゥーッ……」

 おれは煙を吐きながらスマホをいじくり、Twitterのタイムラインを確認した。話題は暗号通貨数百億円の不正送金事件。おれには全然わからない世界だ。

「奥野さん、暗号通貨とかやってます? 今何か起こってるみたいですけど」

「いや、私はやってませんね。最新のテクノロジーはどうも難しく……」

「えーっと……史上最大規模の暗号通貨が日本の販売所から盗まれて、そのデータは世界を飛び交い、ナントカ財団ってとこのホワイトハッカーたちがそれを追跡してる……ってことらしいですよ」

「正直全然わかりません。いつの間にか、私たちの暮らす世界はSF映画みたいになっていたわけですか」

 奥野さんは至極真面目な顔で言った。それが何だか可愛げがあり、おかしかった。

「それに比べて、おれたちの仕事の地味さたるや、ですよ」

 おれは苦笑いした。

「いやいや香田さん、真面目にやってる部署は、こういう調整で助かっているわけですから、よしとしましょう。少なくとも、この仕事にそのくらいの価値はあります」

 奥野さんが言うと、室長より説得力がある。

「そうですね」おれは微笑んだ。「でもせめて、給料はもうちょい上がらないかな……」

「そこは同感です」

 奥野さんも苦笑した。そのまま少し、おれ達は無駄話を続けた。趣味とか、投資とか、ちょっとだけおれの娘の写真を見ながら話とか。少しずつおれ達はバディとしての絆を深め始めていた。

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本兌 有,杉 ライカ,オノ・ナツメ
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2018-04-19

この連載について

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ダイハードテイルズ

これぞ日本版キングスマン/会社あるあるが笑える/スカッとする!/早く映像化して! などTwitterで話題のスパイアクション小説『オフィスハック』(著:本兌有・杉ライカ、画:オノ・ナツメ)をリバイバル連載!(あらすじ)「ウチの不祥事が...もっと読む

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