それぞれの発展 ~宇宙戦艦ヤマト⑤~

2010年代に入ってから、ウルトラシリーズ、仮面ライダー、ヤマト、ガンダム、あるいは「ベルばら」「ポーの一族」などが次々と40、50周年を迎えている。それらはみな、単に昔のものとしてあるだけでなく、現役のコンテンツとして新作が発表され、映像化、舞台化されている。逆算すれば分かるが、これらの大半は1970年代に始まった。 1960年に生まれ、アニメ、特撮ものを最初期からテレビで見ていた中川右介(作家、編集者)が「リアルタイムの記憶を基にして目撃譚」として描くサブカル勃興史。

「記憶をたどりながら書きますが、公にするからには、記憶にだけ頼り、間違ったことを書いてはいかないので、改めて調べ、事実確認をして書きます。歴史家的視点と、当時の少年視聴者・読者としての記憶とを融合させ、「読者・視聴者としてサブカル勃興期を体験した者が書く歴史」を提示したいと思います。(筆者)

●次々と始まる松本零士アニメ

一九七四年のテレビ版『宇宙戦艦ヤマト』はヒットしたとは言えなかったが、松本零士というマンガ家をアニメ界に知らしめる効果はあった。一九七七年三月からフジテレビ系列で放映された『惑星ロボ
ダンガードA』で、松本はキャラクター設定とコミカライズを担った。松本零士にとって唯一の巨大ロボットものとなった。コミカライズは秋田書店の「冒険王」に連載された。

 放映された枠は、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『UFOロボ グレンダイザー』が放映されていたフジテレビ系列の日曜夜七時からだ。かくしてこの枠のロボットものは永井豪から松本零士へバトンタッチされた。

『惑星ロボ ダンガードA』は七八年三月まで一年にわたり放映された。この時点では『宇宙戦艦ヤマト』よりも視聴率としては成功した。続いて、七八年四月からは『SF西遊記 スタージンガー』が始まった。もう巨大ロボットもののブームは終わったと判断されたようだ。これは七九年六月まで続き、さらに七月からは『SF西遊記 スタージンガーⅡ』となって、七九年八月まで続く。

『SF西遊記 スタージンガー』も松本零士原作とされるが、キャラクターの設定などをしただけで、コミカライズは他のマンガ家が手がけた。したがって厳密には「松本零士原作」とは言い難い。

 この七八年、松本零士は多忙だった。三月からテレビ朝日系列で『宇宙海賊 キャプテンハーロック』が始まり、四月からは設定を担った『SF西遊記 スタージンガー』の放映が始まり、八月に『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が封切られる。さらに、九月からは『銀河鉄道999』のテレビアニメも始まるし、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のテレビアニメ版として『宇宙戦艦ヤマト2』も一〇月から始まった。

 テレビ版の放映に合わせて、松本零士は「冒険王」七八年七月号から七九年一二月号までマンガ版『宇宙戦艦ヤマト』を連載した。『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』と『宇宙戦艦ヤマト2』のストーリーを描くはずだったが、途中で終わってしまい、「第一部 完」というかたちでのエンディングだ。

『宇宙海賊 キャプテンハーロック』は一九七七年一月から青年誌「プレイコミック」に連載が始まっていた。同月から、「少年キング」では『銀河鉄道999』の連載も始まった。二作ともテレビアニメにしようという企画があって、先行して雑誌での連載を始めたものだったが、しばらくして企画は潰えてしまった。それでも雑誌での連載は続けていたら、八月に劇場版『宇宙戦艦ヤマト』が大ヒットした。「松本零士は当たる」ということになり、制作会社やテレビ局は掌を返して、『ハーロック』と『999』のテレビアニメ化を決めたのだ。

 こうして、七八年三月に『宇宙海賊 キャプテンハーロック』、四月に『銀河鉄道999』のテレビアニメが始まる。

『宇宙海賊 キャプテンハーロック』はテレビ朝日系列の火曜夜七時からだった。しかし平均視聴率六・九パーセントと低調に終わった。一年もたずに、四二回で終わった。『宇宙戦艦ヤマト』にしても、テレビ版の視聴率は高くないのだ。テレビでは五パーセントでは失敗だが、一億人に対する五パーセントの五〇〇万人が映画館へ詰めかければ、空前の大ヒットとなる。どちらに向けて作るかだ。

『銀河鉄道999』はフジテレビ系列の木曜夜七時で、こちらは最高視聴率二二・八パーセントと大ヒットし、八一年三月まで一一三回にわたり放映された。放映期間中の七九年八月には劇場用アニメ『銀河鉄道999 (Galaxy Express 999)』が公開され、配給収入一六億五〇〇〇万円と、金額では『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に及ばなかったが、一九七九年の日本映画の興行成績第一位となる。

 この二作の成功によって、日本映画界はアニメを無視できなくなった。

『999』の劇場用アニメは二年後の一九八一年八月に『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』が公開され、配給収入一一億五〇〇〇万円となった。前作の三分の二に落ちてしまったが、年間八位だった。

『999』の大ヒットを受けて、フジサンケイグループと東映は、松本零士にアニメ化前提で新作を依頼した。こうして『新竹取物語・1000年女王』が、サンケイ新聞と西日本スポーツで、一九八〇年一月から連載され(八三年五月まで)、東映動画制作のテレビアニメも、フジテレビ系列で『999』の後番組として八一年四月から八二年三月まで放映された。さらに八二年三月には、劇場用アニメ『1000年女王』が東映の配給で公開された。劇場版封切り時には、フジサンケイグループが自社の媒体で大宣伝を展開したが、配給収入は一〇億一〇〇〇万円で、この年の一〇位に留まった。これでも大ヒットなのだが、『999』に比べると見劣りのする数字となってしまった。

『ハーロック』も劇場用アニメが作られた。一九八二年七月公開の『わが青春のアルカディア』で、テレビやマンガの前日譚にあたり、松本零士の「戦場まんがシリーズ」のいくつかのエピソードが使われている。配給収入六億五〇〇〇万円となった。

『わが青春のアルカディア』公開前から、その続きはテレビアニメシリーズで描くことが決まっており、八二年一〇月から『わが青春のアルカディア 無限軌道SSX』がTBS系列で放映されたが、またも視聴率がふるわず、二二回で終わり、「松本零士ブームは終わった」とされた。

 マスコミは勝手にブームだと煽り、少しでも人気がなくなると、ブームは終わったと騒いで足を引っ張る。

 たしかに大ブームは終わっただろうが、松本零士の人気は持続しているし、ある世代にとっては、『999』は永遠の名作であろう。

●ヤマトは永遠に、あるいは延々と

一方、『宇宙戦艦ヤマト』は七八年八月公開の『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の大ヒットの勢いのまま、一〇月から日本テレビ系列で『宇宙戦艦ヤマト2』が翌七九年四月まで二六回にわたり放映された。

『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』はラストで古代進を乗せたヤマトが白色彗星帝国の超巨大戦艦へ突っ込んでいくところで終わる。このラストは、特攻隊を想起させると批判されたが、制作段階で西崎と松本の間でも議論となった。松本は特攻を美化するとしてこのラストに反対したという。

 テレビ版では、ヤマトも古代も生還するラストになっている。これは松本の主張を取り入れたからとも言えるし、大ヒットしたので、西崎がさらなる続編を作ろうと考えたからとも言える。

 最初のテレビ版の視聴率は六パーセント、あるいは七・三パーセントだったが、この時点で『ヤマト』は日本で最も有名なアニメとなっていたので、『2』は平均視聴率二二・九パーセントを記録した。

 こうなると、やめたくてもやめられない。

 一九七九年七月三一日に、テレビのスペシャル番組として九三分の『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』が放映された。総集編ではなく純粋な新作だったので、三〇パーセントを超える高視聴率を得た。

 続いて、七九年一〇月六日に、テレビ版『宇宙戦艦ヤマト2』の総集編として『宇宙戦艦ヤマトⅡヤマトよ永遠なれ』が放映された。

 次が劇場用アニメで、『新たなる旅立ち』の続編にあたる『ヤマトよ永遠に』が一九八〇年八月に公開され、二二〇万人を動員し一三億五〇〇〇万円の配給収入をあげた。

 次はテレビで、一九八〇年一〇月から八一年四月まで、『宇宙戦艦ヤマトⅢ』が放映される。一年間五二回の予定だったが、視聴率が一五・四パーセントと期待したほどではなかったので、半年二六回で打ち切られたのだ。

 西崎はその前に、『宇宙空母ブルーノア』を制作し七九年一〇月から放映されたが、これも視聴率が一五パーセント前後とふるわず一年の予定が半年で打ち切られており、二連敗となる。『ヤマト』人気に翳りが出て来たので、他のものを作ってみたが、ダメだったのだ。結局、西崎は『ヤマト』で大当たりをとったが、それ以外は何も成功しなかった。

 一九八三年、西崎は劇場用アニメとしては第四作にあたる『宇宙戦艦ヤマト 完結編』を制作し、三月一九日に封切った。「完結編」と銘打ったからには、本当にこれが最後だとの意気込みで作られ、松本零士をはじめとするスタッフたちも、西崎には言いたいことは山ほどあったが、みなヤマトへの思い入れもあったので結集した。

 しかしヒットはしたものの、かつての勢いはなく、配給収入一〇億一〇〇〇万円に留まった。

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中川右介 /角川新書

2010年代に入ってから、ウルトラシリーズ、仮面ライダー、ヤマト、ガンダム、あるいは「ベルばら」「ポーの一族」などが次々と40、50周年を迎えている。それらはみな、単に昔のものとしてあるだけでなく、現役のコンテンツとして新作が発表され...もっと読む

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コメント

eizabulo999 #スマートニュース 4ヶ月前 replyretweetfavorite

st01_madox   『ヤマト2199』が「一応成功」ですか……あれだけビジネス的に成功したのが「一応」とは…… 4ヶ月前 replyretweetfavorite

NakagawaYusuke ヤマト編、最終回です。 |角川新書 @kadokawashinsho /中川右介 @nakagawayusuke 4ヶ月前 replyretweetfavorite